テラーノベル
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大学の教室。まなみが遅れて入ってくると、友達がすぐ声をかけてきた。
「ねぇまなみ、今日めっちゃ寝不足じゃない?」
「え、そんなことないよ?」
「目の下ちょっと赤いし、髪も寝癖残ってるよ~」
「あ、ほんまや。くせ治ってない……」
鏡で髪を直そうとしていると、別の子がぽろっと言った。
「まなみ、最近よくそらとと一緒におるよね?」
「え?まぁ、幼なじみやけん」
「いやいや、それにしても多くない?昨日もそらとの車で帰ってたし」
「え……見とったん?」
「見た見た!でさぁ……もしかして付き合っとる?」
突然の質問に、まなみは目を瞬かせて固まる。
「……つ、つきあっとらんよ?」
「えー、ほんとにー?なんか、ほぼ同棲カップルに見えるんだけど」
「そ、そんなことないよぉ!」
必死に否定していると、教室の後ろから低い声が飛んできた。
「……お前ら、なに勝手なこと言いよるん」
振り向くと、教室のドアにもたれかかるそらとがいた。
腕を組んだまま、鋭い視線で女子たちを睨んでいる。
「ひっ……そ、そらと!?」
「おう」
「な、なんでここおるん……!」
「おれの教室、隣やけん」
「で、でも……」
「お前らが変なこと言いよるの聞こえたけん、来た」
そらとはまなみの机までゆっくり歩いてきて、
机に片手をついて覗き込んだ。
「お前、なんでそんな必死に否定しよるん?」
「え、そらとまで……っ」
「“同棲しとらん”って必死に言うけん、逆に怪しいやんか」
「そ、そんなこと言わんでよ!」
まなみがぷくっと頬を膨らませると、
そらとは一瞬だけ口元を緩めたけど、すぐに真顔に戻る。
「……まぁ、否定せんでもよか」
「え、なに?」
「“同棲疑惑”とか、放っときゃいい」
「でも……」
「ほっとけ。おれが全部“ほんま”にしたるけん」
耳元で低く囁かれて、まなみは一気に顔が真っ赤になった。
昼休み。
ふたりで中庭のベンチに座っていると、まなみは小声でそらとを睨んだ。
「さっきの……『ほんまにしたる』ってなに意味なん」
「……言わんとわからん?」
「わ、わからんもん!」
「……なら、今夜来るか?」
「な、なんでそうなるん!」
「泊まればええやろ。そしたら疑惑じゃなくて、ほんまやけん」
「そ、そらと、ほんまアホや……」
「アホでよか。お前が泣いたら迎えに行くし、寝坊したら起こすし、腹減ったら飯作る」
「……それ、完全に旦那さんやん」
「……お前が言うんやろ、それ」
まなみがぽつりと呟くと、そらとは耳まで赤くなりながら帽子を目深に被った。
「……もう黙れ」
「んふふ、照れた?」
「照れとらんっちゃ」
「照れとる~」
「……あとで覚えとけ」
そらとの低い声に、まなみの鼓動が跳ねた。
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