夏の朝、雨が降っていて昨日の暑苦しさとは比べ物にならない様な涼しさだった。雨の匂いと湿った空気がとても気分を悪くさせた。自分はどんよりとした気持ちで朝の支度をし、学校に向かった。登校の途中でいつもの彼女に会った、「おはよう、雨は気分が良いものだね。」彼女はそう言った。私が「そうかな、私は雨は嫌いだなあ」と言ったら彼女は不貞腐れながら自分に雨を掛けてきた、「うわっ」と情けない声を出しながら後ろに下がると彼女は私を馬鹿にするように笑った。その顔はとても綺麗で優しく照らしてくれる太陽の様だった。やがて学校に着き、自分達は濡れた傘を畳んで教室へと入っていった。私は鞄をロッカーに置き、自分の席に座った。そして彼女の方に視線を向けてみた、彼女はクラスの人気者で彼女の周りにはいつも沢山の人がいる。今日もそうだった、そして楽しく話をしながら彼女はあの太陽の様な笑顔を皆に向けていた。皆に優しい彼女、自分はそんな彼女が好きだった。だけど彼女を自分の物にすることは出来るはずもなく、してはいけない事だとは自分で分かっているのだ。太陽は誰の物にもなってはいけないと心の中でそう自分に言い聞かせた。ある日、彼女は告白された。自分は夕暮れの中誰もいない教室でそれを見つめていた。彼女を自分の物にしようとするそいつが許せなかった。自分は彼女の親友であって、しようと思えば彼女を自分の物にすることは出来るのに。そんな憎悪の感情が自分を包み込んだ。次の日の朝、彼女はいつものように挨拶をした後こう言った、「私彼氏出来たんだ。」と彼女は嬉しそうに笑顔を向けた。自分は「良かったね。」とだけ言って係の仕事があると嘘を言い足早に学校へと1人で向かった。全力で走ったので大分早く学校に着いてしまった、誰も居ない教室で自分は声を出しながら泣いた。太陽が心の中から消えてしまったような喪失感と、虚しさで胸が一杯になってしまった。嗚呼、なんて悲しいのだろう、彼女の特別は自分なのだと勘違いしていた自分が憎らしい、太陽の様な分け隔て無い優しさを持った彼女が好きだった筈なのに、やはり自分は彼女を自分の物にしようとしていたのだ、、そしてそれはあの子の彼氏も同じなのだ。気持ちを落ち着かせた後、やっとの思いで崩れ落ちた身体を起き上がらせ顔を洗った、そして彼女の前ではいつもの自分を演じて見せた。そんな事に彼女は気付くはずも無くやがて朝も一緒に登校すらしなくなってしまった。そんな日々から半年程経ったある日に彼女から連絡が来た。「彼氏にいきなり別れようって言われちゃった、浮気してたみたい。」この文章を見た瞬間私は怒りが込み上げてきた、太陽を奪い去って行った癖にそれを手放して新しい女に手を出すなど許せなかった。自分は彼女からそいつの連絡先を手に入れ、放課後に屋上に呼び出した。いざそいつを目の前にすると我慢していた怒りが一気に出て嫌悪と憎悪で冷静になる事など出来なくなっていた。事前に用意した彼の筆跡に似せた遺書と彼のによく似た靴を鞄の中に用意して_____________________彼を柵まで追い詰めて、手袋をした両手に力を込めて彼を柵の外へと押し出した。彼が地面に叩きつけられた音を聞いて私はすぐに彼の元へと向かった、彼の遺体から靴を取り、焼却炉で燃やした。屋上に戻り、遺書と靴を置いた。
幸い犯行がバレることは無かった。また彼女と登校をするようになり、いつもの生活が戻ってきた。今日は暑かったから帰り道に彼女と海沿いでアイスを食べた。ふと「好きだよ」と言ってみた。彼女は「私も好き」と笑顔で返してくれた。この関係がずっと続けば良い、そう思った。ある日彼女から連絡が来た、新しい彼が出来たと言うような内容だった、また自分の心の中に雨が降るような気がした。嗚呼、また彼女から彼の連絡先を貰わなれければ。貴方の特別は自分だけで良いのだ。
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