コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
何でもできて、みんなを惹きつける太陽みたいで、優しくてイケメンで、母性本能くすぐっちゃう天然で可愛くて…それでいて、その笑顔の影で人知れず闇まで背負っちゃってるなんて…
廉「そんなもん、俺が叶うわけあるかーーい!(ꐦ°᷄д°᷅)」
紫耀「な、何…?珍しく見舞い来たと思ったら…?」
紫耀が入院してから、見舞いに来るのは初めてだ。
紫耀「俺さ、入院したらさ!こーんな大っきいカゴに入ったフルーツの盛り合わせとかもらえるもんだと思ってたのにさ!そしたらみんな、たいして見舞いにも来てくれないじゃん!?」
廉「風ちゃんは来てるやろ?」
紫耀「え?舞川?来てないよ?入院した当日に来てくれた1回きり。廉も全然来てくれないし、二人ともデートで忙しいのかなあ~と思ってた!」
はぁー…。やっぱり…。まだウジウジ悩んでんのか…。何やっとんのや、まったく…。
バシッ!
紫耀「おっとあぶね…!」
俺の投げたサッカーボールを、紫耀が両手で受け止めた。
廉「俺さぁ、イタリアのクラブチームからスカウトされたんよね。だけど、断ろうと思ってる」
紫耀「えぇっ!?マジで!?イタリア!?すっげーじゃんっ!!え、え!?でも断る!?なんで…!?もったいないじゃん!」
廉「お前に譲るためや」
紫耀「は?」
紫耀がちょっとだけムッとした表情を浮かべた。
廉「そこのスカウト、本当はお前をスカウトするつもりで試合見にきたんやで。だけどお前が怪我したから、たまたま俺が目に止まったんや」
紫耀「そう…なんだ。だけどそれだったら、お前がそのチャンス掴めよ?俺さ、プロになるのはもう難しいんだ…。舞川に聞いてるだろ?」
廉「聞いてへんで?だって俺、風ちゃんと別れたから」
紫耀「はっ!?な、なんで!?」
廉「だから、お前に譲るためや」
しばらくの間、沈黙が流れた。
今度は”ちょっとだけムッとした”んじゃなくて、そうとうムカついてるんやろう。
紫耀「…っざけんなよ…。譲るってなんだよ!?舞川はものじゃないんだぞ!?舞川の気持ちはどうなるんだよ?」
廉「ほら、自分がやられたら怒るくせに」
紫耀「はぁ!?さっきから何わけわかんないこと言ってんだよ!?」
廉「お前だって、本当は風ちゃんのこと好きなのに、俺に譲ろうとしてたやろ!?そんなに俺がかわいそうだったか!?風ちゃんの気持ちは考えたんか!?」
紫耀「それは、あいつがお前を選んだから…」
廉「はぁ!?ちゃうやろ!?風ちゃんの気持ちがお前に行きかけてたこと、お前かてわかってたんちゃうんか!?確かに俺が相当強引に行ったのもある。でも、風ちゃんは、何度も俺に断ろうとしとったわ!それをできんくしたのは、紫耀、お前や!お前がわざと身を引いて、風ちゃんに背中向けたからや!」
紫耀「俺は、ただ…お前が舞川のこと本気なんだってわかったから…だから…」
廉「知っとるわ、お前の中学の親友の事やろ!?俺に重ね合わせたんやろ?でも俺は!お前に風ちゃんとられたからって、自殺なんてせえへんで!
そんなことより、何でもかんでも譲ってくれる方がめっちゃ腹立つわ!俺はお前のこと、”ライバル”やと思ってる!ライバルは対等な関係や!気ぃ抜いたら負けてしまうくらいの相手やって、”その相手を認めてる”って言うことや!
譲ってくれるんは、俺のことを下に見てるからやろ!自分が本気出したら、余裕で俺に勝っちゃうって、お前はそう思うてるんや!
そっちの方が余計傷つくわ!」
紫耀はあんぐりと口を開けて、何も言い返さずにただ聞いていた。
紫耀「廉…お前、そんな風に思ってたのか…?」
廉「ずっと…ずっと思うてたわ…!紫耀のこと、うらやましいって。紫耀みたいになりたいって。
サッカーのポジションのことやってそうや!俺、本当はFWやりたかったけど、お前がやるって言うから、ポジション被ったら絶対レギュラー取れんから、後ろに下がったんや。
だけど俺のパスからお前がゴール決めるって言うライン、俺にとってはスゲェ誇りで。だけど賞賛されるのは、いつも得点決めたお前だけ。
そういうの全部わかってるみたいに、“廉がいいパス出してくれたから“とかみんなに言うねん。
そういうお前の優しさとか気遣いとか、なんかむっちゃ腹立たしくて、大っ嫌いやったわ…!
