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お互い一歩踏み出す勇気がなかったイギフラ、、、 どこか儚くて物悲しい雰囲気が最高です 表紙のイラストもこのお話ととても合っていて素敵💕 終末SF系というのが新鮮で、思わず一気に読み進めてしまいました いつも最高なお話をありがとうございます あと、こちらこそあけましておめでとうございます
あけましておめでとうございます(激遅)
注意
・この物語はフィクションです。現実のあらゆる物とは一切関係ありません。
・🇬🇧🇫🇷です。(視点は🇫🇷さんです。)
・終末SF系のお話です。(人によっては死ネタに捉えられるかもしれません。)
以上の事を了承した上で読んでいただけますと幸いです。
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西暦20XX年
突然だが、皆は宇宙というものをどれほど知っているだろうか?あぁまぁ、宇宙と言っても広すぎて実際解っていない事も多いけれど。実際私もそこまで知っている訳でも無い。、、、閑話休題。
まぁ、何の話に繋げたいかと言うとずばり、宇宙そのものの伸縮性についてだ。
これは確か義務教育の範疇であったはずだから今さら説明するまでも無いだろうけど、宇宙と言うのは常に膨張し続けている。
まぁ、膨張していると言ったって、遠く、観測すらも叶わないだろう宇宙の端が広がろうが狭まろうが私達地球の生命にとっては関係無いだろう。
だが、何らかの要因により、文字通り天文学的な確率で宇宙の膨張が終了。
かつ、そこからまた天文学的確率で宇宙がひたすら収縮し、消滅しようとしているとしたら?
まぁ、そんな事現実には起こり得ないと一蹴することも出来るけれど、これは実際に現在の宇宙以前に起きた事。
また起きないなんて保証は無い。
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西暦2X25年、飛躍的な発展と消滅を繰り返す人類史の最中、突如として恒星イカロスが消失した。
寿命だなんてまだ、到底考えられぬ事で発覚当時はそれはもう、てんやわんやの大騒ぎだったし、勘違いじゃないかとも沢山言われていた。
けれど、そもそもこの発表は宇宙開発の金字塔、NA〇Aから行われた物であったし、調査を進めていくとイカロス以上に遠い星達は全て観測不可能になっている事が判明。
そこから芋づる式に宇宙が収縮してきている事が解った。
そして今日。
もし、もしもこのままの勢いで収縮が続く場合、大体30年後に地球は収縮に飲み込まれ、消えるらしい事が解ったのだ。
まぁ、人間にとって30年後ならまだまだ余裕はあるし、しかもまだ可能性でしか無いじゃないかと思うだろうけど。
30年と言うのは存外すぐ来るものだし、現代の進みきった様な科学的根拠に裏付けされた可能性を否定しきるには、多くの時間を必要とするだろう。
それならば、出来るだけ永く人類史を続けて行ける様に対策を進めて行くほうが賢明だ。
、、、と、そろそろ会議場に着く。
今日の発表がされたと同時に国際会議の通知が来ていたのだ。あぁ早く、あの発表の説明を求めなければ。
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「、、、以上が調査の結果だ。ah、、、何か質問はあるか?」
「は、、、」
「あ、アメリカさん、、それは、その、、」
「は、はは、、ジョークにしては、センスが無さすぎますよ、、、」
各国反応に違いはあれど、再度行われたこの恐ろしい報告に皆ざわつき、恐怖に顔を歪めていた。
それは報告者である彼も例外では無かったし、隣席の男の眼鏡に反射してほのかに映る自分の顔もとても酷く歪んでいる。
「食い止める方法は無いのか?」
誰かがそう言った。
そうだ、食い止める方法があるのなら、、、
私を含めた全員が彼に縋るような期待の眼差しを向ける。
だが、帰ってきたのは希望を打ち砕く言葉だった。
「、、、無い。現状、宇宙の収縮を止めることは不可能だ。」
「う、うそ、、だ、」
静まり帰った議場内に、皆の心を代弁する様な誰かの言葉が響く。
「、、、兄さんの言う通り、現状はどうにもならない。」
「そもそも、収縮し始めた原因も解ってないんだから、、、」
「、、、」
それじゃあ、本当に、、滅亡を受け入れるしか無いの?
抗うことすら出来ないなんて、そんなのあんまりじゃないか。
「、、、今日の所は一度解散しましょう。また後日に、、、」
「だけど、!時間はもう少ないんだよ、、、今この瞬間も滅亡が待ってる!どうにもならなくたって案を出し合うしか無い!!!、、、親父ならわかるだろ?」
「えぇ、頭では理解していますとも。ですが、、、」
「正直言って、この状態で会議が出来るとも思えない。かくいう私も、少し時間が欲しい、、、」
「、、、私もイギリスの案に賛成よ。まずは受け止めなくちゃ。」
「、、、わかった。また明日話し合おう。」
こうして、絶望を深めるような会議は終わった。
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普段の倍閑散とした帰路につきながら私はまた、考え込む。
地球の終わり、、、最初に聞いた時は現実感が無くて、あの会議でやっと理解して凄く悍ましく感じた。
相手が生物であるなら抗いようはあるけれど、宇宙そのものが相手だなんて、、、どうしたらいいの?
