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『キスのための、五分間。』
(場所:朝、二人の自宅)
izw『……わー、ごめんkwmr! あと1分、あと1分だけ待って! 資料がどこ行ったか分かんなくなっちゃって……っ』
バタバタとリビングを駆け回り、棚の奥まで手を突っ込んでいるizwを、玄関先でカバンを持ったkwmrが、ぼんやりと眺めている。
急かすわけでもなく、かといって「先に行くね」と声をかける風でもない。彼はただ、玄関のたたきに立って、izwの騒がしい準備の音を静かに聞いていた。
kwmr『……いいよ。ゆっくり探しなよ。その資料、昨日izwがキッチンでコーヒー淹れてた時に置いてなかったっけ? 冷蔵庫の横とか』
izw『あ、あった! さすがkwmr、よく見てんなぁ……助かる……っ!』
カバンに資料を押し込んで、ネクタイを締めようと苦戦しているizwを横目に、kwmrはそっとスマホを取り出した。画面を眺めるふりをしながら、空いた方の手で自分のネクタイに指をかけ、キュッと結び目を整え直す。
izw(……あ、またやってる)
チラリと見ると、kwmrはもう準備万端のはずなのに、何度もネクタイを触ったり、玄関の鏡を見て前髪を少し直したり、靴のつま先で床をトントンと叩いて揃え直したりしている。
izwが準備を終えて自分の方へ来るのを、彼はそうやって、ごく自然に待ってくれているのだ。
izw『よし、お待たせ! ……悪い、今日も待たせちゃったね』
izwがようやく玄関までたどり着き、肩で息をしながら靴を履くと、kwmrはようやくスマホをしまい、少しだけ目を細めてizwを見た。
kwmr『ううん。僕も今、ちょうど気になってたニュースを読み終わったところだから。……全然、待ってないよ』
izw『ほんとに? ……絶対、俺が来るの待ってたでしょ』
kwmr『……まあ、一人で出るのもなんだか落ち着かないからね。izwと一緒に家を出るのが、僕の中では普通になってるんだと思う』
そう言って、照れる風でもなく、さらりと当たり前のこととして口にする。 izwが顔を覗き込むと、kwmrは「そうだね」と短く頷いてから、吸い寄せられるような、あまりにも自然な動作で一歩、距離を詰めた。
kwmr『……ん。行ってくるね』
チュ、と柔らかな音が玄関に響く。 毎日欠かさない、彼なりの「行ってきます」の挨拶。
一度離れた唇が、名残惜しそうにもう一度だけizwの唇を軽く掠める。こういうところのkwmrは、普段の落ち着きに反して、少しだけ強引だ。
izw『うん、行ってらっしゃい。……ねぇ、kwmr。これ、もし俺がもっと遅くなったら、どうしてた?』
kwmr『……どうだろうね。でも、きっとそのまま待ってたと思うよ。izwを置いて一人で家を出ると、なんだか大事なものを忘れちゃったみたいな気分で一日を過ごすことになるから。それはちょっと、嫌だしね』
izw『……そっか。……俺も、kwmrがいないと困るわ』
ふわりと柔らかく微笑むと、kwmrは満足げに扉を開けて外へ出た。 その後ろ姿を見送りながら、izwは自分のネクタイを整え直す。
izw(「嫌だしね」なんて……本当、素直じゃないんだから)