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「父さんも今日はこの別荘貸してくれてありがとう」
ずっと側で私たちの話を聞いて見守ってくれていたお義父さんに樹が声をかける。
「こんなに素敵な場所でこんなに素敵な結婚式させてもらって幸せです。ホントにありがとうございます」
そして私も樹と同じように今の気持ちを伝える。
どこでするよりも、この場所で出来たことがきっと幸せだった。
「ようやくこの別荘で理想の時間の過ごし方が出来たような気がするよ。母さんとも別れてから、当然母さんはこの別荘に来ることもなかったし、樹ももちろん来るようなこともなかった。だけどいくら自分の好きな空間を作りあげても、私一人だとあまりにもこの別荘は広すぎてね。この別荘がこんなにもたくさんの人で賑わっているのは初めてだ。お前たちのおかげで、この別荘も生まれ変わったような気がするよ。こちらこそ、ここをこんなに素敵な場所にしてくれたことに礼を言わにゃならんな。ありがとう」
きっとお義父さんも今だからこそ一緒に実感出来る幸せなんだろうな。
もしもまだ樹との仲が今でもこじれていたとしたら、きっとこんな時間も過ごせなかった。
樹はたくさん愛されているのに、その愛に気付くまで随分遠回りしてしまって。
だけど、今その愛はこんなにも自然に優しく存在している。
その愛を私も一緒にここで樹と感じられていることにまた幸せになる。
「母さんも今日はありがとう。母さんはずっとオレを信じてくれていつも力を貸してくれた。何より母さんがいてくれたことで、今のオレはここにいられる」
「私の方こそ、あなたの存在がずっと私を支えてくれた。あなたがいてくれたから、私は今までずっと頑張ってこれたのよ。ありがとう。あなたがちゃんと自分の力で幸せを手に出来たこと、そして大切な人と人生を歩めることが何よりも嬉しいわ」
「今考えてみたら、透子との出会いも今こうやって同じ道を歩めているのも、もうどこからそれが始まっていたのかもわからないくらいだけど。でも、この出会いは母さんや親父がいるからこそ、巡り合えた奇跡なんだって心の底から二人には感謝してる」
樹と私は、確かに何度かどこかで出会えて導かれた運命だった。
だけど、もしかしたら、少しタイミングが間違えば、どの瞬間も全部出会わない運命だったかもしれない。
お互い出会った時は、二人共まだそれが運命の出会いだと、運命の相手だと気付かなくて。
だけど、やっぱり繋がれた運命は、少しずつ出会った瞬間ごとに、その先の未来へと繋がるきっかけを積み重ねていた。
そう。きっとどれも最初はただ単なるきっかけでしかなくて。
だけど、その出会いはどれも意味あるモノに変化していった。
それは何気ない出会い。
お互い惹かれ合わなければ成り立たないただの出会い。
だけどきっと、私も樹も、他の人では成り立たない、確かな想いを感じた出会い。
運命だから、きっと気付かなくても、どこかできっと繋がり合う。
きっと知らず知らずのうちに、自分たちで繋いでいった運命の出会い。
「透子さん。これからもただ樹を信じてついていってやってね。これからはきっと樹はあなたとの幸せを何よりも力にして支えにしていくだろうから」
「はい。私も幸せだと感じられるのも今の自分を好きでいられるのも、全部樹さんがいなきゃダメなので。樹さんは私のすべてです」
私が樹がいなきゃもう今の自分でいられないから。
樹が私という存在を輝かせてくれて、幸せの意味を教えてくれたから。
「それを聞いて安心したわ」
「ホントに素敵な贈り物もして頂いてありがとうございます。なんかまだ今でも憧れの宝石を身にまとっている自分が幸せすぎて夢みたいです」
お義母さんに贈ってもらったネックレスとティアラは、私が今まで見たどんな宝石よりも綺麗で輝いていて。
夢のような幸せを直接伝える。
「今回は透子さんを思い浮かべて作った特別なモノだから、喜んで頂けて嬉しいわ。だけど案外そういう特定な誰かの為に作ることがなくなったことに今回改めて気付いたの。この世にたった一つしかない特別なモノを作れるのって私も幸せなんだと思えて楽しかったわ」
この世にたった一つの贈り物。
それはこの宝石でもあり、たった一人の樹というかけがえのない人。
こんなにも幸せになれるのは、この世でたった一人の樹だけ。
「でも多分オレが今は一番幸せかも」
「えっ?」
「だって自分にとって一番大切で愛しい人が、母さんの力で今まで以上に幸せになって綺麗になってるんだよ?こんな最高に幸せなことないでしょ」
樹はそう言って幸せそうに笑ってくれる。
きっと樹はずっとそう伝え続けてくれるんだろうね。
私以上に私の幸せを喜んでくれて、私以上に私を信じてくれる。
私以上に私を大切に想ってくれる。
この手作りの結婚式もそんな樹の想いがどこまでも伝わって来るよ。
この結婚式すべてに樹の大きすぎる愛が散りばめられている。
きっと私の気付かないような小さい愛も、実感出来る大きな愛も。
だけど、きっとそれは、どれも樹にとって大きさなんてなくて。
ただ私を想って伝えてくれる愛。
幸せすぎるたくさんの愛。