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「んーと、君たちってなんで二人でいるの?一人で来てねーって書いてなかったっけ?(疑)
あ、もしかしてとぉっても仲良しさんなのかな!(喜)」
「えと、一人だけ落ちてもう一人行くってのは、落ちなかった方が可哀想だね、って話してたんです!」
「ええ。二人でいけば怖くはないし、生存確率も上がるかと」
今、私はおそらく神化人と話している。
おそらく、というのは、前も説明した通り、私には神化人の声が聞こえる体質「霊媒体質」がない。
なので、霊媒体質の猫手の声を頼りに会話を続けている。
「僕そんなに悪い神様じゃないよ(悲)。でも、君たち二人とも僕の神器になれるの?」
「多分!指揮ちゃんが教えてくれたんですけど、私には霊媒体質があるらしくて。それに指揮ちゃんは血筋がすごくて、霊媒体質でもあると思いますし。だから二人ともなれるんだと思います!」
猫手には霊媒体質だと言ってなかったはずだが……ちょっとヤバいかも。
まあ実際、私みたいなイレギュラーを除けば基本血筋がいいやつは霊媒体質もある。
だから言ってる事は正しい。
うん。やばい。これがバレたら神器になれない。
でも、私は今度こそ、桐原家として役目を全うすると決めたのだから。
どんなことになろうと、必死に神器になってやる。
「ふぇーー、ラッキーだね(驚)。じゃあ、僕は二人から選ばないとだよね。なんか面接みたいになっちゃうけど、それぞれのアピールポイント、みたいなものってある?」
「……わ、私は!神化人のルールだとか分かんないけど!でもいけめ……いえ、一生従うと決めた人にはとことん従います!決して浮気しません!!」
「私は対象的に生まれの都合上神化人については詳しいと勝手ながら思っております。故に私の方が」
「待って!まだ決まったわけじゃ」
「うーーーーん……僕神化人だから分かるんだけど……(難)指揮、さん?はもしかして、霊媒体質じゃなかったりするのかな」
「え、そうなの?霊媒体質じゃないの?」
「……そう……です。でも猫手さんは血筋が一般じゃないですか」
「いやまあそうだけどさ!声聞こえないの致命的じゃない?!」
「……そしたらお目目はどうなってるの?『神器の目』は?」
「あ、私が反復しないとってことですか……。神器の目?ってやつは?って聞いてる」
「……あ」
そうか。
私は神器を継げなかった代償として目をくり抜かれた。
「神器の目」は青色の右目と黄色の左目がそろっている状態で初めて神器の目となるらしい。
私には目が片方しかないから、神器の目は成立していない。
「え、あ」
「お目目片方しかないの?(驚)」
「目ん玉くり抜かれてるの!?えぐ?!」
「す、すみません……。でも、その、私はもともとは」
「神器の目を持ってたので神器になれますってこと?でも神器の目ないと困っちゃうなぁ……(困)」
「神器の目ないとだめらしいよ」
「え、で、でも」
「やっぱり猫手さんの方が優先かなぁ」
「私、神器になれるの?」
「うん」
「マジ?!やった!!」
「嫌!嫌だ!私は役立たずになりたくない!!今度こそ神器になって桐原家としてお役目を果たすの!!」
「神器の目がないと、神器は長続きしなくなっちゃうんだ(悲)。君も桐原家だし、分かってると思うんだけどなぁ(哀)」
「え、神器の目ないと死ぬの早いってこと?!私どうなんのそれ!!」
「霊媒体質の子は別だよ」「よかったー」
「それでもいい!!私は!私は……っ!!」
「役立たず、かぁ。そんなこと言うんだ桐原家の人(怖)。僕は神器は大事に長持ちするのがいいなーって思ってたんだけど、自分が恥さらしにならないために神器って利用されてるの…?(悲)」
「確かに、自分の立場のために神様利用するのってどうなんだろ……」
「……そんなつもりじゃ」
「もういい、よね。じゃあ猫手さん、こっち来て」
「はい!!」
猫手が正面に歩き出す。
おそらくそのあたりに神化人がいるのだろう。
「じゃあ猫手さん、これから僕が言う言葉を復唱してねーー」
「ーーはい。”私、猫手小判は”」
「ま、待って」
「”付喪憶清天様により”」
「嫌、なんで私は」
「”六百八拾七代神器に”」
「私は……!!」
『この目のせいでお前にいらぬ期待を!!』
『役立たずは桐原家なんかから出ていけ!!』
『なんだよお前。まーた桐原様に嫉妬かよ。神化人と話せないくせに、役立たずのくせに、でしゃばんなよ!!』
「”呼応されることを誓います”」
「ずっと、役立たずとして苦しまないといけないの……!」
霧に包まれ、猫手の姿は千変万化しているようにも、全く変わらぬようにも見受けられる。
霧が引くと、彼女はこちらに向き直り、ゆっくりとほほ笑んだ。
「嘘は良くないな、”桐原さん”」
「お前……!!」
「神化人にお前呼ばわりか(驚)。ここは最下層だよ、脱出したいならあっちから出て梯子を上って行って」
「え、あ」
「神様にはリスペクトしてほしかったなー(悲)」
「す、すみません……!」
私は急いでドアを開け、この空間から脱出した。
ドアを開けた先はなんてことない廊下。ただ、そこには一つのCDがあった。
CDには「桐原」と書かれている。
これは私の事か?それとも音端?
