テラーノベル
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フェスでの演奏を終えた後も、歓声と拍手の余韻が耳に残っていた。ステージを降りた佳奈は、まだ心臓の鼓動が収まらず、全身が熱で包まれているようだった。
『なぁ、見たか?あの景色』
良規が青いギターを抱えたまま、興奮気味に笑った。
「うん……忘れられない」
二人は楽屋を抜け、夜風に当たりに外へ出た。
フェスの会場の片隅、星空が広がっていた。
しばらく無言で空を見上げていた良規が、ふと口を開いた。
『俺な……最初に、佳奈の声を聴いたとき、ホンマに衝撃やった。ギターだけじゃ届かへん場所に、佳奈の歌声が連れてってくれる。だから……』
言葉を切り、こちらを見つめる。
その瞳は真剣で、いつもの照れた笑顔とは違っていた。
『これからも、一緒に歌ってほしい。音楽も……それから……』
一拍置いて、かすかに息を吸う。
『佳奈の事が好きや』
胸が大きく鳴った。
予感していたのに、いざ言葉で聞くと、心の奥が震えて涙がこぼれそうになる。
「……私も。良規のギターがあるから、私は歌える。良規が好き」
言葉が溢れ出すと同時に、夜風が優しく吹いた。
二人の距離が自然と近づき、肩が触れ合う。
その瞬間、遠くでまだ鳴り響くフェスの音が、祝福のように感じられた。
青いギターと歌声。
それは音楽のためだけじゃなく、二人の心を結ぶハーモニーだった。
“これからも、ずっと一緒に”
重ねた約束は、恋と夢を同じ旋律で奏でていく。
コメント
1件
いや凄すぎます!!感動……(T ^ T)