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星に願いを、君に呪いを。
私は星が好きだ。そのため夜空を仰ぐのはもはや習慣だった。
願い事なんてどうせ叶わない。
そう思っていた。
あの夜、流れ星に願うまでは。
「…あの方と、一緒にいられますように。」
他人に話せるような願い事じゃない。
たったそれだけ、心の奥にしまっておきたかっただけだった。
それなのに、次の日。
「星夢、おはよう。今日一緒に帰らない…?」
好きな人…優が笑って立っていた。正直言うと、私と優は喋ったことがない。遠くから見ているだけだった。
夢かと思い頬をつねる。痛かった。
それからの日々は魔法のようだった。優はいつも私を見つけてくれて、名前を呼んでくれて、優しくて、私が寂しい時はいつもそばにいてくれた。
「まるで…私の事全部知ってるみたいだね」
私がそう言うと優は微笑んだ。
「君のことはなんでも知ってるよ。」
そう言う顔がどこか”完璧すぎて”怖く感じた。
だけど怖いって思ってしまう私が悪いのだと思い、何度もその思いは打ち消した。
でも…
ある日、鏡の前で私は…
“本物の優”の影を見てしまった。
「助けて 」
血を流し、鏡の中で動かない唇がそう形を作った。
そして気づいてしまったんだ。
自分が願った「一緒にいたい」は、優の存在を”消してまで”叶ってしまっていた、ということに。
あの夜、星に願ったのは「本物の優」じゃなかった。
目の前にいるのは「私の理想」が形となった”偽物”。
私は震えた声で問いかけた。
「……あなたは、誰なの…?」
彼は少しだけ笑った。
「君の願いだよ。だから君が僕を望まなくなるまで……僕はここにいるよ」
世界が静かに歪んでいく。
クラスメイトは少しずつ同じことしか言わなくなり、街の景色が塗り絵のように単調になっていく。
私が”愛し続ける”限り、この世界は永遠に終わらないらしい。
本物の優を取り戻すには偽物を拒絶しなければならない。
けれど私の心は混乱していた。
彼の優しさに、微笑みに、体温に触れられることに、幸せだと思っていた自分を切り離すことが出来なかった。
そして私は選んだ。
「…全部、忘れたい。」
その言葉を最後に私は全ての記憶を忘れた。いや、捨てたの方が解釈が正しいかもしれない。
愛も、罪も、願いも、何もかも。
目覚めた世界は綺麗で、何も知らない私の隣に優が座る。
「星夢。おはよう。今日もまた…一緒だね。」
私は笑って頷いた。
「…うん。今日も一緒にいよう?」
それが、どんな代償の上にあっても。
初めまして。白苑と申します。短編小説が好きで自分も書きたいという思いで書き始めました。
この物語はメリバとなっています。
主人公の星夢という少女が優と一緒にいたい。それだけの純粋な願いが代償として本物の優を消す形で叶ってしまいます。
偽優は星夢にとっての理想。相手を知り、信頼し合う愛とは全くの別物。愛のようで愛ではないんです。
星夢が最後にとった行動、全部忘れる。これは偽物を消したように見えて、現実を拒んだだけ。そのせいで偽りの世界に完全に取り込まれてしまった。
こんな感じです。気に入ってくださったら嬉しいです。これからよろしくお願いします。リクエストなんかも受け付けるので良ければコメントください。
長々と語ってしまい申し訳ございません。それではまた会いましょう。