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#ヤクザ
夏目萌*優しい彼~コミカライズ
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鷹槻れん

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「大内 里菜はどんな女なんだ? 旦那はいるのか?」
『はい。五歳年上の旦那がいるようです』
真宙は手元の資料を確認しながら続ける。
『ただ、夫婦仲はあまり良好ではないという情報があります。旦那の方は仕事を終えると自宅へ戻らず愛人らしき女性のもとへ入り浸っているとの報告も』
「そうか……」
『何か新たな情報が得られましたら、すぐにご報告します』
「ああ、ありがとう。頼むよ」
『承知しました』
そこで通話を終えた湊はスマートフォンをテーブルの上へ置いて深く息を吐いたその直後、風呂から上がった詩音がリビングのドアを開けて駆けて来る。
「パパー!」
そんな詩音に続いて和葉も姿を見せた。
「詩音、まだ髪乾かしてないでしょ?」
「やだー、まだいい」
「駄目よ、すぐに乾かさなきゃ」
髪を乾かすのがあまり好きでは無い詩音が駄々をこねると見かねた湊は、
「詩音、俺が乾かしてやるからもう一度洗面所へ行こう」
自分が乾かすと提案すると、
「パパがしてくれるならいいよ!」
そう言って湊に抱きつき、大人しく髪を乾かしに向かっていった。
それから詩音の髪を乾かした湊が風呂を終えてリビングへ戻って来ると、ソファーに座って絵本を手にした詩音が眠そうに目を細めている。
「詩音、そろそろ寝よう」
「やだぁ、パパとえほんよむ……」
「それじゃあベッドで読もう。な?」
「うん……」
「和葉、詩音を寝かしつけて来るよ」
「いつもごめんね。パパが良いって聞かなくて」
「構わないさ。ほら詩音、行くぞ」
湊は詩音を抱き上げると寝室へ連れて行き、暫く絵本を読み聞かせているうちに詩音は眠ってしまった。
ぐっすり眠る詩音に布団をかけ直した湊はゆっくりとベッドから降りて寝室を後にしてリビングへ戻ると、ソファーに座っていた和葉が穏やかに微笑む。
「本当に詩音は湊さんのことが大好きね。ずっと『パパ、パパ』って」
「嬉しいよ、あんな風にすぐ受け入れてくれて」
「そうね、私も嬉しい。詩音にとって湊さんと過ごす時間は大切だものね。これからも沢山作ってあげたいなって思ってる」
「ああ。詩音もそうだけど……俺としては和葉との時間も大切にしたいし、家族三人で過ごす時間も大切にしたいよ」
「湊さん……」
「お前たちのことが何よりも大切だから、俺はお前たちを危険に晒すことに繋がるものは出来る限り全て排除したいと思ってる」
そこで湊は一度言葉を止めると、少しだけ言いづらそうに視線を逸らす。
「……悪い」
「え?」
「今日、公園まで迎えに行ったのは……里菜を疑ってるからなんだ」
「…彼女って……里菜さん?」
「ああ」
「……そう、だったんだ」
「それと、悪いと思ったが真宙に彼女を調べるように頼んだ」
和葉は何も言わずに湊の言葉を聞いていた。
「その上で今分かってるのは……彼女が間接的にだが親父と繋がりがあるってことだ」
「…………そう、なんだね」
それだけ呟くと和葉は黙り込んだので、そんな彼女を見つめた湊は眉を寄せる。
「悪い……お前が安心して付き合えるようにと思ったからこそ調べた結果なんだ。こういうことをされるのは気分が悪いかもしれない。でも――」
「謝らないで」
静かな声が湊の言葉を遮った。
「湊さんが私たちのことを心配してくれてるのは分かってるし、今私たちが置かれている状況を考えれば当然のことだっていうのも理解してる」
和葉は一度言葉を切ると少しだけ困ったように笑い、
「本当はね……私も里菜さんのことを疑っていた部分はあったの」
「……そうなのか?」
「うん」
膝の上で指を絡めながら、ぽつりぽつりと言葉を続けていく。
「でも、確証はなかったし……詩音も卓也くんも純粋に一緒にいることを楽しんでるんだろうなって思ってたし、それに……私あまりママ友っていないから子供のことを話したり他愛のない話をしたり……そういうことが出来る人がいたらいいなって思ってたのも、本当なの」
その声にはほんの少し寂しさが滲んでいて、湊は暫く何も言えなかった。
「ごめんな、俺のせいで悲しい思いさせて……」
そしてようやく出て来た言葉は謝罪だった。
「どうして湊さんが謝るの?」
「いや、全ては俺の親父のせいだから」
「確かに、湊さんのお父様が原因にはなってるかもしれないけど……だからって湊さんが謝ることじゃないよ……」
「いや、俺が悪い……俺がもっと早くに親父と離れる決断を出来ていれば、和葉にも詩音にも辛い思いをさせることは無かったんだ……」
「湊さん……」
「本当にごめん」
「謝らないで……。過去は変えられないけど、これからの未来は変えられる……。私も詩音も湊さんと一緒に居られる今が凄く嬉しいから、これまでのことは、もう考えないようにしてるの。だから、湊さんももう自分を責めたりしないで? 湊さんが悪いわけじゃない。色々悪いことが重なっただけ……ね?」
「和葉……」
「私ね、里菜さんときちんと話そうと思ってるの」
「話す?」
「湊さんや私のことを探るために近づいたんだとしたら、やっぱり許せないから……そのことについて一言言いたい。だけど、話し掛けてくれて嬉しかったのも本当だから、お礼も言いたい。良いかな?」
そんな問い掛けに湊は、
「ああ、和葉がしたいようにしていい。お前や詩音に危険が及ばないよう、俺は俺なりにサポートするから」
「ありがとう、湊さん」
和葉の思いを大切に和葉のしたいように動いていいことを告げたのだった。
コメント
1件
ああもう、詩音ちゃんの「パパー!」からの流れに完全にやられました……。湊さんが髪を乾かしてあげたり、ベッドで絵本読んであげてるシーン、もう最高すぎます。家族の温かさが滲んでて、こっちまでほっこりしちゃいました。 でもそこから一転して里菜さんの話になる流れが切ないですね。湊さんが「悪い」って言いながらも和葉さんを守るために調べたって告白するところ、胸がギュッとなりました。でも和葉さんが「謝らないで」って言って、自分の気持ちもちゃんと話したのが本当に強くて素敵。二人ともお互いを思いやる気持ちが伝わってきて、読んでいて温かい気持ちになりました。詩音ちゃんとの日常シーンがますます愛おしく思える話でした。