テラーノベル
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「……初めて名前、呼んでくれましたね。父じゃなかったんだとしても、嬉しいです」
「そんな、……名前くらい何度だって」
「遠田社長、今までありがとうございました。三日後、社に戻ったら、退職願を出します」
ぺこりと頭を下げて、社長は絶句して黙ってしまった。
深山さんが私の肩をポンと叩いて「……受付業務に戻ってくれるかな」と柔らかい声で言った。
この場からぬけだせるように配慮してくれたんだなって思ったらありがたくて、頭を下げて部屋を出る。
出たところで、高井戸さんと桶川さんと亀田さんがそっぽを向いてしらばっくれているのが見えて、泣きたかったはずなのに笑ってしまった。
「……覗きですか?」
私の問いかけに、三人三様に反応する。
「あっ、バレてる。ごめんなさいー」
「だって気になるじゃんか、ねぇ桶川さん」
「どうせバレるんだからもっと堂々と覗いてりゃ良かったじゃん?」
「皆さん、……仕事中でしょ。ホント……緩いなぁ、この会社」
笑ったつもりだったけど、ちょっと涙声になってしまった。
「あ、あー、咲坂さんは私の指導担当ですよー。こっちで私にいろいろ教えてくださいー!」
うつむく私を、小柄な高井戸さんが引っ張っていく。
みんなに泣いているのを気付かれないように、気を使ってくれたのかなと思えば嬉しかった。
その後、なぜか亀田さんがコーヒーを持ってきてくれて、桶川さんは三十分後に有名パティシエのいるケーキ屋さんからケーキを買ってきてくれた。
だからみんな、仕事はどうしたのって思いながらも、社長が帰ったのも気づかないくらい構ってもらえて、なんだかありがたかった。
だってお見送りなんてしたら、もっと泣いちゃいそうだもの。
コメント
1件
うわ〜第44話、読み終えたよ…!😭💕 社長に「初めて名前呼んでくれた」ってシーン、めっちゃグッときた…!深山さんの退職宣言も咲坂さんを気遣ってくれたんだなって伝わってきたし、同僚たちの覗き見からのコーヒー&ケーキケアがもうね…泣きそうになりながら笑っちゃう気持ちわかるよ。切なさと温かさが混ざって胸がぎゅーってなった…!次が楽しみすぎる⋆♡
鷹槻れん

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鷹槻れん

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