テラーノベル
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光の道を進むと、足元がふわっと軽くなった。
重力が消えたみたいに体が浮き上がり、そのまま三人は外の世界へ押し出される。
まぶしい——
思わず目を細めた。
光が落ちついて目を開けると、そこには……
「……空、が……二つ……?」
青空が上下に広がり、真ん中に大きな光の帯が走っていた。
まるでこの国が二枚の空を重ねて作られているみたい。
でも、不思議なのはそれだけじゃなかった。
遠くに見える山々が、いくつも“裏返って”浮かんでいる。
空に島が浮いていて、それがゆっくり回転している。
全部が、甘さの匂いと色をまとっているのに——
どこか“未完成”みたいな不自然さがあった。
「ここが……甘味の国の本当の姿……?」
隣でリンが小さくうなずいた。
「うん。
本来のこの国は、“甘さ”だけでなく“苦さ”や“渋さ”や“酸っぱさ”……
いろんな味の心で作られる世界だったんだ」
「じゃあ、今は……?」
「甘さだけが偏って大きくなって、バランスが崩れてる。
そのせいで、世界がひっくり返ったり穴が空いたりしてるんだ」
なるほど、さっき見た上下の空とか浮いてる島は……
心の歪みがそのまま世界の歪みになってるんだ。
(すごく綺麗なのに……すごく不安定……)
「ねえ……ミル。体……大丈夫?」
気づくとミルは、さっきよりもずっと透明になっていた。
光の中に少しずつ溶けているみたい。
「ん……もうすぐ、かな。
のあちゃんとリンをここまで連れて来れてよかった」
「そんな言い方しないでよ……」
胸が痛んだ。
冒険の相棒で、優しくて、いつも抱きしめてくれたミルが……
消えるなんて、全然受け入れられない。
リンもミルを見つめた。
「ミル……帰るのが怖い?」
ミルは少しだけ黙ってから、
「うん。少しだけね」
と、笑った。
「私はずっとリンの甘さだった。
でも、のあちゃんと一緒に冒険して……
“甘さだけじゃない世界”をたくさん知ったの」
ミルの指先が光となって溶けはじめる。
「だから……戻ったあと、私はどんなふうに変わっちゃうのかなって。
リンの中で、ちゃんといられるのかなって……」
「ミル……」
私はミルの手をぎゅっと握った。
「ミルはミルだよ。
たとえ戻っても、全部が消えるわけじゃない。
リンの中で、ちゃんと息できる場所があるよ」
リンも強く頷いた。
「ミルはぼくの大事な一部。
どんな形になっても、ぜったいに忘れたりしない」
ミルはその言葉に、少し涙ぐんだ。
「……ありがとう。
二人がいるなら、安心して戻れそう」
でも。
ミルの体は、もう半分以上透けていた。
コメント
1件
今回も楽しいお話ありがとうございました!!ミル消えちゃった…体震えました…続き楽しみにしてます!