ふと、前方に意識をやるとイギリスが居た。お覚束ない足元でフラフラと歩いていて、見事に憔悴しきっている。
かくいう私も、傍からみたら彼と変わらないのだろうけど。
、、、少し、気を紛らわせたいし彼に話しかけてみようか。
「イギリスー?、、、おーい?」
「ねぇってば、、、」
、、、憔悴しきっていて気づかないらしい。
少し、気に食わないので軽く小突いてみた。
「、、、いっ!?なにするんですか!?」
「あぁ、やっと戻ってきた。」
「フランス、、、何の用ですか。」
少しイライラしたように聞かれた。
「特に用は無いわ。ただの気まぐれ。」
「、、、」
「、、、あなたは、何とも思わないんですか?」
「何が?」
「、、、滅亡についてですよ。」
「あ、あはは、、思わないわけないでしょ。」
「、、、いやだよ、私まだやりたい事も沢山あるのにさぁ!でも、抗う術すら無いの、!ならもう、いつも通りにするしか無いじゃん、、、」
「フランス、、、」
「、、、イギリスはどうなの。」
「見ての通り、、、未だ受け止めきれません。でも、自身が死ぬ事に対する恐怖は余り無い。私はどちらかというと今まで積み上げてきた物そのものが無くなってしまうのが恐ろしい。」
「、、、そう。」
そこからは彼と現実から逃げるように、傷を舐め合うように取り止めのない会話を続け、家に帰りそのまま眠りについた。
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翌朝、チュンだかピヨだかの小鳥の囀りと、カーテンの隙間から漏れ出る光で目を覚ました。
「、、、もう朝か。」
今日もいつも通りの朗らかな朝で、昨日の事は嘘だったんじゃないか、夢だったんじゃ無いかとも思う。
まぁ、あんな報告があったって染み付いた日常は変えられなくて、極度に効率化されて久しい朝食と共に私はテレビをみているのだ。
まぁ、テレビはどこもかしこも昨日の話で、非日常的状況の現実に戻されてしまうけれど。
「はぁ、、、朝から気が滅入るわ。」
、、、あぁそうだ、今日も会議があるんだった。
まぁ、正直どれだけ会議をしたって滅亡の運命を断ち切る事は出来やしないだろうけど。
私だって何も考えなかった訳じゃない。
けれど、どれだけ考えたって思い浮かぶ案の先にあるのは誤差程度の延命からの滅亡だ。
あぁ、この朗らかで突き刺すような素晴らしい日差しが嫌になる。
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重い足取りを無理やり進めてたどり着いた会議場は、控えめに言って地獄だった。
どんなものかというと、一方は昨日の絶望から抜け出せないまま震え固まり、一方は現実逃避的にから元気な振る舞いをし、一方は心ここに有らずと言った具合だ。
まぁ当然、こんな状態でまともな会議が行われるわけも無く、、、
悲壮感漂う騒々しさの中で非現実的な案が飛び交っては否定され、打ちのめされ直すなんてことがずっと続いている。
「、、、やっぱり、こんな状態で会議なんて無理なのよ。」
「あんな案を出したあなたが言うと説得力がありますね。」
「イギリス、、、でも、いい線行ってたと思わない?」
「いや全く。、、、人工的にビックバンを起こそうなんて非現実的な案、飲まれるわけが無いでしょう。」
「、、、」
それもそうだ。ビックバンなんて起こせるわけがない。そんな技術も、エネルギーも、必要であろう何もかもが無いのだから。
それに、仮にビックバンを起こしたところで結局地球が滅びるだけだ。
夢物語みたいに収縮とビックバンが相殺されて全てが止まるなんてこと、あるわけが無い。
それでも、、、
「、、、夢物語に縋ってしまうのは悪いことかしら?」
「悪いとは思いません。ですが、現実を受け入れる事も大事でしょう。」
「そう、よね。でもやっぱり私、何も残せず滅ぶなら夢を見ながら滅びたいわ。」
「、、、現実と向き合ったうえで悲壮感無く滅ぶ方が美しいと、私は思いますがね。」
「あなたはその美しさを全うできるの、?」
「、、、わからないから夢を見るのでしょう?」
「なにそれ、結局あなたも私と同じじゃない。」
どれだけ格好付けたって、彼も私も本質的には同じなのだろう。滅びに対する恐怖なんて、そう簡単に乗り越えられるはずが無いのだ。
ダンッ
どんよりとした議場に、大きな音が鳴り響いた。
私含む全員が音の出処を見ると、アメリカが険しい顔で口を開いた。
「、、、今日のところはもう、やめにしよう。」
「これ以上話し合ったところで時間を無駄にするだけだ。」
昨日とはうってかわって、冷え切った目、表情で彼は言う。
そこには、それでも案を出し合おうと言った男の面影は微塵も無く、諦めと呆れの様な物を漂わせた男が居るだけだ。
「、、、それでも、会議をしようと言ったのは貴方でしょう?」
「あぁ、確かにそうだ。でも、、、」
「これ以上会議したって、非現実的な案しか出てこないし、皆苦しくなるだけ、だろ?」
「少なくとも俺は苦しいよ、、、」
「、、、」
先ほどとはうってかわって、何とも痛々しい様子となった彼に声を掛ける者は居ない。掛けられる訳が無い。
結局この場を取り仕切っている彼も、私達と同じで、滅びに対する恐怖を乗り越える事は出来無かったのだ。
まぁ、当然だろう。なんなら、この場もきっと彼にとっての現実逃避場として作られたのだ。
、、、けれど、結局彼はこの現実逃避場に現実を突きつけられてしまった。
現実逃避場が現実を見る場所となったのだから、辞めたくなるのも当然だろう。
「、、、に、兄さんもこう言ってるし、今日のところはこれで終わろう。次の予定は、、、」
「決めなくて良いわ、決めない方が良い。」
これ以上地獄の日程を作るなんて、嫌に決まってる。
「じゃあ、今日はこれで、、、」
なんだか締まらないまま、この地獄の会議は幕を閉じた。
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意味を為さない現実逃避場を解散し、帰路についたは良いものの、、、これから私は、世界はどうしていけば良いのだろうか。
原因究明に努めて延命処置に手を伸ばす?
