とある 、冷えた日のこと 。
妻である 、喜八郎が子宝を産んだ
赤子の顔は 、いつまでも覚えている 。
目を開いたまま 、冷たく真っ青な姿で 。
その強ばった体は泣かなかった
そう 、赤子は突然死してしまった 。
出産に立ち会わせた各々の親戚たちは 、
皆 、揃って喜八郎を責めた 。
酒や生物を食べたんじゃないかとか
お腹を圧迫させるようなことをしただろうとか
まさか 、そんな状態でまた土弄りをしたのかとか
それぞれ言いたい放題で 、
自身の親戚はともかく 、喜八郎の親戚までには
怒ることもできなくて不甲斐なく
ただ 、黙っていることしか出来なかった 。
それでも 、喜八郎は..
まだ 、赤子は生きていると言わんとばかりに
愛おしそうに自身の腕に抱えてるモノを撫でて
「……八重ちゃんは可愛いねぇ」
そう 、笑を零した 。
その瞬間 、乾いた音が響き渡った
正気に戻ってみれば 、喜八郎のお母さんが
喜八郎本人の頬を強く叩いた
「この馬鹿娘ッ!!!!」
「この子を殺したくせに、
馬鹿なこと言ってんじゃないわよ!!!!!!」
お義母さんは 、そういうと
無理矢理喜八郎を起き上がらせては
俺達親戚一同に土下座をさせた 。
「すみませんでした……ごめっ..ごめんなさい」
「八左ヱ門さん、ほんとうにごめんなさい」
何度も何度も何度も 、
喜八郎はおでこに血が着くまで謝っていた 。
そんな 、そんな謝りをされてしまえば
親戚一同は許すというか距離を置くしかなくて
少し時間が経てば 、
もう家には俺と喜八郎だけになっていた
一段落がつき 、ふと喜八郎をみてやれば
また 、彼女の腕には赤子の亡骸があって
優しく丁寧にその子を手ぬぐいで拭いていた 。
『…….喜八郎 、』
そう名を呼べば 、喜八郎は
ゆっくりこちらを振り向き 、笑みを浮かべた
「みて 、八左ヱ門さん」
「八重ちゃんはこんなに元気なのに 、
皆さんは 、どうしてあんな事を言うのかしら」
そういい 、喜八郎はそのまま外へ出て
赤子と共に散歩へ出て行ってしまった
そんな喜八郎の発言に 、また何も言えなかった
自分だって 、わかっていた
もう 、その子は生きていないと 。
そう喜八郎に教えてやらないといけないって
それが夫である 、赤子の父親としての役目なのに
それでも 、俺には出来そうにないんだ 。
あんなに幸せそうに….
愛おしそうにその子を見つめるあいつを
俺はこれ以上ないくらい見たかったんだ 。
「ねぇ 、八左ヱ門さん」
『なんだ?喜八郎』
「この子の名前は 、」
「女なら八重がいいです」
『八重とはまた何故だ?』
「私と八左ヱ門さんの八をとって 、又」
「末広がりな 、沢山の幸運が重なるように 。」
「そんなふうに育って欲しいんです」
『なるほどなぁ』
『八重 、八重ちゃん!!』
『女の子なら八重だな!!!』
ふたりでたくさん悩んで 、悩んだ結果出た
喜八郎から出た八重という名前 。
唯一無二の俺達の子供の名前
何かと 、物事について無関心な喜八郎を
はじめは俺も母親になる身のものとして
大丈夫なのかと心配をしていたけど
日に日に 、育児について
躍起になる喜八郎を見ていれば
それは心配ないとわかっていた 。
むしろ自分だって八重のこの先を色々想像したり
男なら剣豪をやらせようかとか色々考えたりした
でも 、そんな未来は儚く消え去った
あれから 、月が変わりそうな程経っていた 。
そして 、いま俺はと言うと
喜八郎と喧嘩をして
絶賛家出中 、否….頭を冷やし中だ
事の発端は 、単なる事じゃなくて
いつまでも八重が八重がと未練がましい喜八郎に
とうとう我慢の限界が来てしまった朝の出来事
朝と言っても 、まだ日が昇って間もない頃
毎朝 、喜八郎はその時間に飛び起きては
居ない居ないと泣き叫んで
八重と思われるものを探す 。
八重だったモノは 、腐敗だ頃に
見据えて俺が庭に埋葬をした 。
八重ちゃん 、八重ちゃんと呼びながら
家中を探し回る喜八郎を寝ぼけながらも呼び止め
八重の変わりだった日本人形を渡す 。
それが 、俺の朝の一連の流れだった
でも 、何故か今日はそれが出来なくて
昨日の夜は夜間までに続く旧友たちとの
極秘任務でそれはそれは多くの神経を使い過ぎて
今日だけはぐっすり眠りたい 、そう思って
少々神経質になってしまっていた 。
「八左ヱ門さん 、八左ヱ門さんっ….」
「八重ちゃんは…?ねぇ、、!!」
『…….うるさい 、』
「….え 、?」
『…..うるさいんだよ 、喜八郎』
『八重八重って、、』
頭の回らないまま脳が追いつくよりもうんと前に
俺の口はとても達者で 、次々と吐き出していた
『いい加減分かってくれよ 。』
『八重はあの日に死んでしまっただろう』
「….え?」
あぁ 、言ってしまった 。とうとう言った 。
こんな形で伝えるつもりなんか 、無かったのに
クソ 、とくしゃくしゃ髪を掻き乱せば
