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幼なじみとの両片思い

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幼なじみとの両片思い

13 - いい旦那さん【7】

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2025年08月23日

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いい旦那さん


「お腹すいた……」布団の中で小さく呟いたまなみに、そらとは眉をひそめた。

「……お前、さっきまで真っ赤な顔で隠れとったくせに、急に飯の話か」

「だってお腹すいたんやもん」

「……ほんまマイペースやな」

そう言いながらも、そらとはため息をつきつつ立ち上がる。

まなみは布団にくるまったまま、上目遣いでそらとを見上げた。

「そらと、朝ごはん作ってくれるん?」

「は?なんでおれが」

「えー、お泊まりした時はいつもそらとが作ってくれよったやん」

「……昨夜のあとに“いつも”とか言うな」

「なんでぇ?」

「……いろいろ思い出すっちゃろが」

顔を逸らして耳まで赤くなったそらとを見て、

まなみは小さく笑いながら布団から抜け出した。

キッチンに並んで立つふたり。

エプロン姿のそらとは、手際よく卵を割りながらまなみに言った。

「なに笑っとん」

「そらとって、なんか旦那さんみたい」

「はぁ!?誰が旦那や」

「だって、エプロン似合っとるもん」

「……煽っとるんか」

「煽ってない、ほんまやもん」

唇を尖らせて言うと、そらとはちらりとまなみを見て、

ため息混じりに目元を緩めた。

「……ったく。お前、ほんまそういうとこあざといっちゃな」

「無自覚やもん」

「無自覚が一番たち悪いっちゃって昨日も言うたやろ」

「ふふっ、また言いよる」

「もう一回言わせたいんやろ?」

「……ちょっとだけ」

そう言ってにこっと笑ったまなみを見て、

そらとは卵をかき混ぜる手を止めて深く息を吐いた。

「……おれ、ほんま限界近い」

「え、朝から?」

「おう、朝から」

「……んふ、我慢して?」

「知らん、飯終わったら考える」

テーブルに並んだ朝ごはんは、ふわふわの卵焼きと味噌汁。

一口食べたまなみは、ほっぺをふくらませながら嬉しそうに言った。

「おいしい~!そらとの卵焼きすき~」

「当たり前や。おれが作ったんやけん」

「そらと、将来いい旦那さんになるよ」

「また言いよるし……」

「ほんまやもん」

「……おれ以外の男にそれ言うなよ」

「言わんよ?」

「ほんまか?」

「そらとが旦那さんやもん」

無自覚にそんなことを言うまなみに、

そらとは一瞬で箸を止め、じっと見つめた。

「……まなみ」

「なに?」

「……その言葉、あとで後悔すんなよ」

「え、なんで?」

「……部屋戻ったら教えたる」

そう言って笑うそらとの声は、

やけに低くて甘かった。

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