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暁輝(あき)@低浮上
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コメント
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人を惹きつける天才って言われませんか!?みんなの感情がすごい伝わってきて感情移入しちゃいました… めちゃくちゃ分かりやすいしそれなのにちゃんと面白くて!! 続きも楽しみです!
臨場感のセンスが素晴らしくって…💗 シリアスからの急展開なのにしっかり読者も着いて来させられる文章力に脱帽尊敬マジ凄い🎩 毎度毎度更新楽しみにしてるの、今回も素敵なお話をありがとう🥹🫶
うわ、一気にカオスになったね…!でもそのカオスがすごく温かい。日帝がイタ王やナチスと再会して、厳しかった表情がふと緩む瞬間が本当に良かった。ピッツァとピザの違いで怒鳴り合うシーン、思わず笑っちゃったよ。81年ぶりの電話越しの「久しぶりだな」にじんときた…。早く次が読みたいな。
「なぁ日帝。もうちょっと愛想良くしてくれても良いんじゃねぇの」
「貴様に向ける笑みなどあるものか」
米帝──……今はアメリカ合衆国と呼ぶのが通例なのか。兎にも角にもそいつが今現在、居間にて俺と向かい合っている。俺の左側にはイギリスが、右側には日本が居る。俺とアメリカが直接となりになるのを防ぐためのクッション的役割なのかもしれないが、俺にとっては関係ない。2m以内にアメリカが居る時点で斬りかかりたくて仕方がないのだ。反射的と言うべきか病的と言うべきか。隣で日本が俺のことを「敵と対面してる猫みたいですよね」なんて呟いている所が聞こえて更に苛立った。ちなみにイタリアやドイツ、パラオは別室でにゃぽんと共に“てれびげーむ”とやらをして遊んでいるらしい。
流石にこの雰囲気に耐えられなくなったのか、イギリスが声を上げた。
「まぁまぁ、落ち着いてくださいよ日帝さん。うちのバカ息子のせいで心が荒れるのはわかりますが、今日本はアメリカと平和条約を結んでるんですよ」
「平和条約を結んだとて喪った国民は帰ってこない。あと腐っても貴様の息子なのだからバカ息子などと言ってやるな、可哀想だろう。癪だが」
「癪だがって何!?何で俺勝手に憐れまれてんの!?」
アメリカが正面で何か叫んでいるが一切気にも留めず、茶を啜りながらイギリスの方を見ていた。イギリスは俺の言葉で黙っていた。彼も俺と同じく、大量の兵と国民を喪っていたから。
『失われた國民』
俺の中では、勿論海も空も含まれている。
「……でも、確かにそうだ。国民は、喪った国民は……二度と帰ってこない。俺のところの国民も……何万人と死んだ」
アメリカが珍しく静かに呟いた。自分の掌を眺めながら、ゆっくりと。
「でも、俺は……俺達は、その過ちがあったからこそ、平和を目指して進んでるんだ。国際連合を作って各地で武装勢力が暴れないようセーブしたり、核に関する事柄もかなり厳しく制限してる。だから、今はまだ日本以外に核兵器を使われたことは無いんだ!」
アメリカは決意をあらわにするような、そんな風に語っていた。理想を望み、自由のために戦い、そして最後は勝つ。まるでヒーロー物の主人公のような国。
自らの目的のためならば他人の心の内にも土足で踏み入るような存在が、今決意や功績を語っている。
反吐が出るようだった。
「黙れ」
俺は無意識に呟いていた。
「お前のやったことになど興味がない。国際連合?嗚呼、俺を死刑判決にした連中だろう。あの時の面々の顔はよく覚えている」
イギリスとアメリカの顔が強張ったのが視界の隅に見えた。イギリスは俺のことを不安そうに見つめ、アメリカは固まっている。
日本は俯いていた。おそらく、アメリカが云々と語っている間からずっと。膝の上で握られた拳が僅かに震えているように見えた。だが、日本に対して声を掛ける程の余裕も無かった。
