綺麗な青空…なんてものは私の世界には無かった。それは残酷な青空だった
私はいつものように教室へ1歩踏み出すと、上から水バケツが降ってきた
「…」
私は虐められている
教室には私の居場所なんてなかった
教室には残酷と冷たい視線がやってくる
「…おはよ」
私がその言葉を発しても、返してくれる人はいなかった
…1人を除いて
「おはよう…彗」
…彼は日向創くん
私と同じ扱いを受けている仲間だ
…この際、仲間と言っていいのか分からない
「…おはよう日向くん」
声なんてまともに出せなかった
だけど、足だけは動けた
私はゆっくりと自分の席に向かい、椅子に座ると同時にチャイムがなった
…私はそこからずっと何も考えずに授業を受けていた
私はハッとし、時計の針を見るともうすぐで昼休みの時間だった
私は立ち上がり、屋上へと向かった
誰も友達なんて居ない私にとっては屋上なんて居心地が悪い
風の音に混じって、遠くの声が聞こえてくる
「…うるさいな」
そんなことを呟いても誰も聞いてはくれない
「…はは」
「私はいらないのかな…」
あの時のみんななら助けてくれたのかな?
そんなことを考えながら、空を見上げると、そんなことを消してしまいそうなほど陽が強かった
「…なぁ彗、大丈夫か?」
「…日向くん?」
「私は大丈夫だよ」
「私はここにずっといるから」
私は何も考えずに、空を見上げていた
「いや、そういう事じゃなくてな…」
「狛枝が教室に来ててな…お前のことを 探してるんだよ」
…狛枝?そんな人知らないけど…
「狛枝…?」
「ほら、髪の毛が白ワカメみたいなやつ!」
「んー…記憶にないなー…」
「でも、とりあえず向かってみるよ〜」
「見たら思い出すかもだし」
私はゆっくり立ち上がり、とりあえず教室へ向かうことを決めた
私は屋上から教室への道を進み、教室の近くに来ると、恐らく私のことを探している人物を見つけた
「本当に居ないの…?嘘じゃなくて?」
「ほ、本当に居ないんですよ!!」
「あいつ、勝手にどっか行くんすよ!!」
…どうやら喧嘩をしているようだった
口喧嘩では済まなさそうなほど、乱暴になっていた
「…私のことを探してるんですか」
「…君は彗サンじゃないでしょ?ほら、どいたどいた 」
…どうやら別の方を探しているようだった
私と同姓同名の人なんていなかったはずなんだけど…
「…彗サンって本当に自由気ままだよね…日向くんにも伝えたけどまだ帰ってこないし…」
…何をしてもダメそうだった
「ねぇ…本当にその特徴で合ってるの?」
「合ってますよ!!白髪ショートで目が青い子で…」
…なるほど。イメチェン前の私の特徴しか知らないのか
それなら…
「…白髪ショートで青目ですか…幻想的で綺麗ですね」
「…君はなんなの?彗サンのこと知らないくせに…」
「…1番知ってますよ?」
「だって本人ですから」
私はそうやって、カバンに隠していた学園ファイルを見せた
「私は彗です」
「それを証明出来るのが学園ファイルです」
狛枝さんは信じられない顔をしながら、学園ファイルをじっくりと見ていた
「…信じられないって顔してますね」
「そりゃそうですよね…姿まるっきり変わってますし」
黒髪ロング…赤目…何もかも違った
全てが反転しているから
「…いやいや君が彗サンなんてありえないよ」
「なんで同じクラスの子が彗サンの特徴を覚えてないのさ…?」
「なんで、ですか…そうですね」
「日向くん以外のみんなの記憶を改ざんしたことが原因ですかね」
「だからこそ、日向くんは一目散に探しに行ったのでは?」
「今の私を知っているのは日向くんだけなので」
「それに、今の私の名前は彗ではないですしね…」
私はそう言って周りを見ると、文句を言っているようだった
「…お前は彗じゃないだろ!」
「嘘までついて狛枝さんに近づきたいの…?」
「冷…お前頭イカれてるんじゃねぇの?」
「冷!お前後でちょっとこい!」
…冷、それが今の私の名前
「…つまり今の君は彗サンではなくて…冷サンなんだね…?」
冷…これは日向くんがつけてくれた名前だから大切にしている
野次馬共の声が耳鳴りになるまでの時間は掛からなかった
それはとてもうるさくて、とてもうざくて、とても絶望的だった
「…それじゃ、私はここで」
「…待って」
私が去ろうとした時、狛枝さんが袖を掴んできた
「まだ要件は終わってないよ」
「…それが終わったら帰っていいですか」
「もちろんいいさ」
私は気だるそうにしながら、要件を聞くことにした
「キミって、学園からスカウトされてたよね?」
「なのになんで予備学科にいるの?」
…こんなところ?
私にとってはここが1番楽しいのに…
「…ここに居るのが楽しいからですかね」
「でも、今のキミはいじめられてるんでしょ?」
「本科の方がもっと楽しいと思うんだけど…」
「…彗は元々本科にいましたよ」
「だけど、本科に居ると嫌なことが増えたからここに来たんです」
「それで、姿を変えて私がここにいるんです」
私が本科にいない理由は他にもあるけど…これ以上は言わないでおこう
「…本科が嫌だったの?」
「本科自体は楽しかったですよ」
「ただ、本科に居ると嫌なことが増えただけです」
「その理由を聞くことって…」
「…今はできませんよ」
「…ありがとう、こんなボクの為に足を止めちゃって… 」
狛枝さんはそう言って素早く、去っていった
「…別に邪魔とか思ってないのに」
私は教室へと戻り、椅子に座って待っていた
私がボーッとしていると肩を叩かれた
「冷、狛枝との話は終わったのか?」
「終わったよ」
「本科に戻らなくていいのかってさ」
「…そういやお前、元々はスカウトされてたんだっけか」
「あはは…俺なんて憧れてたなんて理由でいるもんな…お前とは違うし…」
日向くんはそう言って俯いていた
「…そんなことないと思うよ」
「憧れなんてものはものすごくいいものだよ」
「だって私は───」
と、言い切る前にチャイムが鳴り、私達は静かになった
「…」
「…また、話してくれるか?」
「…もちろん」
コメント
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やっぱりいいね。 ところで、 最後のシーン。 「だって私はーーー」 いったい冷さんは この後 何を言おうとしたんですか? 教えて!
感動! これこそ続きのストーリーあるよね?!