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Ep47 狼煙

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2024年04月21日

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 シルフから言われた期日が経過し、ヒノトたちキルロンドの生徒たちは、再び徳川の元に集められた。

「もう既に皆さん知っているかと思いますが、シルフ・レイスは敵でした。セノ=リュークの味方で、今回の倭国との戦いにはもう現れないでしょう」

 重大な事の審議を、徳川はサラッと言ってのける。

 横にいるルギア・スティアの顔も、変わらなかった。

 それは、全員の元にルギアから報告があったからだ。

 元々臭い雰囲気があったこと、その見守り役としてルギアが国から派遣されていたこと、そして、エルフと魔族の血を持つと言う前代未聞の過去を持ちながら、完全に敵サイドに回ったわけではないシルフのことを、倭国を本気で救おうとしているシルフのことを、誰も責められないことを。

 むしろ、その中で魔王直属のリムル=リスティアーナの部下ではなかったことの安堵の方が大きかった。

 そして、シルフは同時に、セノは本気でこの戦いでリムルを潰そうとしているのか、指揮官リムルの強襲の場所や日時までもを細かく書き残して行っていた。

「貴様ら、ここへは強くなりに来たのだ。その成果……今ここで発揮してもらうぞ!!

 大きな声で叫ぶと、ルギアはニタリと笑う。

 強襲の日は、今日、この時から。

 徳川は甲冑を身に纏うと、兵士たちの前に出る。

 倭国の北西、砂岩地帯が広がり、敵の進軍が目に入りやすいほど開け放たれた荒野。

 グングングンと、何百もの魔族が生み出したゴブリンのようなモンスター達が進軍してくる。

「さあ、来たぞ!! 倭国の兵士たちよ…………己が命をこの国に掲げろ!!」

 徳川の合図で、大きな法螺貝の音が鳴り響く。

 ダダダダダ!!

 そして、何人もの軽装の兵士たちが徳川の横を通り、モンスターの軍勢へと駆け出す。

 “雷槍・羅針盤”

 “水晶・雨雲”

 “氷剣・雪原”

 何人かの兵士たちは、遠距離からモンスターの軍勢に向けて、雷・水・氷の三属性の攻撃のみを向ける。

 しかし、あまりダメージにはなっていないのか、進軍を止めることは出来ていない。

「あんな弱い攻撃ばかり…………倭国の兵士たちは何を考えているんだ…………?」

 倭国の兵士たちより、少し後ろに構えているキルロンド生、中でも攻撃に特化するキラ・ドラゴレオは、目を凝らしながらも疑念を抱きながら呟いた。

 その横で、ルギアはほくそ笑む。

「ふっ、まあ見ていろ。キルロンドの戦い方とは違う。徳川らしい、面白い戦いが見られるぞ…………」

 “風豹・暴乱”

 三つの属性が舞う中を、高速で駆け抜ける一人の人影が姿を見せる。

「あれは……! 徳川さんの右腕の酒井さん……!!」

 ゴゥッ!!

 彼女が通り過ぎた瞬間、

「ふっ、見事な芸当だ。倭国の剣技は…………」

 ゴォォォォ!!!

 三属性の魔力を巻き込み、更に暴風を巻き起こしてモンスターの大群を上空へと吹き飛ばした。

「す、すげぇ…………!! これで一網打尽…………」

 しかし、ルギアは更に目を見開き、歯を見せて笑う。

「これからだ」

 その瞬間、兵士たちの一番前、徳川勝利は大剣を上空へと掲げると、大きな炎を纏わせた。

 キルロンド生たちは、全員が息を呑む。

「私は、師匠のように甘くはないですよ」

 シン………………

 徳川が剣を振るった瞬間、静寂が周囲を包む。

 そして、剣を鞘に納めた瞬間、

 ゴォン!! ゴォン!! ゴォン!!

