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「ミルは……消えても、“消えたまま”じゃないよ」
沈黙を破ったのは、リンの声だった。
「え……?」
リンはゆっくり立ちあがり、ミルの隣に寄る。
「ミルはぼくの“甘さ”。
完全に消えたわけじゃなくて……ぼくの中に戻るだけなんだ」
「戻る……?」
「うん。
ただ問題は……」
リンが私を見つめた。
その目が、少しだけ揺れていた。
「ミルが戻ると、ぼくの“甘さ”と“苦さ”が、もう一度混ざって形になる。
そのとき、“新しい何か”が生まれる可能性がある」
「新しい、何か……?」
「良いものかもしれないし、悪いものかもしれない。
だから、どこで戻るべきか……見極める必要があるんだ」
ミルが苦笑した。
「リン、難しく言いすぎだよ。
要するに、私が全部リンの中に戻ったら、この国の姿も大きく変わるってこと」
甘味の国が……変わる?
ミルが続ける。
「そして、のあちゃん。
その“変わる瞬間”には、あなたが必要なんだと思う」
私は思わず息をのんだ。
「わたし……?」
「のあちゃんの心は、甘さと苦さのバランスが絶妙なの。
リンの世界が変わる瞬間、そのバランスを保てるのは――あなたしかいない」
リンも力強く頷いた。
「のあ……
きみに、手伝ってほしい。
この国を……ぼく自身を、ちゃんと“作り直す”のを」
その瞳はまっすぐで、迷いがなかった。
(私……?
本当に……私がそんな大事な役を?
怖い。でも……)
ミルも少しずつ薄くなりながら、笑う。
「のあちゃん。
冒険はまだまだ続くよ?」
私は深呼吸して、二人の手を握った。
「……行くよ。
ミルのことも、リンのことも……この国も。
ちゃんと見届けたい!」
リンがほっと笑って、
ミルは安心したように目を細めて、
三人の手はぎゅっと重なった。
塔の最上部の天井が、ゆっくりと光の裂け目を作り始めた。
色とりどりの甘い光が外へ流れ出し、道のように伸びる。
「この先に……甘味の国の“本当の姿”がある」
リンがそう言った。
ミルは透明に近づいた体で私の背を押した。
「行こう、のあちゃん。
次の冒険の始まりだよ」
私は頷き、光の道へ足を踏み出した。
心はまだ不安でいっぱいなのに、なぜか足は迷わなかった。
だって、二人と一緒だから。
(ミル……リン……
私は最後まで、必ずそばにいるからね)
こうして――
三人の旅の “第二幕” が開かれた。
コメント
1件
今回も楽しいお話ありがとうございました!!まさかの第2幕?!ここで終わらせないのは流石です笑!続き楽しみにしてます!頑張ってください!!