(短編ですー)
「俺は山姥切のこと好きなのだろうか」
「は?」
「山姥切を見てると胸が痛い。それを加州に行ったら恋だと言われた」
いやいやいや。お前が?俺に?恋だと?しかもそれを俺に話すのか??
巫山戯るのも大概にしろと言おうとしたが呆然とした。表情がガチだった。
え、、?本当に?
「俺は本科の事が好き、、なんだと思う。でもそれだけで他は望んでいない。だからこれは無視してくれ」
それじゃ、俺は出陣だから。と言って俺の返事を待たず行ってしまった。
お前俺に告白しといて返事は聞かず無視してくれって俺をなんだと思ってるんだ。
そもそも山姥切国広を好きなのか?と聞かれたら別にそういう好きは持ってないと答える。というより嫌われてると思っていたからだ。
俺と話せば無表情だし態度も冷たい。
なのに他の刀と話せばあいつは笑う。
俺は嫌われてるものだと分かったのが数ヶ月前だ。なのに突然好きと告白された俺の身にもなってくれ。
別に俺は偽物くんの事を嫌ってはいない。号の件は憎いし恨んでもいる。だが号の事を外せば恨んでもない。なんなら愛しいと思っているのだ。
それはそれ。これはこれと案外分けてるのがこの俺だ。
(このタイプの俺は中々いないと思うが)
だからこそ、俺は仲良くしたいと思っていたのだ。
そして告白してきた。俺が今まで考えてきた事が180度上回った。そこで考えた。俺は偽物くんのこと好きなのかと。そもそも好きとは関係なしに俺は偽物くんの事知らないなと。
まずは知らないといけないのではないか?
それで告白の件は知ってから考えればいい話だ。
そう考え、今日、偽物くんと万屋に来ている。まあ強引に連れてきたが案外楽しめてるようで良かった。
「本科」
「ん?」
振り向けば偽物くんは何かを持っていて、俺と見比べていた。
それは….青い硝子?
「嗚呼やはりお前の色だ」
ふわりと言うべきか。優しく微笑んだ。初めて俺に笑った。
遠くから眺めていたその笑顔は友に向けるものではなく初めて目にする笑顔だった。
「お前、そんな顔できたのか」
呆然としながら言う俺に目の前のコイツは何を言ってるんだ?というような顔で言う。
「そもそも俺はこんな顔だが」
「俺と話すときはいつも無表情だっただろう?」
さっきみたいな顔なんて全然しなかったはずだ。
してもそれは俺に向けてではない。
「それ、、は。」
「勿体ぶらず言えば良いだろう。何をそんなに恐れているのかな?」
そうだ。今がチャンスだ。今は二人だけなのだから勿体ぶらず言えばいい。
「お前といるとすごい、なんというか、心臓がバクバクして口から出そうになるんだ」
それを抑えようとしてたんだ。もし気を悪くするさせたらすまない。
言い終えた本人は顔を真っ赤にさせて、プイっと顔をそらした。
これ以上何も言わないでくれというような雰囲気が伝わってくる。
「は?え、じゃあ。いつも表情筋が固かったのは抑えるのに夢中になってたと….?」
「………そう言っているんだが」
俺の悩んでた時間を返してくれ。とは考えるすきはなく、今目の前にいる山姥切国広を見ていた。
顔を真っ赤にさせて、チラチラとこちらを見ている偽物くん。
嗚呼そうか。つまりお前は俺を嫌ってるわけではなくて。抑えていたんだな。
それを理解すれば何故か目の前にいる偽物くんが可愛く見えてきた。
今でも真っ赤にさせてる”俺の写し”
告白の返事はどうしようか。
嗚呼でももう少しばかりこの状況を楽しみたい。
返事をしたときお前はどういった顔をするのだろう。
それを想像したらふっと笑みがでてしまった。
「本科?」
「いや、なんでもないよ」
さあ、行こうか。そう言って足を進める。
でもきっとお前は今と同じように真っ赤にさせて驚くのだろうね。
それが楽しみだ。
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