それとも、発表を無かったことにして終わりまで今と変わらず過ごしていく?
あぁそれか、昔の日本の漫画にあった荒廃した世紀末的世界に進んでいくとか。
まぁこのいずれか(特に前述の2つ)を人間達は選ぶのだろう。
私達国はそれに付き従い振る舞っていくだけだ。
選択権なんて言うのは合ってないようなものだし、私達は所詮偉い人間の駒の1つでしか無いのだから、、、
「それにしても、残り30年で私はやりたい事を終えられるのかしら、、、」
「個数によるんじゃないですかね。」
「うわっイギリス、、、いつからいたの?」
「うわって、、、議場からずっと隣に居ましたよ。」
「そうだったの。気付かなかったわ。」
本当に。
「でしょうね。」
「、、、」
「、、、イギリスはさ、残りの30年でしたい事とかある?」
「そうですね、、、まぁ、色々ありますよ。」
「そう、、、」
それじゃあ私の願いは叶わない可能性が高いだろう。
まぁでも、話すだけならタダだ。
私は話しを切り出した。
「あのさ、」
「少しだけ私のやりたい事、付き合ってくれない?」
私のやりたい事にはいくつか誰かと、特にイギリスとしたい事があるのだ。
「それは、毎日?」
「ううん、偶にで良いのよ。」
「なるほど、、、良いですよ。」
予想に反して、彼はそれを了承した。
なんと喜ばしいことだろうか。口元のニヤケが抑えられそうにない。
「、、、ありがとう。」
「じゃあ早速、、、明日はどう?家であなたとしたい事があるの。」
「良いですよ。、、、何時頃に伺えば良いですか?」
「何時でも、早すぎなければ良いわ。」
「わかりました。」
私は彼と無事約束を交わし、別れ際まで会話を続けながら家に帰る事が出来た。
この約束は私にとって、絶望を書き換える光の様に思えるもので、これからの30年を真っ黒から灰色にする第一歩でもある。
あぁ、明日が楽しみだ。楽しみすぎて眠れる気がしない。
まぁ、寝ないと明日泣くことになってしまうからしっかり寝るけれど、、、
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翌日
いつもよりも大分早くに目覚めてしまった。
チュンともピヨとも聞こえない、静まりかえった薄暗い時間。
身支度を済ませてもやっとチュンだかが聞こえてきたぐらいだ。
まだまだ早い時間だが、やることも無いし、もう彼をもてなす準備を始めてしまおう。
まぁ、掃除等の基本的な準備は昨日のうちにすましているから、彼が来るだろう時間を考えると本当に早すぎる準備になるけれど。
準備をやりきれないまま彼が来るよりは良い。
普通よりかは大分広いベランダにガーデンテーブルとお揃いの椅子を置き、
ずっと保管していて埃を被ってしまった未開封のワインボトルやらワイングラス、陶器皿を拭き、陶器皿はそのままキッチン台に。
ワインボトル、ワイングラスをガーデンテーブルに並べる。
コンロの上にフライパンを、キッチン台にまな板を乗せた後
冷蔵庫を開け、大量の現代的な、食事と言うには簡素過ぎる物達の奥にしまい込まれた調味料やら保存の効く食材達を取り出す。
食材をまな板に、調味料をキッチン台の僅かなスペースに乗せると、私は調理を始めた。
料理なんてもう、久しぶりにするものだから腕が鈍っているんじゃ無いかとも思ったけれど、特に変わらず手際良く楽しく作ることが出来た。
まぁ、料理と言ってもあり合わせの物を炒めただけの、本当に簡単なものだけど。
「やっぱり、料理は良いものね。、、、すっかり忘れていたわ。」
時代の流れというのは本当に素晴らしくて恐ろしいものだ。好きだった感覚も忘れてしまうのだから。
料理を皿に盛り付け、冷蔵庫に保管しようとしたところでインターホンの音が響いた。
