「俺のこと好きなら明日の朝ハチ公前来てよ」
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そんな事ある??キヨは1人で頭を抱えて机に埋まる勢いで項垂れていた。
「…酒、飲みすぎるんじゃなかった。」
そう独り言ちるももう遅い訳で。
昨夜親交を深めるためにと誘われた飲みに参加し、柄にもなく酒を呷れば少ししたゲームを楽しんだ。終いには飲みすぎたキヨは酔った勢いで牛沢に連絡し冒頭に戻る…という訳だ。
思い出す度に頭が痛むし溜息が後を絶たない。今日に入ってもう数十回はしている溜息の中にはハチ公前に向かわなければと思う使命感を持つ反面持ち上がらない腰への呆れも含まれていた。重たい腰と動きたがらない脚を叱咤してはスマホと財布だけを持ち外に出た。
何時間が経っただろうか…否、時間的にはまだ1時間も経っていない。それなのにこんなに長く感じるのは想いを寄せている彼が現れると信じているからだろうか?我ながら単純すぎる心にもはや泣きそうになる。とうとうぐず、と鼻を鳴らし始めた事に羞恥心を覚えたキヨは足早にその場を後にしようと1歩踏み出した…が、それを許さない者がいた。
「よぉ、キヨ。」
「あ、え…?」
「…なんでお前がそんな困った顔してんだよ。」
くふくふと可笑しそうに笑うその影は紛れもない想い人で。未だ混乱する頭を何とか落ち着かせては遂に我慢していた涙が止めどなく溢れ始めた。
「…おいおい、人前で泣くとかマジか。 」
「うそだ、うそだぁ…」
「嘘じゃねぇし何が嘘なんだっつーの。」
「うっし、が…俺の事…すきとか、うそっ、」
「あー、はいはい、それについてな」
「うぅーーーー、」
年甲斐も無く泣き喚くキヨの頭を優しく撫でてやりながら近場に腰を下ろさせた牛沢は自分の胸にキヨの頭を預けさせた。キヨはそのまま泣いた。と言うのもただこの事実を受け入れるには情報量が多すぎて時間を要しただけなのだ。わけも分からず溢れ出した涙を止める術なんて彼にも牛沢にも持ち合わせていなかった。
「…キヨ、話していい?」
「……っ、うん」
何分そうしていただろうか……、可笑しくなった呼吸を整えようと肩を上下させ偶に音を鳴らして吸い上げる鼻の音が落ち着いてきた頃に牛沢はキヨの更々とした癖のない茶色がかった髪を指で梳きながら話し掛けると幼気な返事が返って来、牛沢は思わず頬を緩ませた。
「俺、ちゃんと”そういう意味”でキヨのこと好きだよ、」
「……うん、」
「ずーーーーっと前からお前のことが好きでさ。あんなLINE寄越されたら期待するしか無いよね。 」
「……ん、」
「お前にその気が無かったとしても絶対言い包めて俺のものにしてやるって精神できたのに……」
「…」
「お前がこんなんじゃ口説こうにも口説けないわ。」
何だか腹が立ってきたキヨは牛沢を見上げては精一杯睨む……も、潤んだ瞳はただただ撫でて、と強請る子供のようにしか思えなくて牛沢はやんわりと頭を撫でた。
「……なぁ、キヨ。お前がこんなに取り乱した理由って…”そういうこと”でいい?」
「…それ以外って言ったら怒るのはうっしーでしょ?」
「御明答。俺の事よく知ってんね。」
「伊達に数年間思い寄せてないよ。」
「俺もお前のこともっと知りたい。今回は泣き顔を知れたから……今夜は飲むか。いや、お前からしたら今夜も…か?」
牛沢は悪戯に口角を持ち上げてキヨの頬を優しく包んだ。キヨはそんな牛沢の顔に耳まで染めては目を斜め下に持っていき、
「俺も、もっとうっしーの顔みたい……」
なんて呟いた。牛沢は我慢出来なくなりその場でキヨと同じ高さになるくらい跪き精一杯抱き締めては、よっこらせとキヨと共に立ち上がる。
「早く帰ろ。俺の色んな顔見せてやるから、お前の色んな顔見せて。」
獣のように獰猛な光を宿した瞳がぎらりと光る。緑がかった黒い瞳の中に映るのは期待と興奮に不格好に口角を引き攣らせるキヨの姿だった。
お疲れ様でした。
こちらのストーリーはフォロワー様の”待ち合わせ”というストーリーをお借りしました。フォロワー様、ありがとうございました✨️
わたくし最近お酒でやらかす話が大好きになってきまして……、何がいいかって酒飲んだ、やらかした、次の日それを自覚した。の流れを書くのが楽しくて楽しくて……、原作のocean eyesと言い今作もお酒を匂わせてしまいました……、因みに前作はBillie Eilishのocean eyesをイメージして書いているので良ければ和訳を見て、曲を垂れ流しながらご覧下さい。それと、ネタが思いつかない時は大抵曲をイメージして小説を書いている──「見て欲しいのは俺自身」も曲のMV(tous les mêmes)からネタを頂いております──ので良ければ曲を流しながらお楽しみください。閑話休題。久々に自分語りを盛り込んでしまい申し訳御座いません。それではまた次回、お会いしましょう👋🏻
コメント
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朝からコメント失礼します! 書いてくれてありがとうございます😭 めちゃくちゃ嬉しいしめちゃくちゃ最高です! 書いてもらえて良かったです!!! ありがとうございました🙇🏼♂️