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固定夢主が出て来る夢小説です。夢小説というよりも、ただの二次創作の小説と思ってもらった方が良いです。それでも良い方はこの先へお進みください。
〜設定〜
名前:黒丸エリカ
クラス:烏野高校1年3組
身長:150cm
誕生日:3月29日
好物:ミネストローネ
ポジション:なし
最近の悩み:勉強が難しい
烏野高校男子バレーボール部に所属する影山飛雄が毎日ランニングで通る道に面する公園に、毎日のように同じ少女がいる。いつからいるかは分からない。そもそも誰かも分からない。名前も、学校も、歳も、その少女に関する情報は何も知らない。ただいつでもそこにいるのだ。どんな日もただそこにいるのだ。今日も同じく、そこにいる。ただ、そこにいるだけなのだ。
「お前、名前は?」
何故か、声をかけた。
「いつもそこで何してるんだ。楽しいか?」
影山は、ついに声をかけたのだ。闇をそのまま映したような長い黒髪に、月のような白い肌の少女に声をかけた。少女は一瞬とても驚いたような顔をして答えた。
「えっ・・・名前・・・名前は・・・黒丸エリカ・・・」
黒丸エリカ。影山はどこかでその名を聞いた。たしかに聞いたはずなのだ。でも、思い出せない。
「ここでは別に何もしてない。楽しくは・・・ないよ」
エリカは続けて答える。バレーボール以外に関心を示さない影山は、何故かその少女に興味を持った。何故かは自分でも分からない。
「君は、影山飛雄くんだよね。知ってるよ。」
「なんで知ってんだ?!知り合いなのか?!」
影山の驚嘆の声は公園に響く。暗い夜の公園に響く。はて、今までに知り合った人間なのかと影山飛雄は思い出そうとするが思い出せない。それもそのはずだ。
なぜなら──
「知り合ったっていうか・・・私が一方的に知ってるだけだよ。だって、烏野の1年3組でしょ?同じクラスだから、知ってるよ」
そう、エリカは答える。同じクラスなのだと。しかし影山にはその記憶は無い。見かけた記憶が無い。だが、名前を聞いたことがあるような気がするのはそのせいかと合点がいく。
「お前・・・学校来てるか?見たことねえけど・・・」
おそらく初めての会話をする人に聞くことではないが、そんなことに気付かないのが影山飛雄なのだ。そして、そう思っても言わないのが黒丸エリカなのだ。
「学校は、一応行ってるよ。君が見たことないのは、私の席が君より後ろだからじゃないかな。あと、基本的に君は寝てるでしょ。」
なんてことだ。毎日来ているのにクラスメイトを見たことが無いなんて。なんという男だ。しかし影山には、それよりも気になることがある。
「その、“君”って呼ぶのやめろ。同じ部活のムカつく奴みてえで嫌だ。」
「えっ、あっ、ご、ごめんなさい。」
一瞬、エリカの肩が震えたと思ったら酷く怯えた表情を見せて謝罪をした。もともと目付きは悪いが、特に敵意も悪意も持たずにただ発した言葉に反応した。言い方の問題だったのだろうか、エリカは酷く怯えた。その時、影山はあることに気づいた。
「お前・・・長袖暑くねえの?お前をここで見る時、夏でも冬でも長袖だったよな。温度調節しねえとぶっ倒れるぞ。」
影山の少しの罪悪感と精一杯の善意である。
「だ、大丈夫!私は平気・・・だよ。」
「・・・そうか。分かった。」
触れてはいけなかったのかもしれない。目の前で怯える小柄なエリカに何も出来ず、ただそう言うしかなかった。今度はエリカが口を開く。
「あんまり長居してちゃいけないんじゃないの。もう遅いよ。両親が心配するんじゃない?」
「そうだな、もう行く。お前も帰るだろ」
自分が帰るのだから、相手も帰るだろうと思ったのだ。普通、そう思うだろう。しかしエリカの返答は違った。
「私は、まだ帰らないよ。まだ、帰れないんだよ・・・」
「なんでだ。自分の家なんだろ?」
エリカの返答を受けて大人しく帰ればいいものを、影山は突っかかってしまった。自分の家に帰れないという理由が分からないからだ。
「迷子なのか?」
そんなわけはない。そんなわけはないがそうとしか考えられないのだ。自分の家に帰れない理由なんて迷子以外に思い付かないから。
「迷子なわけないでしょ。毎日ここに来て、毎日家に帰ってるんだから。」
「じゃあ帰れるだろ。」
引き下がらない。影山は頑固な男なのだ。いや、頑固ではないのかもしれない。納得がいかないだけなのだ。
「・・・家の鍵無くしちゃったから、親が帰ってくる時間まで帰れないの。」
エリカは少し考えた後に答えた。
「そうなのか。じゃあ何時に帰るんだ。」
「分からない。でもそのうち帰るよ。」
その言葉を聞いて影山は安心した。
「なあ、明日、学校来るか?」
影山が聞く。エリカが答える。
「うん、多分。」
「分かった。明日話しかけて良いか。」
影山はこんなことを言う男ではないはずだ。野生の勘なのかそれともただの気まぐれか、エリカに問う。エリカは今度は驚いたような、嬉しいような、寂しいような顔をして答えた。含みのある言い方で答えた。
「いいよ。私が明日、学校行けばね。」
その目は影山を見ない。何も見ていない。哀しい目だ。
「また明日な。」
影山はエリカにそう言い、返事を聞かずに家への帰路を走り出した。
影山が去ってから、エリカは消えるような声で呟いた。
「明日、学校行けるかな。」
これが影山飛雄と黒丸エリカの初めての会話であった。