イギリスが来たのだろう。なんだかんだで日が昇りきっているし。
私は皿を置き直し、いそいそと玄関に向かい彼を招き入れた。
「いらっしゃい、イギリス。、、、どうぞあがって?」
「お邪魔します。」
「、、、それで、今日は何をするんです?」
「あぁ、それは、、、」
ここで言葉を止め、彼をベランダの椅子まで案内して私は答えた。
「、、、飲み会よ!」
「、、、へ?、、、こんな真っ昼間から?」
「えぇ、この真っ昼間から。」
「私ね、明るい時間から誰かとお酒を飲んでみたかったのよ。、、、特にイギリスと。」
「仕事以外で、ゆっくりのんびり喋りながらね。」
「はぁ、なるほど?、、、何故私と?」
「えぇ、だって、あなた面白いじゃない。面白い男と酒を飲みたいと思うのは普通のことでしょう?」
まぁ、これは建前だけど。(少しばかりの本心でもあるが)本当はただ、イギリスと過ごしたかった。それだけだ。
「、、、そうですか。」
「もしかして不服?」
「えぇ、とても。」
「そう、でも事実だから仕方が無いのよ。」
「、、、」
「まぁ、座っててよ。おつまみ持ってくるからさ。」
「、、、わかりました。」
如何にも不満ですと言いたげな顔のイギリスを横目に、私は料理を並べた。
「はい、ほぼ出来たてよ。」
「、、、久しぶりにあなたの手料理を見た気がします。」
「そりゃあ、久しぶりに作ったからね。」
料理を並べ終わり彼の顔を見ると、さっきの不満顔が嘘のようにキラキラとしていた。
やっぱり、オフの時の彼はわかりやすい。口では言わない本心が全て顔に出てくるのだ。
あぁこの顔じゃきっと、、、
「おつまみがおつまみの役割を果たせなそうね。」
「何言ってるんですか。」
「だってイギリス、パクパクってすぐ食べちゃいそうなんだもの。」
「流石にそれは、、、まぁ、、、えぇ、、、」
「あはっ、図星なのね!」
「、、、まぁ、仕方ないわ。料理らしい料理なんて、あなたも久しぶりでしょう?」
ここ数十年で世界の食事事情は大きく変わった。
人間達は効率を求め必要な栄養素のみを手軽に摂取できる加工物を発明し、料理や味のある食事を懐古趣味的な娯楽にしたのだ。
だから、彼がこうなるのも仕方が無いだろう。
「、、、その口ぶりだと、あなたも久しぶりなんでしょうか。」
「えぇ。、、、と、そろそろお酒を開けましょうか。」
「、、、それ、いつのワインなんですか?」
「うーん、100年以内だとは思う!」
「それはまた、、、独特な味がしそうですね。」
「あら?あなたはヴィンテージとか好きな男だと思ってたけど。」
「食品に関してはヴィンテージも程々にして欲しいのですが、、、というか、あなたの舌がそれを受け入れるとも思えない。」
「まぁ、そうね。でも、味のあるアルコール飲料だから今じゃ相当な高級品よ。客人を持て成すには丁度良い。」
「まぁそうですが、、、」
何か言いたげなイギリスを無視し、私は彼のグラスに、そして自身のグラスにワインを注いだ。
「世界の終わりにかんぱ〜い、、、」
「もっと他に無いんですか、、、」
そう言いつつも、なんだかんだで彼はグラスを合わせてくれる。
「、、、で、お味はどう?」
「えぇと、、、独特で芳醇な味わいで、、、つまみが進みそうです。」
「それは良かった。」
「どこがですか。」
「料理が残らなそうなところかな。」
「私があなたの料理を残したことは無いでしょうに。」
「まぁそうだけど。」
彼は私が料理を振る舞うと、残さず全て美味しそうに食べてくれるのだから作り甲斐がある。
まぁ、そんなだから毎回作りすぎてしまって不安を抱える事になるのだけど。
「、、、やっぱり、あなたの作るものにハズレは無いですね。」
「もう、素直に美味しいって言ってくれても良いのに!
