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コメント
2件
良きaotb… 言葉を送る系のお話っていいですよね👍
ロスサントスのとある町外れ、薄暗い路地裏にそのバーはあった。
階段を下りて木製のドアを開けると、ムードを感じるBGMと芳醇な酒の匂いが体を通り抜けていく。
こじんまりとした店内にはほぼカウンターと椅子しかなく、淡い照明に照らされたバックバーが良い雰囲気を醸し出していた。
青井らだおは入店してすぐ「あ、あたりの店っぽいな」と思った。
度重なる事件、後輩がロケランをブッパしたり車を殴ったりとしてくれたため散々な1日を過ごし、青井の脳は限界に近かった。
ふははやっぱりおれのせんすはさいこうだぜとおかしくなったテンションで店内を見回していると、マスターらしき人から「いらっしゃいませ」と声をかけられた。
誘われるがまま椅子に座り、大きな溜め息をつく。
「っはぁぁぁぁ”…」
『っは笑お客さん、お疲れですか?』
「え…?」
あまりにも疲れすぎて気が付かなかった。
そんな展開ある?と聞きたくなるが、目の前のマスターは自分の後輩であり、想い人でもあるつぼ浦だった。
『今日は街が騒がしかったっすね』
「あは…そっすね…」
マズイ。いやマズイことはないんだがマズイ。
幸い警察のベストは脱ぎヘルメットも外していたためバレることは無いが、普段なら絶対見ることは無いであろうつぼ浦のシャツにベスト、おまけに眼鏡というトリプルコンボで青井はドギマギしていた。
『なんか飲みます?』
「あー…じゃあ…マスターのお任せで」
『かしこまりました…ふ笑』
「どしたんすか?」
『いや笑普段マスターとか言われることないから面白くなっちまって笑俺警察官やってるんだぜ! 』
「…警察の方なんすねー なんでマスターやってるんすか?」
『ここのマスターに1日でいいから!って頼まれちまってよォ、断れねぇからやってるんすよ』
つぼ浦匠という男は普段散々暴れ回ってこちらを困らせているが、市民のお願いをしっかり聞き真摯に対応する熱い男だ。
青井はつぼ浦のそんなところが好きだった。
『ん…出来たぜ。美味いかは分からんが飲んでくだせぇ 』
「あざーす」
フローズン・マルガリータが目の前にコトリと置かれる。
口に入れるとライムの酸味でスッキリとしながらもほのかに甘みが感じられる味わいで、シャーベット状のそれが疲れた体に染みた。
『俺からの労いっす』
「あぁ…カクテル言葉?洒落たことすんね」
確かカクテル言葉は【元気を出して】。
以外にもロマンティックなことをしてくるんだ、と思いながら次は何を頼もうか考える。
「じゃあ次はアプリコットフィズをマスターに」
マスターというものは客から自分が作ったものを貰うことがあるのか。
それとも目の前の客がおかしいのか。
『マスターにって…俺に?』
「そーそー」
ふわりと笑い早く作れと視線で促してくる客を訝しみながら言われた通り作る。
アプリコットって確か杏だよな、などと頭の隅で考えながら客を観察する。
整った色白の顔で、パッと見ると大学生のようだが言動からは大人の余裕が感じられる。目の下の濃い隈だけが綺麗な顔の中で浮いている存在だった。
「んー…じゃあ俺にはXYZを」
『自分も飲むのかよ…』
マスターに教えてもらった通りに手際よく作っていく。
「できた?乾杯しよ乾杯」
『いいっすけど…俺も飲んでいいのかこれ?』
「かんぱーい!」
チン、とグラス同士を当て乾杯をする。
そのままグラスの中身を飲むと炭酸水の清涼感とアプリコットリキュールのフルーティーな甘さが吹き抜けていく。
「んふ笑ありがとぉね」
『あ?なにがだ?』
「素敵な言葉貰っちゃった」
なんの事だかよくわからなかったが 客は酔っているのかふわふわにこにことするだけだった。
抑揚がなく平坦でやる気のない喋り方。
どこかで聞いたのとがあるような無いような気がするが人の事は覚えられない質なので仕方がない。
「あーおいしかった。満足したし帰ろっかなー」
そう言いながらも机に伏して煙草に火をつける。
『帰る気ねぇじゃないっすか』
「…まだ気づかないんだ」
『あ?っう”わ?!』
客から顔面に煙草の煙を吹きかけられ、思わずむせる。
しかし怒りの感情も一瞬で吹き飛んだ。
嗅いだことのある重い煙草の匂い。この銘柄を吸っているのは一人しかいない。記憶がパズルのピースがはまるように継ぎ合わされいく。
『なっ?!あっ…アンタ…!!』
「明日、返事待ってるねー」
気が付くと客…もとい青井らだおはドアに手をかけており、一言だけ残して去っていってしまった。
呼び止めて追いかけようにも口は言葉を発しようにも声が出ず、足は言うことを聞かず地面に張り付いたように動かなかった。
残されたつぼ浦は全身が熱くなる感覚に襲われながら、どうしようも無い恥ずかしさを溜息に込めて吐き出した。
『くそ…返事なんて…アンタが頼んだのと一緒だっての…』
贈られた言葉が相手次第でこんなにも変わるなんて。
カウンターの上、空になったグラスが想いの行先を見つめていた。
いやぁぁぁぁ…終わり方…むずい…
語彙力が欲しい…日本語難しいよ…
初心者がオシャなことしようと背伸びしているのを生暖かい目でみてくれると嬉しいです。
アプリコットフィズのカクテル言葉
・・・【振り向いてください】
XYZのカクテル言葉
・・・【永遠にあなたのもの】