 酒井が巻き起こした暴風の中を、爆発するように爆炎が広がっていく。

「な、なんなんだ…………? 一体…………どれだけの属性反応が起きているんだ…………?」

「分からない…………でも、私たちが見てきたほぼ全ての属性反応が、一箇所に集まった感じ…………」

 最初に、兵士たちで雷×水×氷の三属性を、敢えて倒し切らない程度に付着させ、酒井の風属性を纏わせた剣技で “拡散” し、暴風の中に閉じ込める集敵。

 そして、更に最後の一撃は、徳川の最大火力の炎の爆発により、様々な属性反応を巻き起こした。

「これが…………倭国兵の連携…………!!」

 しかし、倭国兵たちの戦いはこれからである。

「さあ、散らばったモンスター、一匹たりとも街の中に入れるな!!」

 徳川の爆炎は、開幕の狼煙のようなもの。

 倭国兵の強さは、やはり個々に磨かれた特殊な技術。

 一対一の強さにあった。

 しかし、

「うわぁ!!!」

 徳川の声の後、次々に倭国兵たちは声を上げて倒れる。

「なんだ…………!?」

「わ、分かりません…………!! 何が起きているのか…………!!」

 次々に倒れ行く兵士たち、異変を感知し、ルギアは上空に飛び上がると、拳に炎を纏わせる。

 “炎攻撃魔法・ブラストバーン”

 ゴッ!!

 地面に拳を叩き付けると、周囲数メートルに小規模な地震を発生させ、炎が吹き荒れる。

 中からは、花の形をした奇妙なモンスターが現れた。

 見たこともないモンスターに、ルギアも笑みを失くす。

 そして、即座にキルロンド生たちを見遣る。

新型のモンスターだ!! 地面の中から襲ってくる、全員、直ぐに臨戦態勢を取れ!!!」

 ヌッ ヌッ ヌッ ヌッ

 ルギアの攻撃から、沢山の花の形のモンスター達が姿を現した。

 その姿を見て、ルギアは声を漏らす。

「コイツら……全員に属性シールドが張られている……! お前たち!! 自分と同じ属性のモンスターを攻撃してもほぼダメージは通らない!! 即席でパーティを結成し、順次ダメージの通るモンスターを見極め対処しろ!!」

 緊急の事態にはなったが、この時を待ってましたと言わんばかりに、キラとキースが前に出る。

「そう言うことなら、今こそ前衛職の出番だ!!」

 貴族院は魔力量に長ける、そしてそれは、相手の属性を感知する能力にも長けることを指していた。

 二人は即座に自身の属性と違うモンスターを見極め、一切の戸惑いも見せずに突撃する。

「ヒノト!! キラとキースが持ってる武器!!」

 リリムは、真っ先に突撃する二人の武器を見て声を上げる。

「ああ…………! アイツらも、しっかり自分の強さを磨いてきたんだ…………!!」

 キラの持ってる武器は倭国製の斧、そして、キースの持っている武器は倭国製の長槍だった。

 “雷狼・牙突”

 “氷鷹・刺突”

 キラとキースは、それぞれ雷を帯びた斧、氷を帯びた長槍を敵に向けて的確に仕向けた。

 ガァン!!

 そして、見事にモンスターのシールドは砕け、混乱するかのようにフラフラとその場でへたり込む。

「シールドは割れたけど……やっぱ属性反応を起こさねえと倒し切れねえ!!

「大丈夫だよ…………」

 ズォ…………

 その瞬間、へたり込んだ二匹の目の前に、炎が舞い込む。

 “炎魔剣・消火”

「リゲル…………!!」

 リゲルは二匹の真ん中に立つと、剣を地面に突き刺し、地面を通して二匹に炎を渦を喰らわせた。

「すげぇ…………二体同時に…………!」

 そして、キラの起こした雷に炎を付与させ、過負荷の爆発で一体を倒し、キースの起こした氷に炎を付与させ、溶解のダメージでもう一体を倒した。

 三人の攻防を幕切りに、他の生徒たちも怯むことなく謎の花に突撃する。

 しかし、キルロンド生や、謎の花に対応し始めた倭国兵たちの勢いも束の間、全員の動きが止まった。

 徳川は頭を掴まれ、兵士たちの前に出された。

「アハハハハ!! 力に屈服せよ!!」

 長い黒髪に、ギラギラと輝く紅い瞳を宿し、苦しむ徳川を笑いながら掴む長身の女。

「私はリムル=リスティアーナ!! この世界の全てを指揮する者だ!! 平伏せ、愚民たちよ!!

 そう言うと、再び高笑いを浮かべた。

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