貴洋は痛さと恐怖に泣いていた。しかしどうしようもなかった。
カカオの実をパクリパクリと口に放り込み噛み砕き嚥下する。
適量の水と下剤を摂取すると、またカカオの実を手に取る。
目の前にはおよそ1000キログラムもの量のカカオの実の入ったコンテナが並んでいる。
これをすべて消化するのが貴洋のノルマだ。「うっ……ぐぅ」
あまりの量の多さに胃が悲鳴を上げる。
「まだ、半分も消化してないのかよ……」
思わず弱音が口をついて出る。
「お兄ちゃん頑張って!」
隣で妹の声援を受ける。
「ああ、頑張るさ」
妹の手前弱音など吐いていられない。
貴洋は再び口の中にカカオの実を入れる。
「おえぇ」
再び口から大量のカカオが吐き出される。
「大丈夫?お兄ちゃん?」「あぁ大丈夫だよ。心配かけてごめんな」
「ううんいいの。無理しないでね」
「ありがとう」
再び口にカカオを運ぶ。今度は吐かないようにゆっくり咀噛しながら飲み込む。
「んぐっ、ゲホッゴホゴホッ」飲み込もうとした瞬間、咽てしまい咳き込んでしまう。
その拍子に手に持っていたカカオを地面に落としてしまう。
「あっ!しまった!」
「もう!何やってるのお兄ちゃん!」
慌てて落としたカカオを拾い上げる。幸いにも中身はまだ入っていたようだ。「ふぅ、よかった~」安堵のため息をつく。
「ほら早く食べちゃって!」
妹から叱責され急いで残りの実を食べていく。
それから数時間後ようやくすべてのカカオの実を処理することができた。
「終わったー!」達成感とともにその場にへたり込む。
(終わり)
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