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24
ユキ
30
兄 奏斗の体になってから、すぐに夏休みに入った。
「……んー、わかんね、」
僕は夏休みの課題に苦戦していた。
(そもそも僕は小6、その上勉強をろくにしなかったのに。中三の勉強なんかわかんないよ。)
てか、受験生なのに夏休みの課題なんてあるのかよ…
「ん?受験?」
そうか、中三だ、受験だ。
「兄さんのことだから、」
ガタガタ…ドササッ
ノートを全てひっくり返して
「やっぱり、勉強してるよ…」
量はガリ勉と言うような量こそないけれど、
質は良さそうだ。
なんだか負い目を感じた。
ごめんとさえ思った。
きっとあの性格だから。
行きたい高校があっただろう。
仲のいい友達もいただろう。
着てみたい制服。
なりたい職業。
それを全て奪ったんだ。
涙がぽろぽろ溢れ出てきた。
(毎日のように見舞いに来る兄だったのに。)
嫌な顔一度せず、僕があまりの辛さに暗くなった時も、いつも明るい笑顔で来てくれた。
病気で死にかけた時だって、僕の顔を覗き込んで生きているのを毎日確認しに来た。
今思えば、いやどう考えたっていい兄だ。
「ごめん、ごめんなさい、ごめんなさい。」
本当は仲良くしたかった。でも、辛かったんだ。誰かを恨まないとやっていられない気がした。生きていたって何も出来ないから。
生きていて、体が動いて、その上性格が明るい、そんな人が羨ましくて恨めしくて、
「ごめん……兄さん…兄さん…」
………
兄さんに、体を返す方法はないのだろうか。
そもそも僕が兄さんを、恨まなければ。
僕がもっと丈夫に生まれていれば
もしかしたらあの、火葬された僕の体に兄さんがいたのかもしれない。
ガタンッ、
「こんにちは。」
「は、?」
知らない男が入ってきた。いや、兄さんの知り合いかもしれない。
「弟さん。ざんねんでしたね、」
「あ、あぁ、」
「申し遅れました。俺、高山奏羽さんの同級生。航人と申します。」
「は、」
初対面だったのか、?
「お礼を、言いたかったのです。」
「お礼?」
「小学一年生、俺はいじめられていました。毎日、毎日そんなある日入学式以来来ていない不登校の奏羽さんが、そんな俺を見て」
………
「やっ、やめて、」
無言で蹴られ、殴られ、
ガラッ
周りからヒソヒソ、誰?誰?と聞こえるなか
「そういうのはダメだと思う!」
「は?お前に関係ないだろ!」
「うるさい!」
その後ろに先生がいた。
いじめっ子たちはそのまま連れていかれ
「あ、えっと」
「僕は奏羽!君は、!」
「航人」
「航人、いい名前だね!僕はね体が弱いから、今まで来れなかったんだ、でもこれから毎日来るよ!」
初めて友人ができた気がした。
それから奏羽は来なかった。
先生に奏羽のプリントを届けさせて欲しいという名目で家を教えてもらった。奏羽は入院しているらしい。
そして、数年で死んだと奏羽の母から連絡が入った。
………
「本当に、ありがとうございました。…」
ポロポロ涙を流していた。航人は、僕のために涙を
ガバッ
「は、?お、お兄様?」
「あ、あぁ、ああああ、」
「!?」
「違う…僕兄さんじゃない、僕、ぼく、奏斗なんだ」
「は…?」
「信じて、信じて貰えないかもしれないけど…」
………
「…本当、本当なんだ、」
「信じられないけど、信じます。だって、あなたのお兄さんがこんな嘘をついて泣きわめいたりする方が信じられませんから」
兄さんってすごいな、
「助けて…僕どうしたら」
「奏羽くんって、雷都高校だよね?そこ、俺の兄ちゃんが、通ってて、」
………
「えっと、奏斗くんだよな?俺、高麗っていうんだけど…あ、俺、航人の兄貴。」
「…!よろしく!」
助かった。兄とは性格が全く違うのだから今まで友人であったはず、の人は正直気まずい。だからこうやって新しく生きていくしかないのだ
でも救われた気がした。やっとひとつ、またひとつと光がさした気がした。
たった一つの光が現れただけで、…
………
「ありがとう。航人…航人も高麗も良い奴だな」
「…家ではクソ野郎だけど…いないよりかはマシかと思って…良かったよ、喜んでもらえて」
ありがとう航人、でもごめんね。どうしても心の底から喜べない。
まるで人が必死に描いた作品を上から白で塗りたくり、新しい絵を描くような、
そんな気持ちの悪い、
僕は多分一生、自分を愛せないし愛してはいけないと思うんだ。
兄さんが掴んだ幸せを横から奪いたくないし。
兄さんが掴んだ幸せを逃したくはない。
僕は一生苦しまなきゃ行けない。
そう思ったんだ。
助けてほしい
助けてと声を上げたいけれどそれすらも許されない気がする
ここまで尽くしてもらっても僕は立ち直れないよ
ごめん
ごめんさい。
奪ってごめんなさい助けてもらったのに助けてもらう気がなくてごめんなさい気を使わせてごめんなさい
兄さんはきっと僕を恨んでいる。
兄さんは僕の分まで頑張ってくれていた気がする。
なのにそれをいとも簡単に奪って
これが悪い夢なら良かったのに
目が覚めたら……
病室だろうか、
それも嫌だ、もう戻りたくなんかない。
兄さんは、焼かれて、死んで、でも、僕は生きていて。
……………
悪い夢なら良かったのに
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