今、スカウトの話も、風ちゃんのことかて、”持ってる”のは俺や。だから、今までの俺の気持ち、わからせてやっとんねん。
“譲られる“のが嫌やったら、自分で“奪い取って”みろや!」
こんなに紫耀に対して、気持ちをぶつけたのは初めてやった。
だって、紫耀に嫉妬してたとか、それがバレることすら、なんか負けてる気がして悔しかったから。
紫耀「わかった…。俺、あきらめない。リハビリ、頑張るよ。スカウトの話、お前には渡さない!」
廉「はっ…!?俺が言うとんのは、サッカーの話やなくて…!いやサッカーの話もしたけど…!」
バシッ!
紫耀がボールを投げてきた。
廉「あっぶねーなぁ…!?」
紫耀「渡さねーよ…スカウトの話”も”……!」
紫耀は、ベッドの一点を見つめて言った。
紫耀が言おうとしていることはわかった。
だけど、紫耀がそれをどうしても言葉にできないのもわかった。
紫耀が失ったものは、それだけ大きかったんや。
廉「…紫耀。お前の親友がどんな気持ちだったか、俺は知らん。だけど…俺は死なへん。俺が、大丈夫なやつもおるんやって証明してやるから。
俺が、お前の傷を一緒に背負ってやる。お前の痛みと一緒に戦ってやる。」
紫耀がハッとして顔を上げる。
紫耀「廉……、今のめっちゃキュンとしちゃった~(٭°̧̧̧ω°̧̧̧٭)!廉~!」
廉「わ、なんやねん、気持ち悪いわ!」
紫耀「あれ、届かない。もっと近く来いよ!廉~!ハグさせろ~!俺は今もーれつに感動したぞ~!」
紫耀がベッドの上でバタバタする。
廉「お前が足怪我しとって、よかったわ…(╥﹏╥)」
海人「あーっ!紫耀先輩!おっかえり~!」
平野は思いのほか、早く退院できた。
最初に入院したときには、もっとかかるって先生は言ってたはずだったけど、相当リハビリがんばったのかな…。
ジンくんといわちに背中を押されて、もう自分の気持ちに嘘はつかないと決意した。
でも、平野の病院にはなかなか行けずにいた。
もう廉に甘えない。
それだけは守ろうと自分の中で決めていた。
だけど、だからと言って、平野に対して突っ走ることはできずにいた。
だって、”こっちがダメならあっち”なんて、そんなのムシが良すぎるやん。
でも、寮に帰ってきた平野は、一直線に私のところに向かってきた。
平野「舞川、ちょっと話せる?」
風「う、うん…」
みんながシーンとなって、視線が注がれる。
平野「あ、ちょっと、外行こっか?(´๑·_·๑)」
風「う、うん、そやね…」
2人で、寮を出る。
いわち「おぉ~、いきなり来たね~」
ジン「やっと紫耀先輩も素直になったね」
海人「風ちゃん…幸せになってね…(´;︵;`)」
バシッ(廉が海人の頭を叩く)
廉「何、お前が”好きな子譲った男風”の雰囲気出しとんのや!それは俺のセリフや!」
公園のベンチに並んで座る。
平野「廉と別れたんだって?」
風「…うん…」
平野「いいの?」
風「…いいか悪いかって聞かれたら、それはその時はすごく悲しかったけど…」
でも、廉がそうしてくれたことによって、やっと自分の本当の気持ちに向き合うことができたっていうか…。
って、これを心の中で思うんじゃなくて、ちゃんと声に出して伝えな…!
勇気出せ、風!
風「平野、私ね、平野のこと…」
平野「ストップ…!俺から言わして!」
平野に人差し指で口を押さえられた。
え?もしかして、平野も同じこと言おうとしてくれてる…?
平野「俺、舞川のこと…」
ピロロロローン!
その時平野の携帯が鳴った。
平野「だー!なんだよもう!ごめん、ちょっと待って…、わ…」
風「誰?」
平野「あ~、うん…桃…」
桃…あのかわいい元カノ…!?
