pixivの再掲です
垢→やゆよ @user_npdx4375
赤桃 病み
ないこSide
窓の外は、灰色の空が広がっている。曇り空の中で、冷たい風が窓をかすめているのがわかる。部屋の中は静かで、ただ、自分の呼吸の音だけが耳に響く。それすらも、まともにできていない。浅く、速い呼吸が胸の奥からひたすら込み上げてくる。
「……りうら、」
震える声で名前を呼んだ。視界がぼやけて、涙が頬を伝うのがわかる。もう何も見たくない、何も考えたくない。ただ、泣きたかった。
「ないくん…?」
優しい声が耳元で響く。りうらが、そっと近づいてきた。その声に応えることもできず、ただ堪えきれずに嗚咽が溢れた。涙が止まらない。喉の奥が詰まり、うまく呼吸ができない。過呼吸のように息を吸い込んでは吐き出す、それが一向に落ち着かない。
「大丈夫だよ、ないくん。俺がいるから。」
りうらの腕が、そっと自分の背中に回される。柔らかく、暖かいその手の感触は、いつもと変わらないはずなのに、今の自分にはそれすらも重荷に感じてしまう。
「……もう、ほっといて……」
言葉がやっと出てきたが、震える声に乗ったそれは、きっと無力な訴えに過ぎなかった。りうらが自分を放っておくはずがない、そうわかっていても、何もかもが嫌だった。
りうら Side
ないくんが泣き続けている。声にならない嗚咽が、部屋中に響き渡る。彼の過呼吸はすっかり馴染み深いもので、それが起こるたびに、俺は何をすべきかを考えるけど、答えはいつも同じだ。
「大丈夫、ないくん、落ち着いて……俺がいるから。」
俺の言葉は届いているのか、わからない。ないくんはさらに顔を歪め、涙を流し続けている。俺がそっと手を伸ばして、彼の肩を撫でると、さらに深く泣き崩れる。
もう何回目だろう、彼がこんな風に壊れてしまうのは。それでも、俺は離れることなんてできない。手を握りしめて、ないくんをしっかりと抱きしめる。涙に濡れた彼の頬に触れると、その冷たさが心に突き刺さる。
そんな時、ないくんがカッターを持ち出した。
「、…っ」
シュッ
そうして、彼の腕に切り傷が増えていく。
状況を急には理解できず、注意するのが遅れてしまった。
「、!?ないくん、今日は一旦休も、」
俺がそう言った瞬間、ないくんの体がびくりと反応した。彼の目が大きく見開かれ、パニックに陥る様子が明らかだった。
「やだっ、やだっ、休みたくない……!」
ないくんの声が掠れながらも強く響く。彼は拒否し続け、俺の言葉を聞こうとしない。俺も疲れていた。彼がこうやって壊れるたびに、俺も少しずつ疲弊していく。
「ないくん!」
つい、声を張り上げてしまった。ないくんは驚いたように目を見開き、怯えた顔で俺を見つめる。そして、突然、泣き崩れた。
「ぁ、ご、ごめ……っ」
その姿を見ると、俺は自分が何をしてしまったのか、すぐにわかった。泣き叫ぶないくんを前に、胸が締め付けられるようだった。
「ごめん、ないくん……俺が悪かった。」
言葉は空中に消えていくようで、ないくんは泣き疲れたのか、しばらくしてからようやく眠りについた。俺は静かに彼の頭を撫で、何も言わず、ただその存在を感じていた。
ないこ Side
次に目を覚ましたとき、りうらの手が自分の頭を撫でているのがわかった。優しい、その手の感触に、自分がどれほど救われているのかを改めて感じる。
「……ごめん、りうら……俺……」
謝罪の言葉が口を突いて出た。でも、りうらも謝る。
「俺こそごめん、ないくん。」
その言葉を聞いて、俺はかぶりを振る。違う、謝るのはお前じゃない。
「りうらは……謝らなくていいよ……悪いのは、俺だから。」
俺の声は震えていたが、真実を伝えたかった。りうらの優しさに甘えてしまう自分、そしてその優しさを重荷に感じてしまう自分が、何よりも許せなかった。
「そんなことないよ。」
りうらの声が優しく耳に届く。俺は何も言えず、ただ涙がまた溢れそうになるのを堪えていた。
しばらく沈黙が続き、りうらがそっと自分の腕を撫でた。そのとき、俺の目に入ったのは、彼の腕にあるリスカ跡だった。それは、新しい傷跡で、深く刻まれていた。
「……りうら、それ……」
その言葉がようやく出てくるまで、時間がかかった。りうらは、少し驚いたように自分の腕を見て、微笑みを浮かべた。
「最近、ちょっと……辛かったんだ。」
りうらの言葉に、胸が痛んだ。俺のせいだ。俺がこうやって壊れるたびに、彼もまた壊れていくのだ。りうらの辛さに気づかず、自分のことばかり考えていた。
その瞬間、りうらの表情が崩れ、涙が溢れた。彼が突然、俺に抱きつき、声をあげて泣き出す。俺は言葉も出せず、ただ彼の背中をさすり続けた。
「……りうら……」
俺の声は、届かなかった。でも、そんなことはどうでもよかった。
コメント
1件
うぇ!?好きすぎます!!!!フォロー失礼します!!