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4 ◇断罪
翌朝遅くに起きてきた夫に、ブランチのあと、話したいことがあるので時間を
とってほしいとお願いした。
「へぇ~、珍しいね。なんだろう? もしかして、何か高額な買い物のおねだりだったりして。
い~よ、毎日美味しくて健康に良い食事を作ってくれる
奥様のお願いは何でもOKしちゃうぞぉ~」
「食事が終わったらすぐに飲めるようにコーヒーを淹れておくわね」
「食後のコーヒー、いいね」
夫は気がついているだろうか?
今日に限り、いつもの休日の日よりは丁寧にヘアースタイルも整え、外出用の
メイクを施し、フェミニンに装っている妻のことを。
馴染の家族に対する装いではなく、家族になる前のひとりの男性として
夫に対峙しようとしている女のことを。
「で、おねだりのモノって何?」
「おねだりならよかったけれど……そうじゃなくて、あなたへの断罪?」
「怖いこと言うよね。その言葉の意味知ってて言ってんの?
ひまりちゃん、頼みますよ~」
夫はおどけて言った。
いつまで余裕でいられるのかしら……。
「10日ほど前に、たぶん女性だと思うけどDMもらった」
「へぇ~」
「あなたの知ってる人だと思う」
夫の眉がわずかに動いた。
「誰?」
「名乗らなかったから、氏名は分からない」
「何だ、誰か分からないのか。気味が悪いね。
で、なんて言ってきてるの?」
「あなたが、不倫してるって。証拠の画像付きでね。
不倫なんてしてないって、言い逃れできない証拠付き」
私の放った『言い逃れできない証拠付き』というのを聞いて
夫の顔が蒼白になる。
人間のこういう時の顔なんて、一生のうちでそうそう拝めるものじゃないけど
見たくはなかった。
「私は彼女の名前が分からないけど、あなたなら分かるでしょ?
彼女の名前。どうして彼女と不倫するようになったのか経緯を話してほしい」
5 ◇告白されて舞い上がるぅ~
夫の話によると……相手の女性は、夫と同じ会社にいる人らしい。
ちょうど夫が私との結婚が決まり、周囲に結婚するという話をカミングアウトした
そのあとで、そういう関係になったとのこと。
まだ挙式の4か月も前のことで、会社からではなく同僚たちの好意からお祝いしたいと
いうことで飲み会が開かれ──
二次会まで残っていたその女性から『前からずっと好きだった』と打ち明けられた
そうで、その告白を聞き、夫は我を失くしてしまったという。
我を失くしたと聞き、私はその女性がどんな人なのか夫に問い詰めた。
教えてくれないなら、どんな人なのか会社まで見に行くからと脅して。
それで仕方なく差し出して来た滉星のスマホに取り込んでいた彼女の画像で、
私は彼女がどんな風な女性なのかを知った。
見た瞬間『負けた~、こりゃあ駄目だわ』と思った。
その女性は美し過ぎた。勝てないっ。
その女性は社内で誰もが狙うほどの美人さんらしい。
そりゃあそうでしょ。同性から見ても魅力的だもの。
6 ◇やるせないったらありゃしない
だけど、結婚前から付き合っていただなんて……。
やるせないったらありゃしない。
「ね、その女性いつからあなたと同じ会社にいるの?
私と付き合う前からいたの? それともあと?」
「え~っと、君と付き合い始めて1年後ぐらいだったのかな、
異動で他部署からきて同じ部になった」
「その頃から、いいなって思ってた?」
「……」
「正直に言って! どういう気持ちで不倫したの? 」
「きれいな女性だなとは思ってたけど、付き合うなんてことは……
ぜんぜん」
「それは、彼女が高嶺の華だったから、とか」
「……」
夫の反応を見ていると図星のようだ。
そっか、そっか、そんな美人が自分のことをよもや好いてくれてるだなんて考えても
みなくて、言い寄られた時にはきっと舞い上がっただろうし、それと共に私のことが
足枷になったことだろう。
「滉星くんさ、逆にさぁ、まだ籍も入れてなかったんだからその時に好きな
女性ができたから別れたいって話してくれれば良かったのに。
酷いわ、好きな人と付き合いながら私と結婚するなんてあんまりだよ」
7 ◇奪う気満々の行為
「ごめん。好きだって告白されて舞い上がってしまった。
それで、このままじゃぁ駄目だ、別れないとって思ったんだけど……。
自分はもうすぐ結婚する身だし、だからこのままってわけにもいかないから
もうこれきりということでって、別れ話をしたんだ。
だけど、石田さんから、縋られてしまって。
『結婚してからも時々でいいから会ってほしい』って。
『結婚してくれなんて言わないし、奥さんからあなたを奪おうなんて
思ってない』って……」
酷い女性。
奪おうと思わないって、嘘ばっかりじゃない。
もうすでに結婚前から滉星のこと、狙い定めてこうして奪ってるじゃない。
滉星に裏切らせてるじゃない、私のこと。
自分から結婚前の男に告白すること自体奪う気満々の行為でしょ?
◇ ◇ ◇ ◇
「俺も自分が一番驚いてる。
浮気や不倫なんてそういうことは自分には縁のない世界のことだと
思ってきたから。
告白された時も『えっ、俺? なんで俺? しかも結婚表明しているのに』
って、不思議でしようがなかった」
「滉星くん、彼女からの告白が私と交際する前ならよかったのにね。
石田さんの異動がもっと早くにあれば、きっとあなたは私なんかに
告白してなかったんじゃないかしら……うんそう、なかったはずよ。
あなたはたぶん、すごく困ったのよね。
彼女のような高嶺の華によもや慕われることなどあるはずないと思っていたのが、
そのよもやが現実となり辛かったよね。
漬物石のような重しの私の存在が……。
ごめんね、とっても重たいヤツで。
でも大丈夫よ。
今からでも遅くないわ。
私が身を引けばまぁ~るく収まるじゃない。
好き合ってる人同士の気持ちを引き裂いたりする趣味は私にはないので安心して。
離婚してあげるから……その高嶺の華と結婚すればいいんじゃないっ?」
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ライ
79
#異世界転移
花月夜れん
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まくら
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