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かんな
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寿命㌫(主) 🔮🖤ᩚ
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学園祭四日目。
昨日と同じ東の市のカフェで、イソトマはリリーとお茶を楽しんでいた。
「ねぇ、イソトマ。笑いなよ」
「へ?」
ニコニコ顔のリリーに注意された。
「僕らは仲良しじゃないといけないんだから。そうじゃなきゃ、イソトマがあんな本を描いたってこと自体、浮くでしょ。しっかりしてよ」
本当にその通りだ。
仲良しを見せつけるために、こうして一緒にお茶を飲んでいるのだから。
(でも、昨日のあんなのを見てすぐ、笑うなんて)
大好きな推しだからこそ、苦しい。
きっとルシアンも同じように苦しかったに違いない。
シュンと俯くイソトマを眺めて、リリーが息を吐いた。
「僕はイソトマを誘拐しているし、殴ってるし、殺しかけたし。嫌いなのはわかるけどさ。全部、丸く収まればサヨナラできるんだから」
「嫌いじゃない! 僕はリリーが推し……好きだよ」
「え……好きは流石に。逆に引くっていうか」
リリーに笑顔のままドン引きされた。
解せない上にショックだ。
「僕は、ルシアンとリリーが本当に恋人になたらいいって、思ってるよ」
周囲を気にしながら、小さな声で伝えた。
「だから、何でさ。そうなったらイソトマは婚約解消されて、王妃にもなれないんだよ」
こんな話をしていても、リリーは笑顔を崩さない。さすがだ。
「立場はどうでもいいんだ。王妃になりたいわけでもない。二人の絆を繋げて欲しいんだよ」
じわりと目が潤む。
リリーの笑顔が崩れた。
「ちょっと……僕とルシアンの間に絆なんかないよ。何、言ってんの?」
「あるよ。十年前の孤児院。覚えていて、しかも再会するとか、運命でしかない。絆、繋がってる」
「ただの偶然だから。脳みそ、沸いてんの?」
リリーの言葉が辛辣すぎる。
イソトマはショックで固まった。
「リリー、もう少し言葉を選んでくれないと、イソトマは笑えない」
後ろからディルクが、こっそり声を掛けた。
「今更もう、笑わなくていいんじゃないの?」
呆れながら、リリーがカフェオレを口にした。
周囲には、他にも生徒がいる。
好奇の目は最初からずっと、リリーとイソトマに向いている。
ルシアンの婚約者と恋人がお茶しているのだから、目立つのは当然だ。
リリーの笑顔も、イソトマのシュン顔も既に全部、見られている。
「ごめん、僕、リリーみたいに上手にできない」
嬉しくないのに笑ったり、演技したりできない。
「ちょっと前のイソトマなら、素でその辺、クリアしていたと思うけどね。今や別人の変わりようだけど、頭でも打ったの?」
呆れたようにリリーが問い掛けた。
イソトマは、思わず後頭部を抑えた。
「数カ月前、転んで頭を打って以来、昔のようなお人好しに戻ったんだ」
ディルクが真顔で答えた。
「本当に頭、打ったんだ」
リリーが本気で飽きれた顔をした。
「頭は打ったけど、別にお人好しになった訳じゃないよ」
オタクの前世が戻ってきただけだ。
推しカプを思い出しただけだ。
「まぁでも、イソトマだけじゃないよね。御貴族様って、お人好しばっかり。僕は、こんななのに……ルシアンも結局は、優しいんだ」
カフェオレを飲み込んだ唇が、一瞬だけ震えて見えた。
リリーの顔を見ていたら、何も言えなくなった。
(ルシアンがリリーに優しいなら、良かった)
オタク脳より、イソトマの心が安心する。
(昨日のクロウとの会話、全部が演技じゃないよね)
どれが演技で、どれが本音だったんだろう。
一番聞きたいことは聞けないまま、お茶の時間は過ぎていった。
コメント
1件
第35話、読み終わりました……! リリーのあの「好きは流石に引く」には思わず笑っちゃいましたけど、イソトマが「推しカプの絆を繋げたい」って本気で願ってるのが伝わってきて、胸がぎゅっとなりました。立場を捨てても二人を幸せにしたいって、その純粋さが切ないです💦 それにしてもリリー、ルシアンに優しくされて唇震わせてましたね…あの一瞬、何か隠してる感じがして気になります。お茶会の和やかな空気の裏で、みんなそれぞれの本音を飲み込んでるんだなあって。素敵な回でした!