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夜久瀬
3
夏の終わり。
特別試験を乗り越えたDクラスには、
以前よりも穏やかで明るい空気が流れていた。
朝の教室では、
桔梗ちゃんと恵ちゃんがひなの席に集まり、
今日のヘアアレンジや週末の予定について楽しそうに話している。
「ひな、そのヘアピンかわいい!」
「ほんと! 白い髪にすっごく似合ってる!」
「えへへ……ありがとう」
そんなやり取りを見て、
平田くんも穏やかに笑っていた。
「天白さん、最近すごく楽しそうだね」
「うん。みんなのおかげだよ」
教室には、ひなの確かな居場所ができていた。
昼休み。
ひなは 佐倉愛里 と図書室へ向かっていた。
その途中、廊下の角で数人の男子生徒とすれ違う。
先頭にいた赤い髪の男子が、足を止めた。
鋭い目つき。
威圧感のある雰囲気。
Cクラスのリーダー、龍園翔だった。
「へえ」
龍園はひなをじっと見つめる。
「Dクラスにこんな可愛いのがいたとはな」
突然の言葉に、ひなの肩がびくりと震えた。
愛里も不安そうにひなの袖をつかむ。
「……失礼します」
ひなが小さく頭を下げて通り過ぎようとした、その時。
「綾小路の近くにいる女だろ?」
その名前に、ひなの足が止まる。
龍園の口元に意味深な笑みが浮かんだ。
「面白そうだ」
その日の放課後。
ひなはいつものように学生寮へ戻る途中、
綾小路くんと並んで歩いていた。
「今日、龍園くんに声をかけられたの」
ひなの言葉に、
綾小路清隆の視線がわずかに鋭くなる。
「何を言われた」
「綾小路くんの近くにいる女だって……」
彼は少し考え込むように黙り込んだ。
「ひな」
静かな声で名前を呼ばれる。
「しばらくは、なるべく一人で行動しないでくれ」
「……心配してくれてるの?」
「用心しておくに越したことはない」
いつも通りの淡々とした口調。
それでも、その言葉の奥にある気遣いははっきりと伝わってきた。
寮の前に着くと、
綾小路くんはふと立ち止まった。
「もし何かあったら、すぐに俺に連絡しろ」
「うん」
「どんな小さなことでもいい」
ひなはこくりと頷く。
すると彼は、
ほんの一瞬だけためらったあと、
ひなの頭にそっと手を置いた。
「お前に何かあるのは、困る」
その不器用な言葉に、
ひなの胸は温かな想いで満たされる。
「……ありがとう、綾小路くん」
ひなが微笑むと、
彼は静かに視線を逸らした。
「礼を言うほどのことじゃない」
けれど、
あたしのことを守ろうとしてくれている。
その事実だけで、
どんな不安も少しだけ小さくなっていった。
教室の中で広がる友情。
そして、見えないところで近づく新たな波乱。
その中でも、
綾小路くんの隣にいられることが、
ひなにとって何よりの安心だった。
静かな警戒の先に、
二人の絆はさらに深まっていく――。
コメント
1件
ひなちゃんの周りに少しずつ温かい居場所ができてきて、本当によかったね〜!😭💕 でも龍園に目をつけられちゃう展開はちょっとヒヤヒヤする…綾小路くんの「お前に何かあるのは困る」ってあの不器用な感じの優しさがもうエモすぎるんだが!?🥺✨ 彼なりに守ろうとしてくれてるのが伝わってきて、胸がぎゅってなったよ。静かな警戒の中で深まる絆、続きが気になって仕方ない!!🌸