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第22話 待ってて、ー迎えにいくから
「そろそろ、“次”へ進もうか」
アルベリヒは狂った目を光らせ、拘束された光希の額を指先でなぞった。
その部屋はまるで、拷問と儀式の融合体のようだった。
魔術陣のような痕跡が床に描かれ、空中には生きた血液が浮かび上がって揺れている。
「我々が今まで研究してきた対象は悪魔だった。
今回は悪魔の血との融合実験ーー
”悪魔の力を君の中に流し込み、それでも人として保てるか、という実験だ。
我らはこの実験をするに値する人間をずっとずっと探していた。
そして、お前を見つけた。
君なら…きっと、境界を越えてくれるだろう?」
「…..やめろ、僕は…..あなた達の道具じゃない…..!」
叫ぶ光希の胸部に、赤黒い液体が直接注射された。
その瞬間、全身を焼き尽くすような痛みが走る。
「ぐ、あ、ああああああああああッツ!!!!!」
全身の血管が浮き出し、目が異常に光を放つ。
腕には悪魔のような文様が現れ、意識が何度も飛びそうになる。
「ぐ、う、あああああああああッツ!!!!!」
彼の叫びに、研究員すら顔を背けた。
ある一人の研究員は言った。
「アルベリヒ様、無茶です。
彼の体も、精神も持たない。
このまま殺す気ですか!?」
アルベリヒは頭に血が上ったようで、研究員に怒鳴った。
「死んだらその時だ!
お前は臆病者だ!
我が神になるまでこの光景に耐えると言っただろう!
もう忘れたのか!?」
研究員を怒鳴ったあと、アルベリヒは笑った。
「素晴らしいぞ光希…..その力…..もっと、もっとだ!」
佳代は、声にならない怒りと悲しみを胸に、作業場でこっそり鉄片を拾い上げた。
それは作業機械の部品で、削れば即席のナイフになる。
「光希さん……今どこに……」
その手元を、西円寺が震える手で支える。
「あんたが..動くなら、私もやる…..林さんだって、きっと生きてる。待ってる。」
「このままじゃ…みんな壊れる」
お鶴の方が小さな声で言うと、相奈も静かにうなずいた。
「タイミングは限られてる。次の交代のとき、私は西側の倉庫の鍵を開けにいく。その時ーー」
佳代たちは、無言でうなずいた。
計画はまだ未完成。でも、もう誰一人、何もせずにはいられなかった。
蓮人は警備のいない夜の隙を見て独房の壁を毎晩こすっていた。
数日かけて、やっと拳ひとつ入るほどの穴が開く。
そこから、隣の独房にいる小河と言を始める。
「小河、聞こえるか」
「…..ああ、蓮人か…..みんな、無事だ」
その先の壁を隔てて、日向の声が届いた。
「光希の声..聞こえたんだ。苦しんでた。今も、毎日何かされてる。…放っておけるかよ」
「放っておけるかって?
当たり前だ…..俺たちは…..仲間だ。
仲間を見殺しにはしないしできない。」
その言葉に、みんなが静かにうなずいたようだった。
監禁され、力は奪われても、意志は折れていなかった。
そして、近松がゆっくりと手に握ったものーーそれは、靴底に隠していたピンだった。
「そろそろ潮時だな。やるぞーー”反撃”を」
その夜、作業終わりに通路を通る佳代が、ふと壁の奥からかすかな物音を聞いた。
「….誰?」
「….佳代…..?」
「…..光希…..さん!?」
かすれた声に、胸が締め付けられる。
思わず牢屋の柵まで近寄る佳代。
「生きてたんですね!?よかった、本当によかった……!!」
光希も、かすかな笑みを浮かべながら答えた。
「みんな…..まだ、無事..?」
「無事ですよ!!
…てか…すごい顔色ですよ…」
「ホント…?ちゃんと休まないとな…。……あっ、そうだ。
佳代…落ち着いて……聞いて
実はーー奴らは僕を使って…じ…実験をしてるんだ。
……今もその段階。なんせキツくって…。
何度か反撃を考えたんだけど…やっぱり…この体じゃ無理だ…って。
だから…せめて…こ、これを…。」
光希は佳代に一枚の紙を渡した。
「情報だ。これを使って脱出を…。」
バタン!
光希は力果てて倒れてしまった。
「待ってて。光希さん。
今度は私が迎えにいくから。」
佳代は決意を固めたのだったー。
すみません🙇
明日は分け合って連載を止めさせていただきます!
楽しみにしている方には申し訳なさでいっぱいです…😔💦
何か気になる点、不満などがあったら気軽にコメントしてください!
待ってまーす!(ハート&フォローよろしくお願いします!)
7月6日 みきゃん