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ライ
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#異世界転移
花月夜れん
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まくら
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8 ◇ちゃんと別れるから……
「待って! 石田さんとのことは謝るから、ひまり、そんなこと
言わないでほしい。ちゃんと石田さんとは別れるから」
「私、2番目の女にはなりたくない。
あなたも変なところで取り繕ろわずに自分の気持ちに正直になればいいのよ。
しばらくは会社に居ずらいかもしれないけど、そんなの大丈夫だから。
人の噂も七十五日って昔の人は言ってたかもしれないけど、今は毎日が
スピィーディーに過ぎて行く時代なんだから、その半分くらいで皆忘れるわよ。
妻の私がそれでまぁ~るくおさめてあげるって言ってるんだから
是非ともそうすれば?」
「いやいや、待ってよ、ひまり。
俺、ひまりと別れるなんてこと一度も考えたことないから」
「滉星ったら最後までいい人ぶっちゃって。
そんなに気を使うことないのに、ふふっ」
「違う。本心からだよ。約束な、離婚はしないから」
そう言うや否や、滉星はスマホを取り出し電話しはじめる。
私は急に何してるんだろうって、ぼんやり眺めてた。
『何が始まるのだろう。誰に……えっ、まさか』
◇ ◇ ◇ ◇
「もしもし、日比野です。
突然だけど妻に僕たちのこと知られてしまった。
だからもうこういう関係じゃいられないので今日で石田さんとのことは
思い出にする……思い出にします。
いままでありがとうございました」
石田さんって人がどういう反応だったのか、滉星はそれっきり
一方的に話をすると電話を切ってしまった。
9 ◇今更だよ
『滉星、それで禊を済ませたと思ってるんだろうけど、もう遅いよ。
今更だよ。
何故、今断ち切れるのならもっと早くに、私に知れる前に
断ち切ってくれなかったのか』
などと思うけど、きっとそれは違うのだろう。
6か月彼女と付き合ったからこそ、断ち切れるのかもしれないと
私は漠然とこの時そう思った。
これが1か月早かったなら、夫は断ち切れなかったかも。
考えても過ぎてしまったことだから、意味ないと思うけど
拉致もないことを考えてしまう。
夫から彼女とのことを聞き出した私は、物わかりの良い女を演じた。
演じた?
そうとも言えないか……。
半分本心でもあったから。
夫を相手の女、石田とかいう人と半分こに分け合うなんて気持ち悪過ぎる。
婚姻関係を結んだあの日に、私たちは困難にもめげず互いに助け合い、
生涯仲睦まじく暮らしていくことを、誓ったのではなかったか。
祝福してくれた大勢の人たちの前で、夫婦として添い遂げるための
『誓の言葉』を……
『それぞれの決意』を……
ふたりの言葉で紡いだというのに。
私との神聖な誓いを破ったこの男とこの先、何を頼りに……
何を道しるべに……生きていけばいいというのか。
あ~、全くまったくもって生きていける気がしないー。
10 ◇石田唯という女
さて、日比野ひまりの夫である滉星の不倫相手である石田唯という女だが、
滉星がひまりに
『え~っと、君と付き合い始めて1年後ぐらいだったのかな、異動で
大阪からきて同じ部になった』
と言っていたように彼女、元々は本社に勤めていた。
だから、それまでの石田の所業について滉星はまるっきり知らなかったみたい
なのだが、本社に友人でもいれば少しは彼女の過去がどういうものか知れたか
もしれず、また知っていたなら彼女とのお遊びには乗らなかった可能性もあった
ことだろう。
◇ ◇ ◇ ◇
新卒で入社した大阪本社で石田は1年経った頃、他部署の同期入社で技術職の
同い年の大石直也と付き合うようになる。
付き合って3年目頃から結婚の話が出て4年目の春頃、両家顔合わせも済ませ
婚約の運びとなっていた。
すでに彼らふたり、社内では交際を始めた頃から自分たちの仲をオープンに
していた。
そのため、きれいな顔立ちと共に若くてスタイル抜群の唯だったが、流石に
ふたりの間に割って入ってこようとする無粋な者はいなかった。
そして、何より唯自身が直也に対して一途だった。
だが、そこそこ長い付き合いの上に婚約もしたことなどから、知らず知らずの
うちに彼女の心に隙ができてしまった。
そして、そのような倦怠期に直属の上司が転勤して行き、代わりの新しい上司が
着任して来たのである。
以前いた上司と年の頃はさほど差はないのだが、地味な上司の後にやって来た
上司はほどよく色気のある上司で、唯は瞬く間にその既婚者の持つ色気と毒気に
やられてしまい、何ということか上司との不倫を始めてしまうのだった。
しかし、色気に惑わされたとはいえ、婚約者のいる身。
最初は物珍しさのただの浮気心で、遊びに満足すれば唯はちゃんと大石とは
結婚するつもりでいた。
11 ◇関係を解消したい上司と解消したくない女
浮気相手が直属の上司だったこともあり、LINEで連絡をとったりしてというような
ことをして痕跡を残すようなこともなく、そしてまた休日に会ってデートをしたり
することもなかったので、唯はふたりのことは絶対周囲にバレないと思っていた。
渡辺は着任したばかりで、つまみ食いする相手の石田唯にまさかの社内に
婚約者がいるなどとは知らずにいたわけだが、流石に6か月を過ぎた頃
そのことをどこからか知ることになる。
大石の存在を知った渡辺はすぐさま、石田にもう付き合いをやめようと
提案する。
石田は自分が既婚者だと知った上で誘いに応じてきたため、彼女も
所詮自分とのことは遊びだろうと渡辺は考えていた。
だが、恋人の存在を知った自分が付き合うのはもうやめた方がいいと提言した
にも関わらず石田は止めたくないと言う。
いつの間にか渡辺に心を持っていかれた石田唯は、結婚するまではこの関係を
続けたいと訴えるのだった。
渡辺にしてみれば、若くてきれいな子だからつまみ食い程度に手を出したまでで、
6か月も遊べたことだし、もしも恋人の大石に知られたら同じ会社の人間なので
面倒なことになるのは目に見えている。
自分には40才手前とはいえ、キャリアウーマンでしっかり者の美人妻がいる。
自身、浮気者ではあるが、自分の妻と別れる気など毛頭ない。
なので、先で揉めることはしたくないのが本音。
それに浮気相手は自分の部下で、その恋人も部署は違えど同じ会社の人間なのだ。
下手をすると首になるかもしれない。
渡辺は、なんとしても石田を説き伏せ、ここは何とか別れるしかないと考えた。
時は、ふたりが付き合いだしてから半年が過ぎようとしていた。