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幼馴染の罪滅ぼしと恋心

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幼馴染の罪滅ぼしと恋心

14 - イケメン幼馴染と過去の傷 14

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2024年08月01日

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鏡の前に立ち、ついでにメイク直しもする。


中は薄暗いから直したって須藤さんは気付かないだろうけどね。


と言うより須藤さん、私のことなんて気にも留めていないんだろうな。


沙希と話す時は楽しそうなのに、私と話す時はつまらなそうだし。


私は沙希みたいに話題が豊富じゃないし、気が利かないけど、もう少し話を振ってくれてもいいのにな。


ああ、でもこんな風に考えるのは駄目だよね。


須藤さんが気遣い溢れる男の人なんてイメージは私が勝手に作ったもので、本当は違うんだし。


話題を振ってくれるのを待ってるんじゃなくて、私から頑張って行かなくては。


飲み会が始まる前に比べて、モチベーションは大分下がって来てしまっているけど、それでもせっかく沙希がセッティングしてくれた機会なんだし頑張らなくちゃ。


気持ちも新たに席に戻る。


私がいない間に大分盛り上がっていた様で、須藤さんは上機嫌で何か語っている。


何の話だろう? 私も積極的に参加しなくちゃ。


私は聞き耳を立てながら須藤さん達男性の背後から近付く。けれど。


「青山さんってつまらない女だよな」


はっきりと聞こえて来たその言葉にショックを受けてその場に立ち尽くした。


聞き間違い? 勘違い? でも須藤さんの声だった。


「見た目は結構好みだから今日の飲み会OKしたけど、話はつまらないし、変なところまじめだし、あれは無いよな」


……聞き間違いじゃない。


須藤さん、私のことをつまらない女だって思ってるんだ。


そっか……だから、私の話はスルーしてたんだ。


ショックに続いて、苦しさが身体を回る。


そんな私に追い討ちをかける様に更に須藤さんは言葉を続ける。


「青山さんってさ、男いないだろ? 反応がいちいち中学生みたいだし。初めの一言が“電話取ってくれてありがとうって”……それどんなセンスだよ。俺笑いそうになるの耐えるの大変だったんだけど」


流暢に私を貶す須藤さん。もう聞きたくないけど、あまりにショックを受けると身体って動かなくなるみたい。


ただ突っ立って居る事しか出来ない。


「なんかさ彼女話題を広げたそうにしててさ、気付いたけどスルーしておいた。だってどうせつまらない話ろうし」


須藤さんが楽しそうに言うと、他の男性も合わせるように笑う。


「ああいうのを恋愛処女って言うんじゃねえ?」


私……須藤さん以外からも馬鹿にされてるんだ。


あまりに居たたまれなくなり、もう消えてしまいたいって思ったところで美野里が怒りに満ちた声を出す。


「さっきからあまりに失礼じゃないですか? 今日は楽しく飲む為に集まったんじゃないですか?」


普段大きな声を出す事のない美野里なのに、今は怒りを隠していない。


一瞬しんと場が静まったけど、直ぐに男性達のふざけた笑い声が響いた。


「全然楽しい飲み会じゃないし。今度、合コンやる時は青山さん誘わない方がいいよ。居るとしらけちゃうから」


トドメとばかり言われた時、私の存在に気付いた様子の美野里が、「花乃」って言いながら慌てた様子で立ち上がった。


でも私はもうショックで倒れてしまいそう。


頭がグラグラして立っていられないかも……そんな時、肩を力強く支えられた。


「……え?」


だ、誰? 混乱しながら振り向くと、なぜかここに居るはずのない大樹が居た。


フラフラする私を自分の方へ引き寄せながら、大樹は須藤さんに向かって言い放つ。


「ねえ、俺の彼女の文句まだ続けるわけ?」


大樹は口元は笑っていて軽い調子の声音だけど、目は笑ってなくて須藤さんを見たことも無いような冷たさで見据えている。


こ、恐い……温度が一気に下がったみたい。


「……は?」


須藤さん達は突然の大樹の登場に驚いた様子だったけれど、直ぐに顔をしかめて言った。


「お前、誰だよ。他人が軽々しく入り込んでくるな」


須藤さんもかなり恐い。

大樹と須藤さんの間には一発触発の張り詰めた空気が流れている。


「他人じゃないし。だからこれ以上花乃を悪く言ったら俺が許さないけど?」


言外に、それでもまだ文句あるわけ?って滲ませながら大樹が言う。


その冷ややかな迫力に皆が息をのみ、須藤さんも顔を歪めながらそれでも黙って立ち上がる。

彼は財布から一万円を二枚取り出し、テーブルの上に乱暴に投げ捨てた。


「行くぞ」


須藤さんは同期の男性二人に言うと、彼等を従え、その場に居た皆を……主に私を睨んでから足早に店を出て行った。


須藤さんの背中を呆然と見送っていると、


「花乃!」


美野里と沙希が心配そうにやって来た。


「美野里……沙希」


まだぼんやりしたまま呟く私に、二人は気まずそうに言う。


「大丈夫? ごめんね、止めようとしたんだけど、あの男ペラペラとよくしゃべって止まらなくて」


「あ……うん。大丈夫。びっくりしたけど。ありがとうね、かばってくれて」


なんとか笑顔を作って言ったつもりだったんだけど、二人は顔を曇らせてしまった。


ああ、これはかなり心配かけちゃってるな。


でも……二人を安心させる言葉が思いつかない。


まだ頭がぼんやりしていて霞がかかっているみたい。


「花乃、今日はもう帰ろう? 送るから」


頭の上の方からも聞きなれた声がした。


あ……そうだ。なぜだか大樹もいたんだった。


私は大樹にもたれていた身体を起こして、後ろを振り向いた。


「大樹、どうしてここにいるの?」


そう聞くと大樹は困った顔をして、私の後ろの沙希に目を向けた。


「私が呼んだの。井口君を介して」


沙希が大樹の代わりに言う。


その言葉を受けて、よく回りを見回してみれば、いつから居たのか大樹の後ろには井口君ともう一人この前飲み会で会ったクオーターの様な西洋風の顔をした男性が居た。


「……どうして?」


沙希がなんで大樹達を呼んだのか分からない。


「あいつらが来て三十分で嫌な予感でいっぱいになったから。デリカシーの無い勘違い男が何かやらかす前に、解散にしようと思ったの。花乃を送って貰おうと井口君に頼んで神楽君を呼んだんだけど」


「正解だよ。本当に来て貰って良かった」


沙希の言葉を引き継ぐ様に、美野里が言う。


「そっか……」


二人とも大分前から気付いてたんだ。須藤さんは私を嫌ってるんだって。


だから私が傷付く前に、この不毛な飲み会を終らせようとしてくれたんだ。

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