まぁ良いけどさ。」
まぁそうは言っても、彼のこの言葉は最大限の賛辞であるのだから、私は素直に嬉しいとも思う。
というか、口も素直なイギリスなんてあまり想像出来ない。
「、、、何笑ってるんですか。」
「いや、別に。美味しそうに食べるなぁって思ってただけ。」
「、、、そうですか。」
「、、、そう言えばさ、イギリスのところは今どうなってるの?」
なんだかんだであの発表から今日で3日目だ。何かしらが起こっていてもおかしく無い。
「、、、そりゃあもう、大荒れですよ。インフラは殆ど麻痺状態で、そろそろ暴動でも起こるんじゃ無いですか?」
「自分の事なのに他人事なのね。」
「私達は人間達に大きな干渉は出来ませんからね。彼等が何をしようが私は見ていることしか出来ない。」
「確かにそうだわ。、、、後、あなたどうやって来たの?」
「海峡トンネルをこう、スーッと。」
「不法入国?」
「、、、そういうフランスはどうなんです?てっきり既に暴動が起きてると思っていましたが、このあたりはとても静かだ。」
「露骨に無視したわね、、、別に良いけど。、、、そりゃあもう暴動は起きてるわよ。まだ都心部の辺りだけで、この辺りとかの郊外は静かだけどね。まぁ、この静寂もそのうち無くなるんじゃない?」
「あぁやっぱり、暴動は起きてるんですね。」
「起きないわけ無いでしょ。」
「確かに。」
私が生まれる前から、そして私が存在する事になった革命から今日に至るまで、この国の民(特に首都であるパリの市民)は血気盛んなのだから。こんな事態になって暴動が起きないわけがない。
「はぁ、、、これからどうなるんでしょうね。」
「、、、わからない。でも、終わった後しばらく会え無いのはきっと寂しい事だと思うわ。」
「、、、?終わったらもう、会えないのでは?」
「いや。終わった後、いずれまた今の私達の歴史と殆ど同じ様な歴史を歩む宇宙が、世界が生まれるはずよ。まぁ、何度目の宇宙で生まれるかはわからないけど。でも今の私達の存在が可能性の証左だから、きっと生まれる。会えるはずだわ。」
だって、そうじゃなきゃ本当に30年後お別れになってしまう。私はそれがどうにも嫌だから、また会えると思いたいのだ。
「、、、例え生まれたとしてもそれは私達と似た何かで、私達じゃないでしょうに。」
「それを言われてしまうと困るんだけど、、、」
「何故?」
「現実逃避の道を潰されているのと同義だからよ。もう、言わせないでよね!」
「それは、、、すいません。」
苦虫を噛み潰したような、何とも言えない表情に顔を歪めながら彼は私に謝ってきた。これは多分、心からそう思っているんだろうな。
「別に、そこまで気にしてないから大丈夫よ?」
「、、、」
この何とも言えない空気から逃れる為、何か言いたげなイギリスに気づかないフリをしながら私はワインに口を付けた。
、、、やっぱり、酸化していてあまり美味しく無い。記憶の上ではこのワインは当たり年の葡萄を使っていた気がするのだけど、、、
「あまり美味しく無いわね。」
「、、、今更ですか。」
「確か当たり年の結構良いワインだったはずなんだけどね、、、」
「どれだけ良いものでも劣化には耐えられませんから、仕方のない事です。」
「それはそう。」
「あぁ、そうだ、、、」
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彼とポツポツとした会話を続ける中、ふと外に意識をやると、いつの間にやらボトルの中身と料理が消え、日が沈み始めていた。
「、、、あら、もうボトルが空だわ。」
「、、、本当だ、話に夢中で気付きませんでした。」
「私達ずっと話していたものね。」
「えぇと、、、あぁ、かれこれ6時間は話していたみたいです。」
「あぁ、そんなに?そりゃあ、ボトルが空になるはずだわ!おしゃべりに水分は必須だもの。」
「えぇ、こんなに。、、、時間が経つのは早いものですね。」
「そうね、、、本当に。」
こんなに早く流れる時間がもう、たった30年の有限だなんて未だに信じられない。
「、、、あぁ、フランス。右、、、いや、左を見てくださいよ。夕陽がとても綺麗です。」
「えぇ本当に、家の自慢の景色の1つだわ。、、、後30年しか見られないのが惜しいぐらい。」
「後、、、10950回も見られるなんて素敵じゃないですか。」
「凄い、すぐ回数まで出されちゃった。、、、でも残念、その計算は間違いよ。あなたは雨と曇り空を忘れたの?」
雨も曇り空も彼は良く知っているだろうに、、、
「ここは曇り空も雨空も素晴らしいでしょう?」
「、、、何をお望み?」
「酷いな、純度100パーセントの本音なのに。どうして疑うんです。」
「普段の自分を振り返ってみたらどうかしら。」
「、、、えぇ、えぇ、昔から私は善き隣人です。ふふっ」
「笑いが漏れてるじゃないの。」
、、、彼と私はかつてライバルだったはずなのに、今じゃこんなに近いところに居るのはなんだか不思議だ。
「あぁ、、、時間も時間ですし、私はそろそろお暇しますよ。」
そう言いながら彼が立ち上がると、もう少しだけ話していたい、帰らないで欲しい、、、といった想いが私の心を満たし始める。
だが、それを表に出してしまうと彼に迷惑をかけてしまうので、私は口に出ようとする想いを飲み込んで彼を送り出す言葉を口にした。
「そう、、、今日は来てくれてありがとう。、、、また来てね。」
「えぇ、こちらこそ。、、、ではまた。」
そう言い、彼はここを後にした。
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「はぁ、、、片付けないと、、、」
