テラーノベル
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「はぁ……今日も暑いね……」
寧々はそう言いながら、
小さなハンディファンを口元に近づけた。
機械音混じりの風が、少しだけ空気を揺らす。
「ふふ、本当だね。このままじゃ熱中症に
なってしまいそうだよ」
そう返すと、寧々が一瞬きょとんとしたあと、何か思いついたように口角を上げた。
「ねえ、類。
“ねっちゅうしょう”って、
ゆっくり言ってみて?」
嫌な予感はしたけれど、
深く考えずに言ってしまう。
「えっと……ねぇ、ちゅう、しよう?」
次の瞬間、寧々はファンを止めて、
ニヤリと笑った。
「へえ。類、そんなにしたいんだ。大胆だね」
……ああ、完全に嵌められたな。
でも、彼女の楽しそうな顔を見ていると、
不思議と悪い気はしない。
「ふふ、君に言われるなら悪くないかもね」
そう返すと、寧々は一瞬だけ視線を逸らした。
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