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「……それは面白いかもしれん。一夜限りの特別出演、という形なら話題性十分だしな」
「え、ええええ!? 凛さんまで乗っちゃうんですか!? ま、マジで!?」
素っ頓狂な声を上げる銀次の背後で、「夢のコラボ決定〜!」とメンバー全員が大拍手。
東海はニヤニヤしながら「ほら、断れない空気ってやつだな」と囁き、美月は「衣装合わせ、早く見たい!」と目を輝かせる。
「いやいやいや! 冗談ですよね? それにそんなの凛さんがOKだすわけ」
「いいんじゃないのか?」
「ほらぁ、やっぱり……って! えっ?」
――背後から声がして、一斉に振り返る。そこにはいつの間にかその場に来ていた凛が、腕を組んでこちらをじっと見ていた。
「一話限りのコラボなんて面白いじゃないか。どうせ、銀次君の動画やウチの公式の配信にもコラボすることは出すのだろう? だったら、番組自体に出るのは自然な流れじゃないのか?」
「 凛さんまで乗っちゃうんですか!? ま、マジで!?」
「ちょうど衣装も多めに準備してあるし。ちょっとやってみるのもいいんじゃないか?」
「ちょっと一杯。みたいなノリで言わんでくださいよ」
情けない声をあげる銀次の横で、突然降って沸いたゲスト出演に、その場にいたキャスト陣の期待も高まって行く。
東海はニヤニヤしながら「これは、断れない空気ってやつだな」と囁き、美月は「衣装合わせ、早く見たい!」と目を輝かせる。
銀次は「いやいやいや!」と両手を振りながら後ずさるが、耳まで真っ赤に染まったその顔は、どう見ても嫌がっているというより照れ隠しにしか見えない。
蓮はその様子を見ながら呆れたように小さく溜息を吐き、凛に視線を投げた。
「兄さん……最初からこうなること、狙ってたでしょ」
「ふっ、さぁな」
不敵に笑った凛の一言で、銀次の運命は完全に決まってしまった。
「待て! 怪人キライダナー! お前らの悪事、見過ごすわけにはいかない!」
「五月蠅い五月蠅いうるさーい! いつもいつも邪魔ばかりして! くらえ、シャーベットめかぶ!」
「うわっ!?」
「やだっ、なにこれ気持ち悪いっ!」
「大丈夫ですか!? 桃子」
シャーベット状になっためかぶを頭からかぶり、美月扮する桃子が小さく悲鳴を上げる。
駈け寄った弓弦こと青葉が立ち向かおうとするも、キライダナーのねばねば 攻撃を前に苦戦している。
「くそっ、こういう時に限って……! 赤也はまだですかっ!?」
「どうしよう、これ、ねばねばしてて変身出来ないっ!」
「ハハッ! 怪人めかぶよ。その調子でやつをねばねば氷漬けにしてやれ!」
「ふふふ。キライダナー様の仰せのままに」
美月がもがき苦しむ姿に焦る弓弦を庇うように前に出たナギこと赤也が剣を構えて敵を見据える。
「くそっ、お前だけは、許さないっ! 桃子達を傷つけた報いを受けろ! ……って、なにこれ、ヌメヌメしてて剣が抜けないんだけど!」
「フフフフ。お前たちにこの攻撃が防げるかな? 食らえ! めかぶボンバー!」
「っ!?」
緑色の破片が弾丸の如く地面を穿ちながら迫ってくる。
「わっ!? 嘘っ! なんで変身できないんだよっ?」
焦る3人。避けきれないと判断したナギが思わず腕を翳した次の瞬間。
「まったく……3人いてこのざまかよ……情けない奴らだな」
突如、その前に割り込んだ黒い影。
怪人のねばねば攻撃が飛ぶその瞬間――
「――どけ!」
黒い影が傘を広げ、粘液の弾丸を弾き飛ばす。
現れたのは、漆黒のスーツに黒傘を構えた戦士・獅子ブラック。
「っ……伝説の獅子ブラック……!? 本当にいたのか!」
「都市伝説じゃなかったの……!」
呆然とする3人に、ブラックは無造作に傘を片手で構えながらタオルを投げつける。
「ボサッとするな。……それでベルトを拭け。早く変身しろ」
「え、あ……はい!」
慌てて言われた通りにタオルで変身ベルトを拭うと、不思議とねばねばはすぐ落ち、3人は無事変身できた。
「はい、カット―」
助監督の掛け声で、現場の空気が一気に緩む。
頭からタオルを被り、戻って来るキャスト陣を次に出番を控えている蓮達アクターが迎え入れる。
「お疲れ。早くシャワー浴びておいでよ。なんだか凄く卑猥な感じに見えるから」
「ひ、卑猥って! お兄さん酷いよ」
「……全く、蓮さんの頭の中って本当に中学生で止まってるんじゃないですか?」
「酷い言われようだな。僕は事実を述べたまでなのに」
「またやってる。 蓮さんが残念なイケメンなのは今に始まったことじゃないでしょ? ほら、ゆづもナギ君も着替えに行きましょ。 どうせこの後みんなもドロドロのベッタベタになっちゃうんだから」
やや呆れたようにそう言いながら、美月はさっさと着替えるためにシャワールームへと消えていく。
「ほぇぇ。こんな風になってたんっすねぇ。すごいなぁ。……それにしても、相変わらず、ネーミングセンスなさ過ぎ。ププッ、なんっすか。シャーベットめかぶって。やばくないっすか」
みんなのやり取りを、モニター越しに見ていた銀次が、ポテチの袋に手を突っ込みながらクスクス笑う。
「ネーミングについてはツッコミ入れないでやってよ」
「子供番組だしな。面白おかしいくらいが丁度いいんだってさ」
自分たちだってくそダサいと思っていた。何度も吹き出しそうになったことを爆笑する銀次の反応は間違っていない。
「ふふ、蓮君なんて何回かツボってアクション忘れてNG出してたよね。最初」
「そうなんっすか!?」
「ち、ちょっ!雪之丞っ! それは最初のころだけだろ? 今はもう慣れたし!」
慌てて抗議する蓮の耳まで赤いのを見逃さず、銀次がすかさず突っ込む。
「いやぁ〜“残念なイケメン”ってこういうことっすね! 本番中に吹き出すヒーローなんて聞いたことないっすよ!」
「お前な……余計な事言うな」
むっとした蓮の横で、東海が肩を揺らしてククッと笑いを堪えている。