まだ、連絡取ってるんや…。
風「出ないでいいん?」
平野「今は、うん、いい。今、俺、舞川とちゃんと話したいし」
でも、着信音が気になって、落ち着いて話なんてできない。
風「よく電話してるん?」
平野「うん…実は、桃から”やり直したい”って言われてて。でも、俺はもうそんな気は全くないって、ちゃんと気持ちは伝えたんだ。ちゃんとわかってもらえるまで、話はするつもりだけど。
でも、今は俺は、舞川と…」
しばらく鳴り続いていた着信音が止まったかと思ったら、次は立て続けにピンポンピンポンピンポーン!とメール音が鳴った。
平野「は!?なんだ、この連打…え…!?」
平野が携帯を見て固まっている。平野の肩越しに覗いてみる。
風「えっ……!?」
平野「ごめん舞川…!俺、行かなきゃ…!」
いわち「風ちゃん、おかえり!…あれ?一人?」
寮に帰ると、みんなが今にも祝福のクラッカーでも鳴らそうかっていうくらいの勢いで待ち構えていた。
ジン「え?紫耀先輩は?」
風「うん、ちょっと、名古屋に」
いわち「はっ!?なんで!?」
風「桃ちゃんから、連絡があって」
いわち「桃ちゃんって…あの紫耀先輩の元カノの!?」
廉「おい!なんやねんそれ!?どーゆーことやねん!?」
みんなをかきわけるように廉が後ろから出てきた。
風「桃ちゃん、平野と再会してから、ずっとヨリ戻したがってたんだって。平野は一度は断ったらしいんだけど、そしたらさっき、メール来て…手首切ったって…」
その場の全員が絶句した。
桃のメール
「紫耀くん、会いたい」
「なんで電話出てくれないの?」
「紫耀くんとやり直せないなら、私、死ぬから…」
「紫耀くん、手首、切っちゃったよ…」
メールを見た平野は一瞬固まり、次の瞬間、走り出していた。
風「友達としてほっとけないって」
いわち「…でも、それって紫耀先輩の気引きたいだけだよね?」
ジン「うん…リストカットする人って、絶対死ぬような切り方はしないって言うしね…」
海人「それに静岡から名古屋まで駆け付けるなんて、友達のやること超えてるよね…。これで紫耀先輩が来てくれたら、余計に期待させちゃうかも…。風ちゃんが行かないでって言えば…」
風「言えるわけないやん…!もし、気引きたいだけの嘘やったとしても、それで平野が行かないで、もし本当に死んじゃったら…。もうこれ以上に平野に傷を背負ってほしくないんよ!だから…止められるわけないやん…」
本当は言いたかった。
他の女の子のところになんて、行かないでほしいって。
でも、世の中には恋愛感情以外にも大切なものがあって、平野はここにいる誰よりも人の命を重く考えてる。
私たちは、自分も周りの人も、当然のように明日も生きてるって思ってる。
でも、平野にとって、それは当たり前のことじゃない。
友達を助けるために走っていく平野の背中は絶対的に正しくて、私たちにはとうてい理解できないほどの見えない大きなものを背負っていた。
そんな平野を止めることなんて、できるわけない…。
廉「ほんなら、風ちゃん、行くで!」
風「え?どこに?」
廉「”友達として”駆け付けるなら、何も二人っきりで会わなきゃあかんってことないやろ?友達の友達の緊急事態や!俺らも心配やから、ついてくんや!」
返事をする間もなく、廉に手を取られて外に連れ出された。
風「…ひっく、ひっく…」
廉「え、えぇっ!?風ちゃん、なんで泣いてんの!?」
走りながら変な息づかいが聞こえるから振り向いたら、風ちゃんが泣いててギョッとした。
廉「ど、どした!?そんなに紫耀が元カノのとこに行くのが嫌やったんか?」
風「違うの…廉が…廉と、もうこんなふうに普通に喋れないと思ってたから…。私、廉の気持ちに…なのに、廉がまた優しくしてくれるから…」
廉「え?あ、あぁ~、そういや別れ話から全然喋ってへんかったな。それが、そんなに寂しかったん?」
風ちゃんが、ブンブンと頭を縦に振る。
ちっきしょー、めっちゃかわええやん…。また忘れられんくなるわ。
廉「それは、学校の女子の目を欺くために」
風「うそやぁ~。だって、寮でだって全然喋ってくれへんかったし~(⌯˃̶᷄ ﹏ ˂̶᷄⌯) 」
廉「ま、まぁ…それは…」
それは、決意が揺らいだら困るから…。
風「もう、友達には戻れないのかと思ってたからぁ~~…˚‧º·(˚ ˃̣̣̥⌓˂̣̣̥ )‧º·˚」
廉「そんなことないで?俺は、ずっと風ちゃんの味方やで?約束したやろ?」
風「その約束、まだ有効なん?」
廉「有効有効!有効期限100年後や!だから、これからも頼ってな?一番の”友達として”」
風「…私、廉をいっぱい傷つけたのに…」
廉「…あ、そや!言い忘れとった!惚れ薬の効き目な、もう切れとるから」
風「へ?」
風ちゃんがきょとんとした顔で見上げる。
廉「ほら、フルーチェに惚れ薬入れたって言うたやろ?」(15話)
風「え、だってあれは…」
廉「だから、風ちゃんが俺のこと一瞬好きなんかなーって気がしてたのも、…好きやなくなったのも、そのせいやから。だから、風ちゃんはなーんも悪くないで?」
風「れ、廉~~~……˚‧º·(˚ ˃̣̣̥⌓˂̣̣̥ )‧º·˚
本当はまだ全然、”友達”だなんて思えないけど。
でも、君が笑ってくれるなら、こんな嘘くらい全然…。
平野「舞川っ廉っ!?お前らなんで!?」
ギリギリのところで新幹線に飛び乗って、平野を発見した。
廉「紫耀、俺らも”友達として”一緒に行くで!…でも、急いで出てきたから、財布忘れた。お金、貸して?」
風「私も…(・・*)ゞ」
平野「なんか…デジャブ…×新幹線代2倍…」