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涙の重み

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涙の重み

1 - 涙の重み

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2024年12月02日

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pixivの再掲です

垢→やゆよ @user_npdx4375




赤桃 病み



ないこSide

窓の外は、灰色の空が広がっている。曇り空の中で、冷たい風が窓をかすめているのがわかる。部屋の中は静かで、ただ、自分の呼吸の音だけが耳に響く。それすらも、まともにできていない。浅く、速い呼吸が胸の奥からひたすら込み上げてくる。

「……りうら、」

震える声で名前を呼んだ。視界がぼやけて、涙が頬を伝うのがわかる。もう何も見たくない、何も考えたくない。ただ、泣きたかった。

「ないくん…?」

優しい声が耳元で響く。りうらが、そっと近づいてきた。その声に応えることもできず、ただ堪えきれずに嗚咽が溢れた。涙が止まらない。喉の奥が詰まり、うまく呼吸ができない。過呼吸のように息を吸い込んでは吐き出す、それが一向に落ち着かない。

「大丈夫だよ、ないくん。俺がいるから。」

りうらの腕が、そっと自分の背中に回される。柔らかく、暖かいその手の感触は、いつもと変わらないはずなのに、今の自分にはそれすらも重荷に感じてしまう。

「……もう、ほっといて……」

言葉がやっと出てきたが、震える声に乗ったそれは、きっと無力な訴えに過ぎなかった。りうらが自分を放っておくはずがない、そうわかっていても、何もかもが嫌だった。



りうら Side

ないくんが泣き続けている。声にならない嗚咽が、部屋中に響き渡る。彼の過呼吸はすっかり馴染み深いもので、それが起こるたびに、俺は何をすべきかを考えるけど、答えはいつも同じだ。

「大丈夫、ないくん、落ち着いて……俺がいるから。」

俺の言葉は届いているのか、わからない。ないくんはさらに顔を歪め、涙を流し続けている。俺がそっと手を伸ばして、彼の肩を撫でると、さらに深く泣き崩れる。

もう何回目だろう、彼がこんな風に壊れてしまうのは。それでも、俺は離れることなんてできない。手を握りしめて、ないくんをしっかりと抱きしめる。涙に濡れた彼の頬に触れると、その冷たさが心に突き刺さる。

そんな時、ないくんがカッターを持ち出した。

「、…っ」

シュッ

そうして、彼の腕に切り傷が増えていく。

状況を急には理解できず、注意するのが遅れてしまった。

「、!?ないくん、今日は一旦休も、」

俺がそう言った瞬間、ないくんの体がびくりと反応した。彼の目が大きく見開かれ、パニックに陥る様子が明らかだった。

「やだっ、やだっ、休みたくない……!」

ないくんの声が掠れながらも強く響く。彼は拒否し続け、俺の言葉を聞こうとしない。俺も疲れていた。彼がこうやって壊れるたびに、俺も少しずつ疲弊していく。

「ないくん!」

つい、声を張り上げてしまった。ないくんは驚いたように目を見開き、怯えた顔で俺を見つめる。そして、突然、泣き崩れた。

「ぁ、ご、ごめ……っ」

その姿を見ると、俺は自分が何をしてしまったのか、すぐにわかった。泣き叫ぶないくんを前に、胸が締め付けられるようだった。

「ごめん、ないくん……俺が悪かった。」

言葉は空中に消えていくようで、ないくんは泣き疲れたのか、しばらくしてからようやく眠りについた。俺は静かに彼の頭を撫で、何も言わず、ただその存在を感じていた。



ないこ Side

次に目を覚ましたとき、りうらの手が自分の頭を撫でているのがわかった。優しい、その手の感触に、自分がどれほど救われているのかを改めて感じる。

「……ごめん、りうら……俺……」

謝罪の言葉が口を突いて出た。でも、りうらも謝る。

「俺こそごめん、ないくん。」

その言葉を聞いて、俺はかぶりを振る。違う、謝るのはお前じゃない。

「りうらは……謝らなくていいよ……悪いのは、俺だから。」

俺の声は震えていたが、真実を伝えたかった。りうらの優しさに甘えてしまう自分、そしてその優しさを重荷に感じてしまう自分が、何よりも許せなかった。

「そんなことないよ。」

りうらの声が優しく耳に届く。俺は何も言えず、ただ涙がまた溢れそうになるのを堪えていた。

しばらく沈黙が続き、りうらがそっと自分の腕を撫でた。そのとき、俺の目に入ったのは、彼の腕にあるリスカ跡だった。それは、新しい傷跡で、深く刻まれていた。

「……りうら、それ……」

その言葉がようやく出てくるまで、時間がかかった。りうらは、少し驚いたように自分の腕を見て、微笑みを浮かべた。

「最近、ちょっと……辛かったんだ。」

りうらの言葉に、胸が痛んだ。俺のせいだ。俺がこうやって壊れるたびに、彼もまた壊れていくのだ。りうらの辛さに気づかず、自分のことばかり考えていた。

その瞬間、りうらの表情が崩れ、涙が溢れた。彼が突然、俺に抱きつき、声をあげて泣き出す。俺は言葉も出せず、ただ彼の背中をさすり続けた。

「……りうら……」

俺の声は、届かなかった。でも、そんなことはどうでもよかった。

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コメント

1

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うぇ!?好きすぎます!!!!フォロー失礼します!!

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