「〜♪」
少し霧架かっている夜明け。俺しか知らない入り江に綺麗な歌声が響く。
「おはよ!りもこん!」
「…!キュルル!クルッ!」
歌声の発生源はりもこんという人魚から。
南国の海のような色の髪の毛に宝石のような瞳の色。
最初は幻かと思ったけど何回も会っているから現実だと認識することができた。
りもこんという名前は俺が付けた。センスいいでしょ。
「さっきの歌綺麗だったね」
「クルル?キュウ!」(スリスリ(頬擦
「わ!あはは、くすぐったいw」
「クルルル♡」
いつも誰も起きていない時間にここにきて二人だけで話をしている。
りもこんの言葉はわからないから、こっちが一方的に話しているだけだけど。それでも楽しそうに聞いてくれている。
「しゅうと様ー。どこですかー?」
「わ、もう時間なのか…ごめんねりもこん、また明日!」
「キュルゥ…」
俺はこれでも一国の王子だから朝方しか自由に過ごせない。毎朝が俺の唯一の楽しみだ。
今日もまた入り江に行く。
「りもこ〜ん…あれ?」
りもこんが岩に寄っかかっていた。
どうしたのか心配になって近くに行ったら、寝ているだけだった。
りもこんは人魚だから人間に狙われることが多いと思う。
早く即位して王様になったらそんなことをしないように法律を作れるんだけどな…
「俺も…りもこんみたいに海で自由に暮らせれればな…」(頭撫
つい本音が漏れちゃったけど、りもこんは起きてなかったし大丈夫か。
「はぁ…」
ここ最近、社交会やパーティー続きでゆっくり休むことができなくてりもこんにも会えなかった。
今日は何もない日だったから久しぶりに入り江に行けた。
「キュゥ…」
入り江に行くとりもこんが寂しそうに待っていた。多分、毎日ここで待ってたんだろうか…
久しぶりに会って、俺は話したかったことをたくさん話した。
「りもこんごめんね、最近忙しかったから」
「キュウ?クルッ♪クルル♪」
よくわかんないけど、俺に会えて嬉しかったのかいつも歌ってた歌を歌い始めた。
初めて最初から聞いて改めて綺麗だなって思った。
「キュー…クルル?」
「…ん?」
いつのまにか寝ていたみたいでりもこんに起こしてもらった。
「ありがとう」
「キュ!」
「ふぁ…🥱」
「…キュッ」
「…?どうしたの?」
あくびをした後、りもこんが目を見開いて驚いた顔をしていた。
ていうか俺、りもこんの言葉わかんないから質問しても意味ないじゃん。
「…」
「…」
しばらく気まずい時間を過ごした後使用人に呼ばれて城に戻った。
とう様に呼ばれたと聞いて会いに行ったら、結婚の話を持ち出された。
「…え」
「〇〇国の王女と結婚してもらう」
「断ることは…」
「そんな選択肢最初からないであろう」
「〇〇国は有数の経済国だ。そことの繋がりを消すとはどういう考えだ」
「俺の意見は…」
「最初から求めていない。日にちは…」
王子だからという立場で勝手に人生を決められることにはもう慣れていたはずなのに、俺は嫌になって気づいたら城をとび出していた。
「ッ…なんで…慣れてるはずなのに…」
誰もこない入り江で一人で泣いていたら、りもこんが来た。
「キュウゥ?クルル?」
「大丈夫…だよ…なんでもないからッ…」
「キュウ…」(ギュ(抱
りもこんが優しく抱いてくれた。海で暮らしているはずなのに暖かくて優しかった。
「俺も…りもこんみたいに…自由に海で暮らしたいなぁ…」
またそんな叶わないことを言ってしまった。
「ごめん…冗談…だから…」
「キュ♡」
一瞬りもこんが嬉しそうな顔をしたような気がした。けれど確かめる暇もなく使用人に呼ばれて城に戻った。
翌日、またあの入り江に行くとりもこんが嬉しそうに待ってた。
「りもこんおはよう」
「キュウ‼︎✨」
「嬉しそうだけどどうしたの?」
「キュウ!キュ!」(引張
りもこんは頑張って俺の腕を引っ張りながら海に入って行った。
「りもこん?だめだよ、俺濡れちゃうから」
そう言って離れようとしたけど、力が強くて離せなかった。抵抗はしたけど、どんどん沖に連れてかれた。
「りもこん!俺人魚じゃないよ!」
「キュウ…♡」(グイッ
「うわ⁉︎」
いきなり、りもこんに引っ張られて海に入ってしまった。突然のことで息が続かなかった。
「…ゴボッ…りッ…ガボッ」
息が切れかけて苦しい時にりもこんが舌を入れてキスをしてきた。
口の中を舌で舐められているときに何かを飲まされたけど意識が曖昧でわからなかった。
意識が途切れる直前耳元で聞こえたのは、
「これで一生一緒だね♡しゅうと…俺の人魚姫♡」
人魚に恋をすると魅了されて離れられなくなるというのはこういうことだろうか。
しゅうとを海に引き摺り込んで俺の住処に連れて行こうとしたけど気絶しちゃった。
「そっか、しゅうとは人間だったね」
さっき俺の体液を飲ませたから海の中で息はできるようになってる。とりあえず、住処に戻って寝かせよう。
「二人の家帰ろうね♡」(ニュルル
俺が普通の人魚だと思った?
残念、俺は海の魔法使いって言われてるタコの人魚だよ。
しゅうとに一目惚れしてから普通の人魚になる薬を作って近づいたんだ。
無理やり連れてきてんじゃんって?
しゅうとが自ら望んだことだよ?無理やりじゃないもん。
それにあのときしゅうとから求婚してきたんだよ?両思いだよ。
じゃ、俺はしゅうととの愛の巣窟に帰るんで。邪魔しないでね♡
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元ネタは誰でも知ってる人魚姫です。
求婚されたらしいですけど、どこでですかね〜
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