彼が帰った後に残された静寂は、慣れ親しんでいるいつもの日常とはまた違っていて、どうにも片付け作業に移る気が起きない。
だがそんな事を言っていてもどうにもならないので、私はだらだらと重い鉛を付けられた様な気持ちで片付けを始めた。
ラベルを剥がした空ボトルを流し台に、食器達を食洗機に入れ稼働させ、そのまま流し台で空ボトルを洗い干す。
それから、ベランダのガーデンテーブルと椅子を部屋に入れ、汚れを拭いてから物置にしまう。
、、、こんなところで良いだろう。
「、、、ふう。」
やっぱり、誰かをもてなした後の片付けは苦手だ。
準備をして、客人と遊んで楽しんで、客人を送り出して、、、そんな風に楽しんだ後はどうにも疲れてしまってやる気がでないのだ。それに、ナーバスな気分にもなってしまう。
、、、とりあえず早めの夕食でも食べようか。
それからシャワーを浴びて、、、それから、イギリスから来るだろうメールに返信して、、、それから、、、
あぁ、
「まだやるべき事が沢山あるわ。」
今日のこれからを考えつつ、私は冷蔵庫から食事を取り出してソファーに座り、テレビをつけ、食事を齧る。
、、、あぁ、無味の虚無だ。それでいてボソボソとした感触を口に残していく。
今日は久しぶりに味のある美味しい料理を食べたからか、いつにもまして虚無を感じてしまうのだろう。後、一人であるところも虚無に拍車をかけている様に思う。
ボソボソとした虚無を頬張りつつテレビに意識を移すと、予想していた以上のニュースが飛び込んできた。
なんでも、パリの北東に位置するコミューン達を始めに、一部を除いたフランスの殆ど全土で大規模な暴動が起こり始めたらしい。
これは、、、除かれた一部であり、私の家のある高級住宅街的コミューンに暴動の風が吹くのも時間の問題だろう。
まぁ、暴動はある種の日常的な側面もあるし、部下達を集めて会議とは名ばかりの情報交換お茶会を開くのは明日でも良い。利己的と非難されるだろうけど私はもう、今日は家から出たくないのだ。
それに、本当に緊急の会議を要するのならとっくのとうに私に連絡が来ているはず。それが無いという事は、これらの暴動は緊急事態では無いのだ。
なんて、言い訳に近しい事を考えながら、私は行儀良さとはかけ離れた様に最後の一口をボソボソと頬張りながらシャワーを浴びる準備をする。勿論、テレビを消すのも忘れずに。
脱ぎ散らかしていて行方不明だった、昨日から使い回しの寝間着を全て集め、上下セットの下着を部屋の衣装箪笥から抜き取り脱衣所へ向かう。
寝間着達を洗濯機の上に置き、服を脱ぐ。脱いだ服をそのまま洗濯機に投げ入れ、私はシャワールームに入った。
何処か古めかしさを醸し出す蛇口を捻ると、いつも通りに水が出てきた。私は長い間生きているが未だに、温かい筈のシャワーの使い始めに出てくる水に慣れる事が出来ない。かといって、古い設備に初めから温かいお湯を期待するのも酷な物で。
私は暫く冷水に打たれた後、やっと温かいお湯を浴びる事が出来た。
、、、シャワーを浴びていると色々な事を考えてしまうけれど、今日は、、、というか最近は彼の事ばかりを考えてしまって、なんだか逆上せてしまう。勿論原因はシャワーの浴びすぎなのだけど、自分の感情が体調に出ている様で恥ずかしい。
「、、、そろそろ出よう。」
私はシャワーを止め、ぐったり気味にシャワールームから出た。
脱衣所で体を拭き、バスローブを羽織る。そのまま洗面所でスキンケアをして、私はリビングに戻った。
水をコップに注いでソファーに座ると、携帯の通知音が鳴り響いた。、、、イギリスからの様だ。時間を見ると、彼が帰ってから思った以上に経ってていた様で、丁度彼が家に着くぐらいの時間になっていた。
とりあえず、返信をしないと、、、
《今日はありがとうございました。》
《ううん、こちらこそありがとう!また来てね。》
《はい、また。》
《それでは、おやすみなさい。》
《うん、おやすみなさい。》
あぁ、変な返信になっていないだろうか。彼から連絡が来るたび、彼に連絡を送る度にこんな事を考えてしまって頭が爆発してしまいそうになる。
この年にもなってこんな風になるのはなんだか恥ずかしいのだけどね。
イギリスを相手にするとなんだか調子が崩れてしまう。
あぁ、やっぱり
「好きだなぁ、、、」
どうしようもないぐらい、私はイギリスの事が好きなのだ。まるで子供みたいに初で、でも人間の寿命以上に長い間燻っている恋心。
捨ててしまうなんて事も出来なくて、どうにもならない感情だ。
あぁ、そろそろ着替えよう。何時もより大分早いけれど今日はもう、眠ってしまいたいのだ。
コップを片付けてまた脱衣所に戻って、寝間着に着替えて。勿論歯も磨いて。
、、、これで良い。
私はこのまま部屋の電気を消して自分の部屋へ向かう。
そしてそのままベッドに入って、目を瞑るのだ。
「おやすみなさい、、、」
______
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西暦2X54
時の流れとは早いもので、あれからもう30年が経とうとしている。
そして今日この日、計算が合っていれば18時ぴったりに地球が滅びるらしい。(今が13時前だから大体、5時間後ね。)
そんな日にイギリスから会おうと連絡が来た。
彼とはあの日以降も度々会っていたけれど、最後に会ったのは確か1年前だったはずで、、、まさか滅びの時を共に出来るとは思わなかった。
いや、ほんの少し会うだけですぐに別れるかもしれ無いけれど。やっぱり期待はしてしまう。
