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「…紬ちゃん、入ってもいいかな。」
「どうぞ。」
カーテンを開けると、申し訳なさそうな顔をした先生が入ってきた。
「あのね、紬ちゃんにちょっとだけ悪いお話があるの。」
「…なんですか。」
「今まで、入院頑張ってきたと思うんだけど、もう二週間入院することになっちゃって。」
「また、移動ですか、?」
「うん、、ごめんね。」
「次は右胸のところに菌が行っちゃって、最近咳酷かったでしょ。」
「早めに見つけてあげたかったんだけど、二回目だよね。ごめんなさい。」
深々と頭を下げ、こちらを心配そうに見てきた。
また、? またなの? 酷いよ。
「全然、大丈夫です。」
「今は楽です。」
「そっか、よかった。」
「あと、これから個室になるからね。」
個室、、やった。
菌が移るのも、案外悪くないかも、、なんちゃって。
「一人になっちゃうけど、大丈夫?」
「一人の方が落ち着くので、大丈夫です。」
一人になっちゃうって、反対側におばあさんが居るだけだし。
ほぼリハビリで外行ってたみたいだから今も一人のようなものだよ。大袈裟すぎ。
「明日は朝、お母さんがいらっしゃるみたいだから。」
「話聞いてもらってね。」
「は ~ い」
「じゃあ、準備できたらナースコール呼んでね。別の人が来てくれるから。」
「わかりました。」
「ふふ、余裕だね。」
「慣れてるだけです。」
「そっか、紬ちゃんは強い子だなぁ。」
「きっと治るよ。治してみせる。」
「…お願いします。」
あまり力が強くないから、とお母さんに買ってもらった移動式のバックに荷物を詰める。
これとも何年の付き合いだろうか。少なくとも五年は経ってるな。
短時間立っているだけで足が震え、歩けなくなる。
五分しかペンを持っていないのに、手に力が入らなくなる。
握る力が特に弱すぎる。細かいものなら更にだ。
最近はもっと弱くなってる気がする。ご飯だって、、いっぱい食べたのなんていつだったっけな。
その代わりにメンタルが強い。入院歴が長いのも、理由の一つだろう。
はぁ、、もう無理。看護師さん呼ぼ。
「はぁい。」
「すいません。荷物終わってないんですけど、、」
「手伝って欲しくて。」
「いいよ。よくここまでできたね。」
「偉いぞぉ。」
「…はは、」
『偉い』が一番困る。
別に偉くないです。普通の子ならもっとできる。それが当たり前なのに。
すると、察したように言った。
「当たり前なんて無いからね。普通なんてものも無い。」
「自分に合わせることが大切だから。」
「そう、、、ですよね。」
朝、先生が言っていた通りお母さんが来た。
「おはよう。ごめんね、まだ眠かったでしょ。」
「ん ~ ん。」
「そう。お母さん、これから仕事だから、あまり話は聞いてあげられないんだけど、、」
「いいよ別に。特に変わった事もないし。」
「なら、よかったわ。困ってる事とか、欲しい物とかある?」
「いつもの買ってきてほしい。」
「うん、わかった。夜また補充しておくからね。」
「うん。ありがとう。行ってらっしゃい。」
「行ってきます。じゃあね。」
「ばいばい。」
お母さんとはあまり話さない。いや、話したくない。
心配かけたくないし、これ以上迷惑だってかけられないから。
毎回、入院だの手術だの沢山お金がかかっているはずなのに。もう辛いはずなのに。
いつも笑顔を見せる。大丈夫だよって。
でも知ってる。部屋を出て行く時にはいつも笑顔が消えてて、頬も痩せこけてきてる。
ただ単にご飯をあまり食べれていないのと、過重労働だろう。「大変」の二文字じゃ、到底例えられないくらいの。
このままじゃお母さんまで病気になっちゃうよ。やだよ、そんなの。
もっと食べて。もっと休んで。
私はもう、、いいから、、、