テラーノベル
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カーテンの隙間から朝陽が差し込み、淡い光が部屋を照らす。
アラームの鳴る前に目を覚ましたのは、阿部くんだった。
ベッドの隣では、佐久間くんがまだすやすやと眠っている。
軽く寝ぐせがついた髪。無防備に落ちたまつげ。
呼吸に合わせて上下する胸のリズム。
阿部くんはしばらく、その横顔を見つめていた。
時計を確認すると、まだ30分もある。
💚「……もうちょっと寝てていいか」
そっとベッドから抜け出し、キッチンへ向かう。
冷蔵庫を開けると、昨夜買っておいたクロワッサンとベリージャム。
コーヒーの香りが、ふたりの部屋を優しく満たしていく。
そこへ、くしゃくしゃ頭の佐久間くんがふらりとやってきた。
🩷「……あべちゃ〜ん、いないと思った〜」
💚「おはよ、起こしちゃった?」
🩷「ううん……なんか、匂いにつられてきた……」
眠たげな目でテーブルを見る佐久間くん。
並んだマグカップと、温かいクロワッサン。
阿部くんが席を引くと、佐久間くんは素直に腰を下ろす。
🩷「これ、あべちゃんが作ったの?」
💚「作ったってほどじゃないけど、温めただけ。ジャムも出してみたよ」
🩷「……なんか、こういうの、しあわせ〜」
ぽそりとこぼれた言葉が、阿部くんの胸をくすぐった。
💚「じゃあ、また明日もしようか」
🩷「えっ、ほんと?やった〜!明日は俺が作る〜!」
💚「……ベーコン焦がさないでね?」
🩷「……それは、それで、いい匂いするじゃん……?」
💚「それ、慰めになってないよ(笑)」
ふたりで笑い合う朝。
特別なことは何もなくてもこうして迎える朝がなにより特別な幸せだと思えた。
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