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体を重ねれば情が移ると言われている
それは果たして本当か?
答えは否。
その例を挙げるならば太宰という男だ
あいつの辞書に情という言葉は存在しない
一緒に寝た翌朝にはこのザマだ
1人だけそそくさと出ていきやがった
奴の辞書をへし折ってやりたい
布団から出て机を見る
昨晩置かれていた奴の私物と入れ替わるように
「これで『今週の負け惜しみ中也』もおしまい」
という憎たらしいメモと
昨晩の写真と
飲みかけのワインが置かれていた
昨日の記憶を辿る
事後、あいつは確かに俺の隣で寝た
あいつが居たと思われる場所に触れる
嗚呼、つめてぇ
もう何時間も前に出ていってたのか
「…クソ鯖が」
心底腹が立つ
煙草とライターをもってベランダに出る
朝日を浴びながら煙草を吸った
目を閉じて浮かび上がってくる奴の顔
思い出すのは甘ったるい声と視線
『中也』
『愛してる』
「あーー……
やっぱ殺しときゃよかったな…」
情が移ったのは俺だけのようだ