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すちはみことを抱き上げたままインターホンの前に立つ。
ピンポーン
間もなくドアが開き、眠そうに伸びをしながらひまなつが顔を出す。
「遅い~、今来たん?」
しかし、ひまなつの目に飛び込んだのは――
小さな身体を胸に抱えたすちの姿。
「え、いつの間に子供できたん……?」
ひまなつの真顔に、すちは思わず手で頭を叩く。
「いたッ!」
みことはすちに抱きかかえられたまま、顔をすちの胸にうずめ、安心したように小さく「ん……」と声を漏らす。
「さあ、入ろうか」
リビングに入ると、らん、いるま、こさめは既に到着していて、くつろぎながら談笑していた。
しかし、みことの姿を見るなり、三人は一瞬言葉を止め、視線がすちに向く。
「……え、何があったんだ?」
「実は……」
らんが訊くと、すちは少し困った表情で今までの事を説明した。
「今は……みことを落ち着かせないと」
すちの腕の中では、みことが目をぱちぱちさせながら、ふるふると小さく震えている。
周囲の顔ぶれを見て、どうやらみことは覚えていないらしく、人見知り全開。
「いやぁぁぁっ!」
らんが手を伸ばすと、みことは大泣きして身をすちにぎゅっと預ける。
「だいじょうぶだよ、みこと」
すちは片腕でみことを支え、もう片方の手で背中をぽんぽんと叩きながら微笑む。
「ね、大丈夫。俺が守ってるから」
しかし、みことはまだ涙目でぐずる。
「いやぁぁぁだ!!」
「みこちゃん、こさめだよ~」
こさめがそっと手を伸ばして声をかけるも、みことはすちにぴったりくっついたまま、首を横に振る。
「すちがいい……!」
その言葉に、すちはつい苦笑する。
「もう……しょうがないなぁ」
小さな身体を抱えながら、すちはゆっくりとリビングの中央に座った。
みことはすちの胸に顔を埋めたまま、涙をぽろぽろ流す。
「ほら、みこと、大丈夫だよ。らんらんも、こさめちゃんも、いるまちゃんも、みんな優しい人たちだから」
「……ゃぁっ…!すちがいい……!」
その一言に、三人は苦笑しながらも頷くしかなかった。
「こりゃ完全にすちにロックオンされとるな」
ひまなつも呟きつつ、頭をかく。
すちは小さなみことを抱きしめたまま、やさしく髪をなでる。
「もう泣かなくていいから。ここは安全だよ、みこと」
みことはその胸の中で小さく息を吐き、ようやく少し落ち着きを取り戻した。
すちは腕の中で、涙目の幼い恋人を甘やかすように、ゆっくりと背中を撫で続けた。
――ひまなつの家に集まった大人たちの視線が、少しだけ温かく変わる瞬間だった。