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𝐀𝐘𝐀_

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メイ
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第二部
第四章 みんなが願う幸せ
五月。
会社では創立記念パーティーが開かれる日を迎えていた。
夕方から始まる立食パーティー。
社員や取引先が集まり、会場は華やかな雰囲気に包まれている。
「社長、おめでとうございます。」
「ありがとうございます。」
千景は次々と挨拶を交わしていた。
その隣には、いつものように遥がいる。
「ちか、次はあちら。」
「うん。」
二人は視線を合わせるだけで意思が伝わる。
高校時代から積み重ねてきた時間が、そのまま仕事にも表れていた。
午後五時。
会場の入口が少しだけ賑やかになる。
「あっ!」
受付の女性社員が笑顔になった。
「ちーちゃん!」
千弥が、小さなテディベアの「くぅちゃん」を抱いて立っていた。
今日は淡いクリーム色のカーディガンに白いシャツ。
少しだけおしゃれをしている。
「こんにちは。」
「今日は来てくれたんだ!」
「うん。」
「社長がすごく楽しみにしてたよ。」
千弥は少し照れながら笑う。
「にぃに、いる?」
「もちろん!」
その頃、社員の一人が社長へ知らせに向かった。
「社長。」
「どうしました?」
「ちーちゃんがいらっしゃいました。」
その瞬間だった。
「本当?」
千景の表情が一気に柔らかくなる。
「迎えに行く。」
「あっ、社長!」
役員が苦笑する。
「まだ挨拶が……。」
「三分だけ失礼します。」
「社長らしいですね。」
会場には笑いが広がった。
遥も小さく笑いながら後を追う。
「僕も行く。」
入口では千弥がきょろきょろと辺りを見回していた。
「にぃに、どこかな。」
その時。
「ちーちゃん!」
「にぃに!」
千景が歩み寄ると、千弥は嬉しそうに駆け寄った。
「こんばんは。」
「こんばんは。」
「来てくれてありがとう。」
「うん。」
千景は自然に頭を撫でる。
「今日は少し人が多いから、僕の近くにいてね。」
「うん。」
そこへ遥もやって来た。
「こんばんは、ちーちゃん。」
「はるにぃ!」
「今日もくぅちゃん一緒なんだ。」
「うん。」
「おしゃれしてるね。」
「えへへ。」
嬉しそうに笑う千弥だった。
会場へ入ると、社員たちが次々に声を掛ける。
「ちーちゃん!」
「元気だった?」
「この前は心配したよ。」
「もう大丈夫?」
「うん。」
「よかった!」
ある女性社員が、小さな紙袋を渡した。
「これ、創立記念のお菓子。」
「いいの?」
「もちろん。」
「ありがとう。」
両手で大切そうに受け取る千弥。
「くぅちゃんも、ありがとうって。」
その一言に、周囲は思わず笑顔になる。
「くぅちゃんにもどういたしまして。」
しばらくすると、千弥は社員たちと楽しそうに話し始めた。
その様子を少し離れた場所から見守る千景。
「安心?」
隣に立った遥が尋ねる。
「うん。」
「みんな、本当にちーちゃんが好きだね。」
「ありがたいよ。」
「ちかが大切にしてるからだよ。」
千景は静かに微笑んだ。
「僕一人じゃ、ここまでじゃなかった。」
「え?」
「はるも、いつも一緒にちーちゃんを見守ってくれてる。」
遥は少し驚いたように千景を見る。
「ありがとう。」
その一言に、遥の胸が少しだけ熱くなった。
「……どういたしまして。」
その時だった。
営業部長が笑いながら二人に近付いてくる。
「社長。」
「はい。」
「前から思ってたんですが。」
「?」
「社長と遥さん、本当に息がぴったりですね。」
「そうですか?」
「ええ。」
「見ていて安心します。」
その隣にいた女性社員も笑う。
「本当にお似合いですよ。」
「……。」
「……。」
二人は同時に固まった。
「えっ?」
「お似合い?」
社員たちは悪気なく笑う。
「仕事も私生活も、ずっと一緒ですし。」
「自然すぎるんですよ。」
「社内では有名ですよ。」
「仲の良いご夫婦みたいって。」
「ご、ご夫婦!?」
遥が思わず声を上げる。
社員たちは「あっ」と口を押さえた。
「すみません、つい……。」
その場は笑いに包まれたが、千景も遥もどこか落ち着かない。
その頃。
少し離れた場所でジュースを飲んでいた千弥は、社員たちの会話は聞こえていなかった。
代わりに、二人が並んでいる姿を見つける。
「にぃに。」
「はるにぃ。」
自然と笑い合っている二人。
その姿が嬉しくて、千弥はにこにこと笑う。
「ふたりとも、たのしそう。」
そして、小さくつぶやく。
「よかった。」
パーティーが終わり、帰りの車。
今日は遥も一緒だった。
後部座席では千弥がうとうとしながら、くぅちゃんを抱いている。
車内は静かだった。
しばらくして、千景がぽつりと口を開く。
「今日のことだけど。」
「……うん。」
「お似合いって言われたね。」
遥は窓の外を見たまま、小さく笑う。
「言われたね。」
「少し驚いた。」
「僕も。」
また静かな時間が流れる。
すると突然、後部座席から声がした。
「にぃに。」
「起きた?」
「……。」
半分眠ったままの千弥は、小さく笑う。
「ふたりとも。」
「うん?」
「ずっと、いっしょにいてね。」
その言葉に、千景も遥も息をのんだ。
眠たくて、きっと深い意味なんてない。
ただ、千弥の素直な願い。
千景はルームミラー越しに弟を見る。
「約束するよ。」
優しく答えた。
遥も静かに頷く。
「僕も。」
その返事を聞いた千弥は安心したように「えへへ」と笑い、再び眠りについた。
夜の街を走る車の中。
二人は言葉を交わさなかった。
それでも、お互いの心には、小さな変化が静かに芽生え始めていた。
それはまだ恋と呼ぶには早い、けれど確かに昨日までとは違う温かな想いだった。
ーーー
第二部 第四章終わり。
第二部 第五章へ続く。
コメント
1件
お疲れさま、𝐀𝐘𝐀_さん🌙 第5話、読ませてもらいました。 創立記念パーティーの華やかさの中にある温かさがすごく心地よかったです。 社員のみんなが千弥ちゃんに優しくて、「にぃに」「はるにぃ」って自然に呼べる関係が本当にあったかい。 それでいて、千景さんと遥さんが「お似合い」って言われて照れるシーン、ちょっと胸がときめきました。 まだ恋と呼ぶには早いけど、確かに芽生えてるその感覚……すごく繊細で好きです。 千弥ちゃんの「ずっと一緒にいてね」って一言が、全部を包み込んでくれたみたいで、じんわりきたよ。 続きもゆっくり楽しみに待ってます🧸🤍