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「兄さま」
聞き慣れたアルトの声。
フィンは隣で本を読んでいたはずだがどうやら読み終わったようだった。
レインが横を向けば読めと指示していた本を閉じて伸びをするフィンがいた。
ゆったりと体をレインに寄せて肩に手をやるとレインよりも少し高い位置に頭をやり、見下ろす。
「ねぇ、言われたことやったよ兄さま。だから褒めて、ご褒美ちょうだいよ」
満月のように開かれた目を細め、フィンは言う。
逆光となり暗いフィンの顔で、目だけが爛々と光り、情欲を持て余す。
レインはこの目が一等苦手で、好きでもあった。
フィンは何かレインに言われたことを成す度に「ご褒美」を求める。至極当然だと言う様に。別にレイン自身も変なことでは無いなと受け入れ続けていた。
少しづつ、度が過ぎていっていたのにも見なかった振りをして。
フィンはいつしかレインと交じわうことを求めるようになっていった。愛に飢えていたわけではなかった。ただ、恋をして、愛してしまっただけだった。
それに、いつしかレインもそれを期待して、フィンに何か言いつける度に、後ろを解してフィンが求めるのを待っていた。
「…今日は何がしたい」
フィンはいつも同じ行為を求めはしない。優しく緩い時もあれば、激しく、酷く抱かれる時もある。
「鏡。鏡の前でしよう?」
フィンが指差した先を見ればそこにあるのは全身鏡。
フィンに再び目をやればニタリと上がった口角。そうだ。フィンはいつだって上に立っているレインより自分が優位に立つことが嬉しくて、レインもフィンのそんな顔が見たくてそれをずっと受け入れる。
フィンは立ち上がるとソファの前までその鏡を持ってきた。
「ここでやろ?いいでしょ 」
レインが断れないと分かって恍惚とした表情でフィンは言う。
それを汲み取り返事をしてやればフィンは満足そうに笑いレインのシャツに手をかけた。
「忘れないようにしようね」
するりと降ろされた手は腹へと落ちる。
フィンはレインとソファの間に回ると腰を掴んで硬く熱くなったそれを擦り付けた。
「ねぇ…僕今日いっぱい頑張ったんだよ?その分兄さまからしてよ」
「お願い」
あまりに期待に満ちた声。レインはこれに滅法弱かった。
片足をソファの上に起き少し体を浮かす。
レインがかちゃかちゃと金具の音をならしバックルを外してズボンと下着を手際よく脱げば期待で半勃ちの自分のものが目に入った。
「兄さまも期待してくれてたの?嬉しいなぁ」
フィンはレインの腹を抱くと少しづつ大きくなるそれに触れ先を強く刺激した。
「ふぐっ…!?」
「ビクビクだぁ…ほら、大きなってるのちゃんと見て?何のための鏡だと思ってるの」
フィンに顎を掴まれて全身鏡に目を向けさせられる。目の前にはフィンに触られてやり場のない手を握り必死に声を出すまいとするレインの姿。
ぴくぴくと震え大きくする自分の姿が至極惨めに写った。
「かぁわいい…」
裏を執拗になぞり上げたり、先を潰すように指を押し付ける。
「ん゙、ン…っは、ァ、うぐ… 」
否定したいのに、声を抑えるのに精一杯で出来ない。
ガチガチに勃ちきったレインのそれはフィンの容赦のない攻めに情けなく先走りを垂れ流した。
「お前、も」
俺だけ脱いで遊ばれているのは不公平だ。
レインが震える声でまともな文になっていやしない言葉を吐けば、少し目を見開いた後、理解をしたのか嬉しそうに目を細めた。
「うんっ、挿れさせてね」
ぶるんと音を立てて出された硬いものが尻に当てられ、少しづつナカに入っていった。
「ぅ゙、あくっ…」
少し息が詰まり、慣れない違和感に目を固く瞑った。
内蔵を押し除け異物が進むそれ。その先の心地よさを分かっていても産まれる気持ち悪さと僅かに孕まれた快楽が脳を溶かすように居座ってぐるぐるとした。
「…っほら、せっかく鏡あるんだから入ってくの、ちゃんと見てて?」
くい、と顎を上げられ目を少し開くとフィンのそれがレインの中へ半分ほど入っているのが鏡を通して見えた。
「今、腹のこんくらいまで、入ってる」
トン、と指先をヘソの下に置く。
「…っ、それ、無自覚?」
フィンは腰を強くつかんで、腹の中に入っているそれを大きくさせた。
「まてっ…くる゙、し」
腰を上げ苦しさを減らそうとしたとき、フィンがつかんだ腰を思い切り下へ突き落とした。
「…ひゅっ!? 」
目の前がバチバチと弾けて、腹が突き破けそうな感覚に首を仰け反らせる。
痺れるような甘い感覚が全身に響いて、まともに指先さえ動かせなかった。
