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美咲の心は、智也との距離がどんどん縮まっていくことで、嬉しさと同時に少しの緊張感で満たされていた。だが、それ以上に感じていたのは、春菜のことを無意識に気にしている自分だった。春菜が明らかに元気をなくし、美咲と智也が一緒にいる時に、いつもよりも少し冷たい態度を見せることが増えていたからだ。
その日、学校が終わった後、智也から一通のメッセージが届いた。
「今日、少しだけ一緒に出かけようか?」
美咲はそのメッセージを見た瞬間、心臓がドキッとした。まさか、本当にデートのようなことをするなんて考えてもみなかったからだ。しかし、何度もメッセージを読み返しても、彼の意図は間違いなくその通りだった。
「うん、いいよ!」と返事をした美咲は、少しだけ照れくささを感じながらも、やり取りを終えた。美咲は自分の気持ちがまだ不安定であることを感じつつも、智也との時間を楽しみにしていた。
「待ち合わせ場所は駅前で、大丈夫?」と、智也からの次のメッセージ。
「うん、大丈夫!」と、再び返信した美咲は、時計を見ながら支度を始めた。普段と違って、少しだけおしゃれをしようと思い、学校の制服とは別に、シンプルだけど少し可愛らしいワンピースを選んだ。髪も少し巻いて、鏡の前で自分を確認すると、顔が赤くなっていくのを感じた。
春菜のことを思い浮かべる暇もなく、美咲は玄関を出た。春菜がどう思うか気にしつつも、自分の気持ちに素直に従おうと思った。
駅前で智也を見つけると、彼は少し驚いたような顔をして、美咲を見た。
「今日は、すごく可愛いね。」智也が微笑みながら言った。その笑顔に、美咲は心の中で小さく跳ねるような気持ちを感じた。
「ありがとう、智也くんもかっこいいよ。」と、少し照れくさそうに返すと、智也はにっこりと笑った。
「じゃあ、行こうか。」智也が美咲の前を歩きながら、提案してきた。美咲はうなずきながら、二人で並んで歩き出した。
最初は少しぎこちない会話が続いた。美咲は緊張していたし、智也も最初はどう接していいのかわからなかった様子だった。しかし、次第に二人は自然と話が弾んでいき、気づけば楽しい時間を過ごしていた。
「どこか行きたいところとかある?」と、智也が聞いた。
美咲は少し考えてから答えた。「うーん、特にないけど、智也くんと一緒にいるだけで楽しいから、どこでもいいよ。」
智也はその言葉に少し照れたように笑った。「じゃあ、ちょっとだけ遠くのカフェに行こうか。静かなところで話したいし。」
美咲はうなずきながら、「うん、行こう。」と言った。
カフェに着いた二人は、窓際の席に座った。静かな空間に、ほんのりとした照明が美咲と智也の顔を優しく照らしている。美咲はその雰囲気に包まれながら、智也と向き合って座ることに少しだけ胸が高鳴った。
「今日は、ありがとう。」美咲が先に言った。智也が少し驚いた顔をして、美咲を見た。
「ありがとうって、どうして?」智也が首をかしげる。
「だって、こんな風に一緒に出かけるなんて、夢みたいだったから。」美咲は素直に答えた。智也の表情が少し柔らかくなったのがわかる。
「そうか。俺も楽しいよ。」智也はにっこりと微笑んだ。
二人でケーキを食べながら、ささやかな会話を続けた。美咲は初めてのデートに少し緊張していたが、智也が優しくリードしてくれることで、徐々にリラックスしていった。時折、目が合うたびにドキドキした気持ちが湧き上がる。
その時、美咲の心の中で、ふと春菜のことが浮かんだ。彼女はどうしているのだろう? 春菜との友情を大切にしたい気持ちと、智也との関係を進展させたい気持ちが、少しだけ交錯した。
「でも、美咲、俺は本当に君とこうしていられて嬉しいよ。」智也が突然真剣な表情で言った。その言葉に、美咲は心の中で小さな喜びを感じた。
「私も、智也くんと一緒にいると、すごく幸せ。」美咲は素直に答えた。
二人の関係が少しずつ進展していることを、美咲は強く感じていた。しかし、その背後で、春菜の表情が心に重くのしかかっていることを、彼女はまだ知らなかった。