甘ったれ

忙しいのは、ありがたいことだけど、休みは合わないし、岩本も、渡辺も、相手に無理してほしくない。だから、仕事が早く終わって、ちょっと時間のあるときに会う。それでも、渡辺は遠慮してしまう。大事な振り付けを考える邪魔はしたくない。

目黒ーもう、岩本くんも家にいるでしょ？

渡辺ーフォーメーション考えたりしてる。俺がいたら、邪魔になる。

目黒ーカッコいい振り付けだろうなぁ、楽しみ〜。

渡辺ーん・・。

目黒ー言えば？

渡辺ーん〜ん。

目黒ー頭痛するし、熱あるし。

渡辺ー薬飲んだ。

目黒ー今、何度？測って？

39.4度。

目黒ー病院行こうか？

渡辺ーんっ・・ひかる・・。

目黒ー連絡する。あっ、かかってきた。

渡辺ーひかる？

目黒ーはい、うん、それが、39.4度あるんだ。そう？待ってる。

渡辺ーひかる・・来る？

目黒ーうん、迎えに来てくれる。病院行っておいで。

渡辺ーひかる・・ひかる・・。

目黒ーもう少ししたら来るから、毛布から出ないよ？

岩本が来た。渡辺はポロポロ泣き出した。

岩本ー泣いたら熱上がる。目黒、毛布借りていいか？このまま連れて行く。

目黒ーうん、明日も撮影でしょ、早く行って来て？

渡辺ーありがと。ひかる・・。

岩本ー全く、この甘ったれ。

毛布の中から両手を伸ばし岩本を求める。毛布ごと抱き上げて、顔を隠して車に乗って病院へ。

看護ー岩本さん。

岩本ー小さな声で、どうしました？

看護ー深澤さん？ですかしら、来られてます。急いでいつもの部屋に。

岩本ーはい。

急ぎ足でいつもの部屋に向かう。

点滴を持って看護師さんが、入ってきた。

岩本ー深澤がどうして？

看護ー熱っていっても、微熱ですけど。

岩本ー参ったなぁ。

看護ーこれ、院内携帯の私の番号です。来られる前に電話してください。対処しますから。

岩本ーありがとうございます！

渡辺ーひかる・・。

岩本ー大丈夫だ。

看護ー渡辺さん、点滴しますね〜。

2人になると、渡辺が小さく岩本を呼び、2人は抱き合う。

渡辺ー深澤、怖い。

岩本ー大丈夫。看護師さん味方だから。

渡辺ー振り付け進んでる？

岩本ーフォーメーションにちょっと頭使ってる。

渡辺ーひかる、車バレないか？

岩本ー奥に停めてきた。パッと見て分からない場所だ。

点滴が終わる頃、看護師さんが、深澤さんはもう帰りましたと言う。

岩本は、今まで、一般の通用口から、入っていたが、次から、政治家や芸能人が使うところがあるので、そっちを教えるから来てくださいとのこと。

帰り道。車の中で話す。

渡辺ーありがたいな。

岩本ー頭上がらないぞ。

渡辺ー邪魔して、ごめん。

岩本ー何の？

渡辺ーフォーメーション考えてたんだろ？

岩本ー翔太が大事。

渡辺ーひかる・・。

目黒に毛布を返し、岩本の家に帰って来た。

渡辺ーひかる・・深澤に言うか？

岩本ー何で？

渡辺ー何か、嗅ぎ回られてるの、いい気しない。

岩本ー看護師さんが協力してくれる、大丈夫だ。

渡辺ーきっと、お前が好きなんだよ。

岩本ー・・。

渡辺ー前に俺が好きって言ってたけど、あれ、嘘だ。ひかるの話しかしないんた。

岩本ー俺？

渡辺ー気になって仕方ないんだよ。

岩本ー昔の自分みたいだ。

渡辺ーひかる・・。

岩本ー翔太が気になって仕方ない頃の自分見てるみたいだ。

渡辺ー分かってたのか？

岩本ーなんとなく。

渡辺ーどうする？

岩本ーどうもしない、俺には翔太だけでいいから。

熱いキス。

毛布に包まり2人は抱き合い眠りにつく。渡辺の目には涙が滲んでいた。

完