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あぁ、いつからだろう。
人生などすぐ終わる物で、進む意味の感じられない物だと思い始めたのは。
小学生の頃は、学力に格差は感じられなかった。
感じようとも思わなかった。
みんなで昼休みには鬼ごっこをし、地面を蹴り走る。
担任たちも優しく、すごく悪いことをしなければ滅多に怒らない。
友達と公園でゲームをし、勝って嬉しい、負けて悔しいを何回も経験した。
学校という場所が楽しかったのは、小学生までだった。
中学生に上がると規律が厳しくなる。
髪型は前髪は目にかからない長さ、耳は隠さない、男子は肩につかない髪の長さ。
靴の指定、靴下の色の指定。
好きな物を全て出せなくなった。
唯一好きだったゲームの柄の筆箱とピンク色の花のキーホルダー。
キーホルダーは禁止だと先生に筆箱ごと没収され、帰ってきたのは中身だけ。
あのピンク色の花のキーホルダーは、自ら押し花として作り大切な思い出の残る物だったのに。
高校生になると、もっと厳しく。
テストの順位ランキングが廊下に張り出され、下位は実質公開処刑を受けていた。
自分はまあまあな点数で下位ではなかったが、ギリギリの状態。
担任は、「もっと勉強しろ、でないと次の学年にはいけないぞ」などと脅してくる。
高校を卒業した時の事を考え、仕事がどんなものか経験しようとバイトを始めようとするが、規律はそれを許さない。
就職するにしても、進学するにしても仕事を経験する事は調べることよりもよっぽどか理解が深まる事だ。
それを縛るなんて、どうかしているのではないだろうか。
自分は就職をし、今は社会人。
若い頃に経験できなかった仕事は、体になかなか入ってこず、精神、体共々疲弊していくばかり。
年もだんだんとり、自分は、なぜ、なんの為に生まれてきたのだろうか。
少なくとも、こんな人生を歩む為に生まれてきたのではない。
夜勤で朝方に仕事場から徒歩で帰宅する最中に、子供の頃よく見た花を見つけた。
ああ、この花は。
小学生の頃、登校や下校中に見かけるたびに甘い蜜を吸う為採っていた花だ。
名前はなんと言っただろうか。
ピンク色の花は、大人になっても綺麗に見える。
久しぶりにやってみようかな、と考えて花を採る。
ちゅー、と吸い、昔はもっと甘く美味しく感じたなあと思い出す。
子供から大人への、味覚の変化だろう。
背後から足跡が聞こえ始め、振り返る。
「先輩!早く朝ごはん食って帰りましょう!」
眠くないんですか、と笑いかけてくる今年入社した後輩の新入社員。
自分が持っていた花を見て、あー!懐かし!とすぐに花を採って吸った。
「あれ、こんなに甘くなかったっけ?」
そんな事を言う彼が面白くなり、笑って立ち上がる。
あぁ、でもこの人生もいいかもしれない。
大切な仲間が、そばで笑ってくれているから。