なんて、色々考えながら歩いている間に集合場所に着いた。
道路を挟んでビッグベンが正面に見える建物の前。昔はここにカフェとかが色々あったのだけど、今あるのは日用品店ぐらいだ。
辺りを見回すと少し先にイギリスが見えたので、近づいて行くと、彼も気付いたようでこちらに向かってきた。
「おまたせ、待った?」
「いえ、全く。、、、時間ピッタリ、思ったより早かったですね。」
「、、、私が遅刻するような女に見える?」
「えぇ。というか、実際するじゃないですか。」
「、、、今日は遅刻しなかったから良いじゃない。」
「それもそうか。」
「それで、、、今日はどうするの?」
私は早速彼に要件を聞いた。まぁ、私にとって大事なのは要件というより一緒にいる時間なのだけど。
彼は昨日、急に13時にここに来いって一方的な連絡を送ったまま、要件を教えてくれなかったのだ。
「一緒に行きたい場所があるんですよ。」
「それは、、、ここから遠い場所?」
「まぁ、それなりに。」
「そう、、、じゃあ、私達最後まで一緒ね。」
「、、、そう、、なり、ますね。」
あぁ、夢みたいな期待が現実になった!なんて喜ばしい事だろう?恋心を抱く相手の最後を共にする女になれただなんて。
なぜだか、彼は複雑そうにしているけれど、、、誘ってきたのはあなたなのにね。
「、、、そうだ、フランスはお昼はもう食べましたか?」
「えぇ、食べてきたわ。」
「それなら、もう向かいましょうか。大体3時間ぐらいで着きますよ。」
「、、、もしかして歩きだったりする?」
「えぇ、歩きです。偶には良いでしょう?」
「確かに。、、、どこに向かうの?」
「それは着いてからのお楽しみという事で。、、、まぁ、少し東の方とだけ言っておきましょう。」
「そう、、、楽しみだわ。」
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イギリスに連れられ16時丁度頃にたどり着いたその場所は、酷く老朽化しつつも屋根に特徴的な赤い報時球を持つ建物であった。
グリニッジ天文台。ここはかつてそう呼ばれ、世界の時間法則に多大な影響を与えた場所である。
現在はもう、パークそのものが歴史の波に飲まれ忘れ去られてしまったけれど、今も根を張る本初子午線だとか、世界協定時の起源はここなのだ。
「、、、天体観測でもするの?」
「えぇ、良くわかりましたね。」
「天体観測が目的なら、もっと良いところがあると思うけどね。」
実際、ここは天文台という名を冠しているが数百年前の時点ですでに天文台としての役割を喪失し、史跡となったのだ。
本当に天体観測をする気なら、もっと別の所の行ったほうがいいだろう。
「えぇ、そうでしょうね。ですが、これからの航海を迎えるのにここは丁度良いと思いませんか?」
「あぁ確かに!でも、もう北極星は消えてしまったわ。」
航海に大事な北極星はもう、昨日の間に収縮の波に飲み込まれてしまった。
「そうですけど。でも、きっといつか私達はまた同じ様な星を見つけるはずですよ。」
「そう、、、なら、しばらくは目的無く漂う漂流者のみ分で辛抱ね。」
「えぇ。あなたならきっと、耐えられますよ。」
「らしくも無いことを、、、まぁ、あなたも耐えられるでしょうね。」
だから、お互いにまたいつか巡り会えるはずなのだ。
国の化身としてでも、はたまた人間としてでも、巡り会えたら、、、それはきっと
「幸せなんだろうな。」
「何がです?」
「あ、声に出てた?」
「そりゃあもう、バッチリと。」
「そう、、、まぁ、気にしないで?」
「そう言われると余計気になってしまうのですが、、、まぁ、良いでしょう。」
今日は晴れだからか、昔見た時よりも一段と綺麗な夕焼けが空に広がっている。
それはまるで神聖さを閉じ込めた様な美しさで、これから地球が滅ぶ事を感じさせない。
「、、、綺麗ね。」
「えぇ、、、本当に。今日、たった一度しか見られないなんて残念でならない。」
「、、、あはは、イギリスったら。またそのうち見られるはずでしょう?きっと、、、」
「あぁ、、、そうでした。きっと、またこの美しい景色は見られるはず、、、です。」
「そう、、、そうよ。」
「、、、」
少し、嫌大分、筆舌に尽くしがたい様な気まずい空気と沈黙が流れ始めた。
私だって、彼が気を使ってくれているのはわかる。し、これが現実逃避的な幻想じみたうわ言であることもわかっている。
それでも、私は夢見る事を辞められないのだ。
なんて、、、また言い訳じみた思考を巡らせていると、彼がこの気まずさを切り裂くように言葉を発した。
「、、、さっきはここに来た理由を天体観測と言いましたが、本当はもう一つあるんです。」
「そうなの?」
「えぇ。、、、実は、この滅びは昔から予言されていたんですよ。」
「え、、、?、、、それは、どういう、、、」
「あぁ、その、、、ここにある大量の資料の中に所謂、予言書じみたものがあるんです。」
「その資料は大体17世紀から18世紀の間に著されたようなのですが、そこにはこれから、、、書かれた当時から約1000年後に、世界は圧縮され滅ぶと書かれていたんですよ。」
「、、、それは、、、まぁ、偶然でしょう?」
「えぇ、ですが偶然が重なればそれは真実となる。予言なんて、そんなものだ。」
そういうと、彼は微笑みを浮かべた。その微笑みは本来は紳士的に写るのだろうけど、今の私には恐ろしく、不気味に写ってしまう。
「、、、」
「まぁ、嘘ですけど。」
「はぁ?意味わかんない、、、」
思わず気の抜けた声が出てしまった。あんなに重たく冷たい空気を漂わせながら話した事が、ただの嘘なんて。
彼は何を考えているのだろう?
