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あらすじを読んでから読むことを推奨します。
あの日からずっと、ずっと忘れられない日の夢を見る。
大切な人との記憶は、わたあめのような甘さで心地よくて、でもまるでそれが口の中で牙を向いて噛み付いてきたような痛みに襲われるように感じる。
実際に体が痛む訳では無い。
感覚としては、大切な人に裏切られたような、好きな人に振られたような、雨の日に古傷が痛むような形容しようのない鈍く気持ち悪い痛みが自身の中を渦巻くようにべっとりと張り付いている。
あの日の事は片隅も忘れることなく、鮮明に覚えている。
今でも目を瞑ると瞼の裏に映るあの幼く未だ世界が狭かった頃を覆い尽くした ””赤”“ を忘れることなんてできない。
豪雨の中、足元の水溜まりに滲んでいく ””赤”“ 。
比例するように指先から全身へとかけて痺れるように冷えていく。
胸焼けした時のような気持ち悪さを感じて、ふと指先の方を見ると小さく震え始めていて力も入れにくい。
段々とぼやけてくる意識に身を託して、ろくな受け身も取らずに ””赤”“ の中へと倒れ込む。
雨で薄まった、けれどハッキリと感じる鉄のような味が口の中へと広がる。
無慈悲にも雨は自身の体へと打ち付け、豪雨は止みそうにない。
夢だとわかっているから、この後の展開は何度見ても思い出しても思い出したくない。
目覚める様に、と願いながら瞼を伏せこの様な現状に陥った原因から目を逸らす。
どれくらい時間が経っても目覚められる気配がなく、思っていた衝撃が中々こなくて不意に重い瞼を上げる。
無意識に、引き攣ったような声が出てしまったのはしょうがないだろう。
そこには、長く先端が鋭く尖った鉄パイプを自身の足へと振り下ろそうとしている人影が見えて⋯