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刻印の生存者

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刻印の生存者

1 - 第1話 生存の誓約

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2025年08月11日

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──静かだ。 異様なほど、静かだった。


玉水線オクスの車内は、ついさっきまで人々のざわめきで満ちていたはずだ。

だが今は、重たい空気と誰かの浅い呼吸音しかない。


俺──|白川涼介は、額ににじむ汗を拭った。

何が起きているのか、頭の片隅で理解し始めていた。

それでも、心の底から湧き上がるざわめきは抑えられない。


【メインシナリオ#1:生存の誓約】

難易度:F

条件:生命を一つ以上殺すこと

制限時間:10分

報酬:|コイン300

失敗した場合:死亡



突然頭の奥に直接響くその声は、感情の欠片もなかった。

機械的で、容赦がない。


涼介「……生命を、殺せ?」


声に出してみた途端、胸の奥がずしりと重くなった。

殺す。

それは人間かもしれないし、虫かもしれない。

──いや、生命なら何でもいいのだろう。


俺は視線を落とした。

床を、甲虫がゆっくりと這っている。

小さな命。

それでも、このシナリオの条件を満たすには十分だ。


靴底が、甲殻に触れた。

わずかな抵抗。

ためらいは……ない。


ぱきり、と硬い音が響いた。


【生命を殺害しました】

【追加報酬:|コイン+100】




心は動かなかった。

これは感情ではなく──手順だ。





その時、低く笑う声が聞こえた。

前方の座席から、赤いパーカーを着た若い男が立ち上がる。

片手には光沢の鈍いナイフ。

口元には、不敵な笑み。


???「へぇ……効率がいい方法だな、お兄さん」

|赤城龍真

俺は、この男の“未来”を知っている。

そして、できるだけ関わらない方がいいことも。


「でもさ、虫なんかより──」

龍真は顎で後方の乗客を示す。

「──こっちの方が早いだろ?」


悲鳴が上がる。

龍真の眼は愉悦に濡れていた。


涼介「やめろ」


龍真「は? 正義感か?」


俺は視線を逸らさず言う。

「いいや……俺が気に入らないだけだ」


わずかに、龍真の口元が歪む。

そのまま、刃先を下げた。

「……つまらねぇな。まぁいい、今日は気分じゃねぇ」


彼が座席に戻ると、空気はさらに重く沈んだ。

──こいつは、放っておけば必ず誰かを殺す。

そうならない保証は、この世界にはない。


俺は深く息を吐いた。

(始まった。……そして、終わるまで止まらない)

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