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173 - 第173話   幸せなプレゼント⑬

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2024年06月19日

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「透子。最後にオレたちが挨拶しなきゃいけないとこ行こうか」

「うん」


樹のその言葉と共に、樹と行った場所は。


「お母さん。今日は来てくれてありがとう」

「透子。おめでとう」

「親父。母さん。今日はありがとう」

「樹。おめでとう」

「おめでとう」


私の母と、樹のご両親の3人が一緒にいる所で改めて樹と一緒にお礼を伝える。


「お母さん。今日ハルくんと料理作ってくれたみたいでありがとね」

「ほとんどはハルが張りきってやってくれたんだけどね。でもね、嬉しかったわ。あなたの結婚式で作ることが出来て。実はね。お父さん、あなたが結婚する時に自分の料理でお祝いしてあげるのが夢だったのよ」

「え?そんなの聞いたことないよ?」

「そりゃそうよ。あなたがホントに小さい時で、初恋もまだしてない頃の話だもの」

「そんな前の話?」

「そうよ。一般的な父親っていうのは娘を結婚させたくないっていうのが普通なのに、うちのお父さんはあなたが自分の料理を美味しく食べてるのをホントに喜んでて、そんなあなたを見るのがホントに大好きでね。いつかあなたが大好きな人と結婚する時は、オレの料理を透子も旦那さんも来てくれた人にも食べてもらって、もっとその瞬間幸せになってほしいって、ずっと言ってたわ」

「そうだったんだ・・・」

「だけど、あなたがどんどん大きくなっていくと、少しずつお嫁に出すのが惜しくなって、しばらくしたら何も言わなくなってたけどね」

「だからか。私がそんな話聞いたことなかったの」


初めて聞いた話だった。

そんな小さい頃にお父さんはそんな風に思ってくれてたんだ。

そして、そんなお父さんが想像出来る。

料理も家族も愛していたお父さんらしくて、胸が温かくなる。


「だから、お父さんの代わりに、その頃の夢をハルと叶えられて嬉しかったわ」


そうだね。

その頃のお父さんの想いを、今ようやくお母さんとハルくんで叶えてくれたんだね。


ホントにお父さんは料理を作るのが好きな人だった。

自分の料理を食べてもらって幸せそうに笑顔になっている人を見るのがホントに好きな人だった。

だから、自分のお店を開いて、目の前でそんな人たちを見れる、お店での時間がお父さんは大好きだった。

思い出すな、あの頃。

日常生活を過ごしていると、ふと忘れそうになる。

いや、忘れる・・じゃなくて、思い出す時間が少なくなる。

お父さんと過ごしていた時のこと。

でもきっとそれは今が幸せだから、思い出す時間が少なくなったのかもしれない。

だけど、お父さんはこうやって私たちに想い出をたくさん残してくれている。

そしてその想いはこうやって何年も時を経て届く。


「お父さんにも樹紹介したかったな」


だからこそ、お父さんに大切に想っている樹を紹介したかった。

お父さんに今こんなに大切な人がいるのだと知ってほしかった。


「透子さん。実はね、樹は透子のお父さんにもうしっかり認めてもらってるのよ」

「えっ?どういうことですか!?」


すると隣で話を聞いていてた樹のお義母さんがそう声をかけてきて、思わず反応する。


「お店開いて私が樹を連れて行った時あるでしょ。あの時ね、人見知りする樹が珍しくその時お店にいたあなたを小さいながらも気にかけていてね。あなたにかまってもらったのが、相当嬉しかったんでしょうね。その後にね、樹からあのお店にまた行かないの?って、実はしょっちゅうせがまれて。ようやく連れて行った時は、透子さんいらっしゃらなくて、樹が随分ガッカリしてたのを今でも覚えてるわ」

「えっ、オレ全然覚えてないわ」

「私もそんな話聞いてビックリです」


小さい樹がそんな風に思ってくれていたのが、なんかくすぐったくて、だけど嬉しくて。


「今思えば樹は透子さんが初恋だったのかもしれないわね。だから、それをご主人は感じ取ってくれたのか、その時の樹に声をかけてくださったのよ」

「お父さんが?樹さんに?」

「えぇ。きっとそんな樹を元気づけようとしてくださったのね。”じゃあ、いつかうちの娘をお嫁さんにもらってくれるかな?”って樹に言ってくださって」

「えっ!?お父さんから!?」


まさかそんな小さい樹にお父さんからそんなこと言ってたなんて。


「そしたら樹は恥ずかしそうにしながら静かに頷いたの」

「はっ!?オレ全然それも覚えてないんだけど!」


樹もさすがにそれは記憶にないらしくビックリしている。


「お父さんもね、嬉しかったみたいよ。そんな小さい男の子に透子を気に入ってもらえてたのが。いつでもお父さんはあなたを自慢に思ってたから」

「お母さん・・」


こんなに何年も経って知るお父さんの話。

そして遠い昔に樹とお父さんが交わしていた約束。


「お父さんも嬉しそうに樹くんに”透子をよろしく”って言ってたの微笑ましかったわ」


お母さんもその時のことを想い出して、嬉しそうに話してくれる。


「じゃあ、お父さんはこの結婚喜んでくれてるかな?」

「えぇ。きっとお父さんが誰より喜んでくれてるはずよ」


あぁ、こんな日に、こんなお父さんへの想いも溢れるとは思わなかった。

直接樹のことをお父さんに紹介は出来なかったけれど。

でも、きっとお父さんは見守ってくれてるよね。

私と樹とのこの幸せを。


もしかしたら、お父さんが私と樹のこの結婚を誰よりも早く祝福してくれていたのかもしれない。

そう思えば、お父さんが樹との縁をその時から導いてくれてたかもしれないね。

お父さん。ありがとう。



「お母さん。ずっとお父さんの分まで私とハルくんに幸せな家族をありがとう」


お母さんがお父さんの分まで、ずっと一人頑張って来てくれたから、私は今こんなに幸せでいれるよ。

ずっと私たちを支えてくれて、見守ってくれてありがとう。


「これからは、ちゃんと側にいる樹くんに助けてもらって支えてもらってね。あなたらしい生き方を、これからは樹くんと一緒に歩んで行ってちょうだいね」

「うん。ありがとう。お母さん」


樹と一緒なら、きっと私は私らしくいられる。

どんな時も、私らしくいさせてくれる樹と一緒なら、私は幸せでいられるから。


「樹くん、これからもどうぞ透子のことよろしくね」

「はい。透子さんはオレにとって、なくてはならないかけがえのない大切な人です。これからも透子さんをオレの全部で支えていきます。オレが透子さんをもっと幸せにして守っていくので安心してください」


樹がお母さんの言葉に、迷いなく力強くそう伝えてくれる。


結婚して一年経つのに、まだまだ幸せをくれる樹。

出会った時から変わらず、結婚した時から変わらず、伝えてくれるその想い。

あの時とまた違う幸せ感でいっぱいになる。

樹の言葉一つ一つが、私を幸せにしてくれる。

どれだけ時を重ねても、きっとその想いも重なっていく。



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