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第106話「断片の鍵 ―無への旅路―」
神の都ゴッドエデン。
三人の英雄たちは、最高神アダムの前に再び集まっていた。
「“歪みの断片”を探し出す。それが、無の座標へ繋がる唯一の道だ」
アダムの言葉に、ゲズが頷く。
「どこを探せばいい?断片はどこにある?」
アダムは光の柱を前に、静かに言葉を紡ぐ。
「断片は宇宙に散らばっている。
その起点は…過去、闇の王サタンが敗れた時に生じた“時空の裂け目”だ。
そのエネルギーは、いくつかの星に流れ、痕跡を残している」
リオンが前に出る。
「つまり、その痕跡を辿ればリンネが逃げた“無の世界”への手がかりが掴めるわけだな」
「その通りだ。まずは三つの星だ。エシュトラ、リミュエル、そして…忘れられた星《カイム》」
「カイム…?」
ゲズが目を細めた。
「そこは、俺たちが英雄として旅立つ前に立ち寄った星じゃないか…」
ウカビルが思い出したように言う。
「あの時、時空が歪んでるって騒ぎになったな。たしかに不自然だった…!」
アダムは三人に向かって、静かに告げる。
「ただし――気をつけろ。“歪みの断片”に触れれば、過去や未来の“記憶”が断片的に流れ込む。
時にそれは、心を蝕む幻となる」
ゲズは静かに、しかし決然と言った。
「どんな記憶だろうと、立ち向かう。セレナを救うためなら、俺は…俺自身すら超えてみせる」
リオンとウカビルもまた、覚悟を固めていた。
「俺たちの旅は、また始まる。だが今回は…時間と宇宙そのものが敵だ」
「英雄ってのは、こういう時にこそ名乗るもんだぜ」
三人はそれぞれの機体に乗り込み、最初の目的地《エシュトラ》星へと向かっていく。
──その頃、《無の世界》。
リンネは闇に浮かぶ玉座に腰掛け、眠るセレナを見下ろしていた。
彼女の腹には、かすかに命の鼓動が宿っている。
「…まだ希望を抱いている。君たちは」
リンネは天を見上げ、深く息を吐いた。
「だがその希望が、僕の未来を壊した。
君たちが“正義”と呼んだ行動が、僕のすべてを奪った」
彼の心には、確かに怒りがある。
だがその奥底には、それを支える哀しみと喪失が渦巻いていた。
「ゲズ。リオン。ウカビル。
僕は君たちを倒す。その上で――君たちの力を、僕の“正義”に使う。
そうして未来を、取り戻すんだ」
静かに囁くリンネの声は、まるで誰かに向けた祈りのようだった。
《続く》