蜘蛛の糸にでも、貼り付けられたみたいだった。全身がフィンの手玉に取られたみたいに動かせなくて、フィンに食べられる事を望むかのように逃げようともがくことも出来ない。
するりとフィンの手が蛇のようにレインの太腿と首に這う。
「首仰け反らせて快楽に堕ちちゃう兄さまもすごい可愛いけど、今日はちゃんと最後まで自分の姿、見てて?」
フィンはレインの顎を引いて鏡を向かせる。
蕩けきっただらしない自分の顔、フィンのギラギラと輝く目、最後まで入り切っている結合部。
全てがはっきりと鏡に映っていた。
「ぁ、やだ、」
「だめ「お前の顔見たいっ、鏡越しは、いやだっ…」
声を振り絞るように零す。蚊の鳴くような小さな声。
恋人同士の交わりではないのだから、顔を見合う必要なんて無い。でも、レインはそれを望んだ。例え兄弟と言うには行き過ぎて、恋人と言うには欠陥だらけのこの関係でも、それでも。
たとえ一方的であったとしても好いた人間を直接見て、愛したいと願うのは正であって欲しい。
「…ごめんね。ホントはそれ聞きたくて、意地悪しちゃった」
「ずっと僕だけ見てて、愛して欲しい。これって、間違い?」
背中から聞こえた少し泣きそうな声で零されたそれ。たとえそれが嘘であっても、事実であっても、レインはそれを受け入れる以外の選択肢がなかった。
「間違いじゃ、ねぇ、その分お前も、俺だけ」
腹の中がずっと苦しい。フィンの愛で、押しつぶされそうになる。
レインは震える手を動かしてフィンの頬に添えてやる。
不安そうに下げられた眉が、ちらりと髪から見えた。
「俺の中にお前の愛を注いでみせろ、お前の愛で、俺を溺れさせろ」
上半身を捻りフィンの頬を覆う。暖かいものが腹を満たして、ぎこちなさげに押し進む。
先程の威勢は何処へやら。
「もっとがっつけ、もっと喰らってくれ、」
俺の事が好きならば、貪欲に求めて貪ってくれ。
「兄さまらしいや、」
フィンはレインの肩を押しソファにたおさせると、膝裏を掴んで俺の足を大きく開かせた。
「頑張るから、いっぱい見てて?」
子供のようで、目の奥に居座るそれは扇情的で、可愛らしくない。
ぐちぐちと擦られ始めた内膜は、フィンの物を離すまいと締め付ける。
「ぁ、ア、」
苦しい。けど、気持ちいい。
「好きっ、好き、兄さま、好き、」
フィンの口はだらしなく開いて好きと零し、よだれをレインに垂らす。
余裕が無いのか少し辛そうに眉を顰めては、ふぅ゙っ…と快楽を逃がすように息を吐いた。
「っあ…♡ふ、イかねぇのか?」
純粋な疑問を口にすれば、フィンは不服そうに睨んだ。
「…兄さまと一緒にイきたかったの、」
フィンはそう呟くとレインの腹をぐっと押した。
ちょうど前立腺の辺り。フィンの手と硬いそれが内と外の両方から前立腺を挟み潰すように抑えられた。
「やめっ、うぁ、あ、」
「ここが良いって聞いたことあるんだ、ね、気持ちいい?」
ぱちぱちと弾け始めた目の前のせいで、フィンを見たいのに、見れない。
「あ゙、ァ、きもち、ん゙っ…♡きもちいから、おすなぁっ、…♡」
「でも、兄さまがイッてくれないなら、僕もイきたくないの、お願い」
フィンはそう“お願い”する。狡い。俺が断れないとわかってそう願うこいつは狡い。
「ひ、ぃ゙っ…♡、わかっだ、いく、いくから゙はやぐ、っ…♡」
「気持ち、よ、兄さま、ね、いく、なかっ出していいっ?」
「ん゙ぁ、あ、いいっ、出していい、俺もいくっ、〜〜〜〜〜〜〜〜♡♡♡」
「…あ、ふぅ゙っ」
どくどくと中を満たす暖かいそれに身を震わせる。
精液は腹を汚して、胸にまでかかった。
「いっぱい出たねぇ…♡」
フィンはレインの胸にまでかかった精液を伸ばすようにレインの身体に触れる。
「ん、ン…」
レインは抜けきらない快楽を弱めるのに必死でフィンが愛おしそうに見つめていることにすら気を遣れなかった。
少し息が整い始めたとき、ぼんやりとフィンを見つめ、レインは暖かい腹に何処か安堵を覚えてフィンに手を伸ばして抱き締める。
「ぅ、え?」
フィンはなんでレインに抱き締められたか分からずに声をこぼした。
「寝よう。フィン。少しくらい寝たって誰も怒りゃしない。それに、もう少し、この、…まま…」
言葉の途中でレインは寝落ちてしまった。
フィンは涙で腫れた兄の顔を見て少し息を吐いた。
「兄さま、ありがと、おや、すみ」
うとうとと眠気に誘われたフィンは背中に落ちる暖かい重力に身を委ねてそのままレインの上で夢に沈んだ。
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