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𝐀𝐘𝐀_

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メイ
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第二部
第三章 「付き合ってるの?」
春の暖かな風が、大学構内の桜を揺らしていた。
午前の講義が終わり、千弥はお気に入りのベンチへ座る。
腕の中には、今日のお供であるくぅちゃん。
「今日はいいお天気だね。」
くぅちゃんへ話しかける千弥。
そんな様子を見て、同じ学科の学生たちが微笑む。
「結城くん。」
「ん?」
「隣いい?」
「うん。」
友人がベンチへ腰を掛ける。
「今日は元気そうだね。」
「うん。」
「熱、下がってよかった。」
「ありがとう。」
千弥は嬉しそうに笑った。
しばらく他愛ない話をしていると、一人の女子学生が思い出したように口を開いた。
「そういえばさ。」
「?」
「毎日迎えに来てくれるお兄さんいるじゃん。」
「にぃに?」
「そうそう!」
「あと、一緒にいる背の高いイケメンの人!」
「はるにぃ?」
「その人!」
千弥はこくんと頷く。
「仲良しだよ。」
「うん、それは見れば分かる。」
女子学生は少し笑いながら続けた。
「ねぇ、あの二人って付き合ってるの?」
「……?」
千弥は目をぱちぱちさせた。
「つきあう?」
「え?」
「おさんぽ?」
友人たちは思わず笑ってしまう。
「違う違う。」
「じゃあ、ごはん?」
「それも違うかな。」
千弥は真剣に考え始めた。
「……。」
数秒後。
「毎日、ごはんたべてる。」
「会社で?」
「うん。」
「じゃあ付き合ってるのかな?」
「……?」
ますます分からない。
「にぃにとはるにぃは、ずっとなかよし。」
「高校のころから。」
「けんかもするけど、すぐなかなおりする。」
「いつも、ふたりでわらってる。」
そこまで話して、千弥はにっこり笑う。
「だから、なかよし。」
その純粋な答えに、友人たちは顔を見合わせた。
「……結城くんらしいね。」
「うん。」
「可愛い。」
千弥は何が可笑しいのか分からず、小さく首を傾げていた。
放課後。
いつものように大学を出る。
「くぅちゃん。」
「にぃにのところいこう。」
のんびり歩いて会社へ向かう。
受付へ着くと、社員たちは笑顔で迎えてくれた。
「こんにちは、ちーちゃん!」
「こんにちは。」
「今日は暖かかったね。」
「うん。」
受付から社長室へ連絡が入る。
『社長、ちーちゃんがお見えです。』
「迎えに行こう。」
千景と遥は、いつものように並んでエレベーターへ向かった。
扉が開く。
「にぃに!」
「ちーちゃん。」
「はるにぃ!」
「おかえり。」
三人は自然と笑顔になる。
社長室へ戻ると、おやつの時間になった。
今日はイチゴのショートケーキ。
「いただきます。」
「いただきます。」
しばらく穏やかに食べていたが、千弥は急に顔を上げた。
「にぃに。」
「どうした?」
「きょうね。」
「うん。」
「がっこうで、きかれた。」
「何を?」
「にぃにとはるにぃ。」
「……?」
「つきあってるの?って。」
――シーン。
社長室の空気が止まった。
千景はフォークを持つ手を止める。
遥も紅茶を飲もうとして固まった。
「……え?」
千景が聞き返す。
「そうきかれた。」
「ちーちゃんは、なんて答えたの?」
遥が恐る恐る尋ねる。
「なかよしって。」
即答だった。
「こうこうのころから、ずっと。」
「……。」
「いつもわらってるから。」
「……。」
「だから、なかよし。」
千景と遥は同時にほっと息をついた。
「それでね。」
千弥は続ける。
「つきあうって、おさんぽ?」
思わず二人は吹き出した。
「あははは!」
「違うよ。」
「ちがうの?」
「うん。」
「むずかしい。」
千弥は首を傾げながらケーキを一口食べる。
「でも。」
「?」
「ちぃはね。」
「うん。」
「にぃにとはるにぃが、なかよしなら、それでいい。」
その笑顔は、どこまでもまっすぐだった。
その日の帰り道。
千弥は後部座席で、くぅちゃんを抱いて眠ってしまった。
静かな車内。
信号待ちで車が止まる。
千景が小さく息をついた。
「……びっくりしたね。」
「うん。」
助手席の遥も苦笑する。
「まさか、そんなこと聞かれてたなんて。」
「ちーちゃんは意味も分からず答えたんだろうね。」
「そうだろうね。」
しばらく沈黙が流れる。
やがて遥が窓の外を見ながら、小さく笑った。
「でもさ。」
「ん?」
「付き合ってるって思われるくらい、僕たち近いんだね。」
千景は少し考え込む。
「……そうなのかな。」
「今まで気にしたことなかった。」
「僕も。」
二人は顔を見合わせる。
少し照れくさい。
けれど、不思議と嫌な気持ちはしなかった。
その時だった。
後部座席から寝ぼけた声が聞こえる。
「……にぃに。」
「ん?」
「……はるにぃ。」
「起きた?」
「……なかよし。」
寝言だった。
二人は思わず笑ってしまう。
「うん。」
千景が優しく答える。
「これからも、仲良しだよ。」
その言葉に安心したように、千弥はまた静かな寝息を立て始めた。
車は夕焼けの街をゆっくりと走り、三人を温かな我が家へと運んでいった。
ーーー
第二部 第三章 終わり。
第二部 第四章へ続く。
コメント
2件
第二部、第三章をお読みいただきありがとうございます!
うわぁ……今回の話、すごく好きです🥺💕 千弥くんが「つきあうって、おさんぽ?」って真顔で聞き返すところ、あまりに可愛くて胸がぎゅってなりました。千景さんと遥さんの関係を、千弥くんが「なかよし」ってまっすぐ言い切るのが、もう尊すぎて……。社長室の空気が止まったシーン、私も一緒に固まりました(笑) 最後の車の中の寝言「……なかよし」で、涙腺にきちゃいました。ずっとこの三人のあったかさが続きますように🌙