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白と黒の夜に咲く

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白と黒の夜に咲く

4 - 第4話 逃れられない想い

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2025年03月23日

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夜の冷たい風が、都会のビルの隙間を縫うように吹き抜ける。
湊はカフェの裏口に立ち、静かに夜空を仰いだ。


——相沢が、自分に惹かれている。


それは、もう分かりきっていた。

彼の視線、言葉、仕草……どれをとっても、隠しきれない感情が滲み出ていた。


(……俺も、もう誤魔化せないのかもしれない)


カウンター越しの他愛ない会話が、ただのやり取りではないと気づいたのは、いつだったか。

相沢の隣にいると、ふと心が落ち着く瞬間がある。

その安心感が、どこか怖かった。


——気づいたら、お前のことばかり考えている


相沢が言ったあの言葉が、何度も頭の中でこだまする。


(でも、俺は……)


彼の前に立つ資格なんてない。

だって、自分は“怪盗レイヴン”だ。

相沢が追い続ける存在——捕まえなければならない相手。


(好きになってはいけない)


けれど、それはすでに遅すぎた。


◇◇◇


その夜、相沢はまた「ルミエール」に足を運んでいた。


いつもと変わらぬ店内。

いつもと変わらぬ湊。


だが、相沢の中では何かが変わっていた。


——俺はこいつが好きだ。


もう、その感情に蓋をすることはできない。


コーヒーを淹れる湊の手元をぼんやりと眺めながら、相沢はふと口を開いた。


相沢「なあ、湊」


湊「……はい?」


相沢「お前ってさ、本当にただのカフェ店員なのか?」


ピクリと、湊の指が止まる。


湊「……どういう意味ですか?」


相沢は、じっと彼を見つめた。


相沢「お前、時々遠くを見てるみたいな顔するよな」


湊「……」


相沢「まるで、どこにも居場所がないみたいに」


カップを置く音が、小さく響く。


湊「……考えすぎですよ」


湊は微笑んだ。

けれど、その微笑みがどこか苦しげで、作られたものであることが相沢には分かってしまった。


相沢「……なあ、湊」


湊「……?」


相沢「お前が、もし——どこかに行こうとしてるなら」


湊「……っ」


相沢「俺は、お前を引き止める」


その言葉に、湊の心臓が跳ねた。


(……何を言ってるんだよ)


そんなの、困る。

そんなこと、言わないでほしい。


(俺は、お前の敵なんだ)


それなのに、どうして。

どうして、そんなに優しくするんだ。


湊「……やめてください」


湊は静かに言った。


湊「俺は、相沢さんが思っているような人間じゃない」


相沢「……それでもいい」


湊「っ……」


相沢「お前が何者だろうと、俺は、お前のことが——」


湊「やめて!」


気づけば、湊は声を荒げていた。


相沢が驚いたように目を見開く。


湊の胸は、張り裂けそうだった。


(どうして……どうして、こんなにも)


こんなに、好きになってしまったんだろう。


湊「俺は……相沢さんの側にはいられない」


相沢「……」


湊「だから、これ以上……優しくしないでください」


相沢「……それは、お前の本心か?」


湊は答えられなかった。


答えたくなかった。


もし言葉にしてしまったら、すべてが崩れてしまう気がした。


だから、ただカウンター越しに相沢を見つめることしかできなかった。


心が叫んでいる。


——俺も、お前が好きだ。


——でも、俺は、逃げなきゃいけない。


言葉にできない想いを抱えたまま、湊は相沢から目を逸らすしかなかった。


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