「あはは、そんなに怒らないでくださいよ。ただのジョークじゃないですか。」
「あなたのそういうところ、未だに理解できないわ、、、まぁ良いけど。」
「、、、少しはマシな顔になりましたね。」
「、、、私そんなに酷い顔してた?」
「えぇ、とても。、、、まぁ、少しでも緊張が解せたのなら良かったです。」
彼は私を気遣って冗談を言ってくれたらしい。冗談にしては大分重いけれど、この事実は私を幸せな気持ちにしてくれる。
「、、、ありがとう。」
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イギリスとぽつぽつと会話を続けていると、いつの間にか17時45分になっていた。もう、後15分で私達は滅んでしまうらしい。
時間は有限という言葉がこれ程重くのしかかる瞬間も少ないんじゃないだろうか。
「、、、本当に、もう終わっちゃうのね。」
「えぇ、、、本当に短いひと時でした。」
「人間達はあの時からの30年を長いようで短かった。そう表現するのでしょうけど、私達にとっては本当に、短かったわね。」
「でも、ここまで来るともう、清々しい気持ちになりませんか?」
「あはは、たしかに!もう全部受け入れちゃうものねぇ、、、」
別に、滅びへの絶望だとか悲壮感だとかがなくなった訳では無いけれど、なんだか全て諦めがついてくるのだ。
そうだ、もう最後だしこの気持ちを伝えてしまおう。
どうせまた会えるとしても早くて何十億年後なんだから、それだけ経てば嫌がられたって気まずさはなくなるはずだし。
「ねぇイギリス。」
「なんですか?」
「最後だから言えるんだけど、、、私、あなたの事が好きだったのよ。」
あぁ、遂に言ってしまった。
心臓がドクドクと波打つのに気づかないフリをしつつ彼の顔を見てみると、目を見開き、呆けた顔をしていた。
「、、、イギリス?流石に何か言ってくれないと困るわ。」
「あ、あぁ、すいません。、、、その、実は、、、」
「私もあなたと同じ気持ちだったんですよ。」
彼は顔を赤くしながら、確かにそう言った。
私はいつの間にか、眠っていたのか?なんて考えてしまうぐらいに嬉しくて、信じられない。
「、、、嘘、本当に?あはは、夢みたいだわ!」
「えぇ本当に、、、まさか両思いだったなんて。」
「うふふ、こんな事ならもっと早く告白しちゃえば良かった!もう、後5分とちょっとしか時間がないわ。」
「ふふ、えぇ。お互い、関係を壊す勇気が出なかったんですよ。仕方ありません。」
「フランス、」
そう彼に呼ばれ、返事をしようとした瞬間、口に生暖かい物が触れた。
私は彼に、イギリスにキスされたらしい。そう気づくと、自分の顔がどんどん赤くなっていく様な気がした。
きっと本当に赤くなっているのだろう。彼の目が面白い物を見たように細まっている。
どれだけの時間が経っただろうか?短く一瞬の筈の時間をとても長くて、幸せなものに感じていると彼の唇が離れていった。
「、、、愛してます。」
「ずるいわ、、、あなたって本当にずるい。でもそんなあなたの事が私は愛おしくて堪らないの。」
「、、、あなたも大概、ずるいですよ。」
「ふふ、ねぇイギリス。」
「なんですか?」
「私の事、忘れないでね。またいつか出会える時まで、、、」
「えぇ、絶対に忘れませんよ。、、、あなたも私の事、忘れないでくださいよ?」
「うん、絶対に。」
そう言うと、終末の一分前を知らせる鐘が鳴り響いた。
「、、、それじゃあイギリス、さようなら。」
「えぇ、、、さようなら、フランス。またいつか、クランチの先で会いましょう。」