とにかく私にとってこれは重要になりそうだ。
近くに流せそうな場所があったので再生してみた。
内容は、言葉ではまとめられないほどボリューミーで、なおかつ難解だった。
私にもわからないところはあった。
しかし、私の次の目的を示すのに十分な資料になった。
「■■を殺す……!」
*
「誰、ですか……?」
そうだ。俺は今天神じゃないんだ。
だから音端に知られてるはずない。
しかも知られてたとしたら……”本当に殺されかねない”。
それほど、俺は過去に取り返しのつかないことをしてしまった。
本当に申し訳ない事だ。天神と、それに使えていた人々に。
「あ、えと、あ、あやし、怪しいものではないです」
「そうなんですか……?」
「あ、えあ、えと、そ、その」
「……どこかで見た事ある様な気がするんですけど」
「え!!!!気のせい、多分気のせいで、で」
「もしかして、あの時の盗ぞ」
「ああああああああーーーーーーーー!!!!!」
「え(引)」
あーーーーーーーーーーーー!!!最悪!!
もうバレてるのが怖すぎてキチゲ解放してしまった。
赤の他人作戦は大失敗に終わった。
てか静かにしてろって話でしたねそういえば。これが終わりってやつかぁ……
というかもうなんの作戦もできなくなってしまった。最悪。自分はやはりゴミ人間だ。
「も、もうバレてる……?!」
「そりゃああの時毎日来てましたし」
「え、あ、ああ、う、嘘だ……」
「えっと……、この状況ってどういう?」
「えあ、こここの俺で良ければせ、説明しても」
人生においてかくかくしかじかを使うのはこれが最初で最後だろう。
「つまり静かにしてればいいんですか」
「そそそそうだと思います」
「ところで、天神さんは?」
「あ……」
「この件に関係あるかは分かりませんけど、5年前くらいに天神さんが急に優しくなったタイミングがありましてね。まるで人が変わったかのように」
そこまで言い切り、音端は含みのある笑い方をした。
そして俺の方を見ている。目隠されてるけど。
なんとなく目線を逸らしてみるが、凍てつくような視線が俺を襲う。
なんだよお前。
隣の奴がどもりながら目線逸らしてびくびくしてたら気まずくなって目逸らすだろ普通。
なんでずっと俺の方見てるんだよ。
もしや、本気で殺されるのかもしれない。
”俺のせい”で天神が、彼の主人が死んだと、彼はもうすでに知っているのかもしれない。
だとしたら最悪過ぎない???
「以前の天神さんは手厳しいお方でしたけれど、その5年前から急に褒めてくださったり報酬に追加で払って下さったり……
本当に人が変わったようだと、まるで親切な黄落人が変身しているのかと、我々使用人の中でも噂になっていました」
今度はめっちゃ体を乗り出して、またもやこちらを見ている。
しかもまあまあにやにやしながら。怖い。
確かに俺は、五年前に起こった”ある事件”がきっかけで天神白兎として生活していた。
黄落人の変身のレベルは日がたつごとに上達する。
なので、最初の方は多少本来の性格や見た目と相違が生じる場合がある。
俺も今となっては、初期のころは天神のスパルタ性が足りてなかったなーと思っている。
うん。めっちゃすごい観察眼だなほんとに。バレてる。
「そ、その、なんで俺の方そんな見るんすか」
「私は天神さんの武器の手入れをしていた者なのですが、5年前から刺突に特化した武器を使用し初めまして、少々意外だったのを覚えております。その武器に黄色いリボンがついていて、一際それが目立っていましたし」
音端は俺のそばまで来て、ナイフケースの中から手慣れた手つきで黄色のリボンがついたナイフを取り出した。
血の気が引いた。黄落人として一番やっちゃいけないことをしてしまった。
「え、あじゃあその、俺の事気づいてらっしゃってらっしゃる……??」
「そうですね、”主様”」
つまりこいつは、今までの主人、天神が偽物だということに気付いていて、その正体が黄落人で、そいつが俺ってところまでわかってる状態で今まで生活してきたのだ。
怖い。メンタルが強すぎる。
「しかしながら、主様、私はここまでしか理解しておりません。なので、私の前の主人、天神は現在どうなっているのですか?おそらく、何らかの理由があって天神家から退かねばならなかったのでしょうが……」
「……非常に言いたくないんだけど……知りたいよね……」
「まあ前の主人のことですので。……そうですね、主様。せめて、天神の安否は教えていただけませんか?」
「安否……そうだな。俺も腹くくらないと。天神はーー」
「5年前、彼が13歳の時、俺を庇って亡くなった」
そう、あれは5年前、彼の14歳の誕生日前日のことだった。