俺は立ち上がって下駄を履いた 。
「….八左ヱ門さん 、どこいくの?」
弱々しい声が聞こえて 、俺は振り向かずに
背を向けた状態で声を発した 。
『少し 、頭を冷やしてくる 。』
『日が暮れる頃には帰るよ』
「……そうですか 。」
振り返る事ないまま 、俺は町の奥を進んで
あるひとつの平屋の中を覗いた
「おっ来たな 、今回のメイン野郎が」
「なにぼーっと突っ立ってんだよ?」
「そうそう 、暖が逃げる 。はやくおいでよ」
「ほら 、はやく入って入って!」
そう 、俺は旧友の家に来ていた 。
彼らとは極たまに一緒に長期任務をする事があり
今回みたく 、任務が終われば打ち上げ程度に
こうして酒をとったり 、
囲炉裏を囲んで笑いあったりした 。
そして 、前々から喜八郎のことで相談をしていて
今回はそれについての会議のようなものだった
食べては飲んで 、酔いが回ってきた頃
やっと本題に入るように 、三郎が言った
「….で?喜八郎はまだ引きずってる感じか?」
『いや 、つい今朝 。分からせてきた….?』
「おーー!!!!やっとか!!」
「….でも分からせてきたって、?」
「なんかいやな言い方だね」
『いや 、それが……..』
そう言って 、奴らに今朝の出来事を話したら
皆の動きが静止した 。
「……おいハチ 、それは本当なの?マジ?」
『…..お、おう..』
「…..マジかよ 、」
「喜八郎がそんな時に 、
また釘をさしたりしてさぁ……..」
「雷蔵の言う通りだ 。」
「今までのお前の相談を受けていた身からしても
そのお前の行動は 、喜八郎が可哀想だぞ」
『……わかってる 、わかってるけど』
「ハチ 、お前の言い分も分かるよ 。」
「でも 、喜八郎はもっと辛いんだよ 、
腹痛めて産んだ子は 、既に息絶えてて 。
自分が悲しいのに 、誰も慰めてくれなくて
挙句に土下座までしなくちゃいけなかったんだろ」
「お前のせいとは言わない 、
でもさ 、今でも喜八郎はひとりで
お前の帰りを待ってるんだろ 。」
「はやく 、慰めてあげなよ」
「さもないとお前 、今のままじゃあ
お前やあいつの親戚と同じだぞ 。」
旧友たちの言葉でやっと目が覚めた 。
馬鹿なのか俺は 、
馬鹿だな 、俺は
喜八郎のことを考えないで自分の立場とか
自分優先にしすぎて喜八郎を蔑ろにして
挙句に精神が崩壊気味だった喜八郎に
さらに追い打ちをかけるように言った今朝の言葉
いま 、喜八郎はなにをしているのか
寝てしまっているか 、土弄りは…しないはずで
最悪のことを、考えたがやめて 。
より 、走る速度をあげた
忍術学園に入って三年目の頃 、
くノ一教室に新しい子が居ると同級の三郎が
その子の変装をして見せてきた 。
その姿を見た瞬間 、
中身は三郎だってわかっていながらも
俺の心はその女の子に持っていかれてしまい
その俺を見透かして 、三郎や雷蔵に弄られ
そのままくノ一教室まで向かう羽目になった
三郎が 、同い年のくノ一を呼べば
そのくノ一は俺らを睨みつつ 、その正体を隠した
そんなくノ一達をよそにひょこっと出てきたのが
綾部喜八郎だった 。
新入生と言っても 、年は二年生でどこか
大人びていて色気が既に感じられていた 。
そこで 、その場で告白をしてしまった
三郎は爆笑をしていたし 、雷蔵は焦りに焦って
あとからやってきた兵助は呆れきっていた 。
肝心のくノ一達からは軽い男と見られてしまい
喜八郎とお近ずきにになる事
自体がとても難しかったのを覚えている
それでも 、俺は諦めずに彼女に会うために
くノ一教室を訪れて 、喜八郎に会いに行った
俺が何度も来るものだから 、くノ一達も
俺の気持ちをわかってくれて 。
そこの頃には後押しまでしてくれるほどだった
そうなれば 、あとは喜八郎を落とすだけだった
でも 、喜八郎はその美貌から 、
過去に男性と一悶着あって 、
そういうのに後退りがあったと言う 。
そう聞いた時に俺は決心した 。
俺が 、守らないといけないと
気づけばそのようなことを告げていて
君はぽかんとしていたの覚えている 。
引かれた 。なんて落ち込んでいたら彼女は俺に
ひとつ口付けを落として 、こう告げた 。
「私を一生お守りしてくださいますか?」
そんな言葉に 、俺は勿論と告げて
再度口付けを交わした
その頃から俺が守るべきものは
決まっていたはずだろう
それなのに俺はなんて______
また自虐的になろうとした時 我が家へついた 。
戸の近くまで行けばとてつもない冷や汗をかいた
俺は 、家を出たとき戸締りをし忘れたか
たしかに朝俺は 、ついつい怒りに任せて
ドカンと勢いよく戸を締めたのだ 。
じゃあなぜ 、
いまこうも戸が開きっぱなしなんだ_____
コメント
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いやあああああああ続き見たいいいいいいいい