「……平和。それが理想か。貴様は自分が正義だと思っているのか。あんなに大量の人間を殺しておいて、それでもなお平和を語るのか。犠牲者の上に成り立っていると自覚していないのか」
「日帝、それは──……」
「俺の言葉のどこが間違っている!!」
僅かに声を張り上げた。しん、と室内が静まり返った。外の鳥の声や風の音すら止んでいるような、奇妙な静けさ。心臓の音が聞こえそうなほどに強く速く脈打っていた。
「……言ってもわからないだろう、貴様には」
「……お兄さんと弟さんの件は、申し訳ないと思ってる」
「…………」
今更謝られたところで何があるというのだ。
海も。
空も。
帰ってこないのに。
再び沈黙が場を支配しようとしたとき、不意に襖が小さくノックされた。す、と横に滑るように開いた襖から顔をのぞかせたのは、眼鏡を掛けた青年。てれびげーむをしていた筈の、ドイツだった。
「……なんですか、このお通夜みたいなムード」
「空気を読みなさい馬鹿」
「馬鹿ってなんだよイギリス」
ドイツはじれったそうに二言三言イギリスと言葉を交わした後、部屋に入ってきてすとんと畳の上に座った。手にはすまほ。明かりがついている。
「日帝さん。あの……父が、日帝さんと会いたいと言ってるんですが……」
「父……?」
俺は目を瞬かせた。ドイツの父。つまり先代に当たる国。1国しか思い当たらなかった。
「まさか、先輩……ナチスが生きてるのか!?」
「え、えぇ、はい、ピンピンしてますけど……」
俺の前のめりになるような言葉にドイツは目を白黒させながら仰け反りつつ答えた。そんな様子も俺は目に入らず、顎に手を当てて目を閉じてじっと思い返した。
俺の先輩、ナチス。勿論年齢は俺のほうがかなり上だが、あの人のカリスマ性と、ナチスの更に1代上の国、プロイセンさんには憲法づくりの面等で世話になった過去がある。ナチスの鋭い視線、作戦立案の的確さと速さ、そして誰よりも人間の心を理解した存在。自然と、彼を『先輩』と呼ぶようになっていた。
「なら……会いたいな、久しぶりに」
じわ、と心の内が暖かくなる感覚がした。先輩。俺の先輩。実の子孫が「元気だ」と言うのならば、それは紛れもなく元気に過ごしているのだろう。ドイツがすまほをぽちぽちと弄り始めた。“らいん”か“いんすた”で連絡を取っているのだろうと身につけたばかりの知識が働いた。
そして、ナチスが出てきたといえば、もう1人必然的に出てくる国も居る。そしてその期待を裏切らない形でイタリアがひょっこりと顔を覗かせた。
「ドイツはナチスさん呼ぶの?じゃあioも父さん呼ぼっと〜」
「え、イタ王も生きてるのか」
「生きてるんよ〜!すっごい元気でピンッピンしてるんね!多分ピッツァ作ってる所だから電話出てくれると思うし〜……あ、日帝さん掛ける?多分ioが掛けるより喜んでくれるんよ」
「それは無いだろ。息子は友人より可愛いものだぞ。あと、俺は電話に慣れていないのでお前が掛けてくれ」
「わかったんよ〜」
イタリアはすまほを数回タップした後、それを耳元に当てた。ドイツはというとすまほを見て難しそうな顔をしていた。アメリカとイギリスは2人で何やら話している。イギリスがアメリカを説教している所を見ると目の色が本当に似ているなと思うくらい顔立ちが似ていた。アイスブルーの瞳が1対ずつ向かい合っている。
「ここに来て枢軸集まんのかよ。暴走しだしたりしねぇだろうな」
「暴走したら私達で抑え込むんでしょうが。何弱気になってるんですか」
「日帝の手前暴力するのは……」
「昔っから喧嘩っ早い貴方が今更何を可愛子ぶってるんですかイタイですよ!!」
イタリアとアメリカの喧嘩もどきは聞かなかったことにしたほうが恐らく幸せだろう。
そして、暫くしてから。
「ほら日帝さん!!代わるんね!!」
「は!?何だっ」
「電話なんね〜!父さんが代わってほしいって!耳に当てたら声聞こえるんよ!!」
すまほを無理やり押し付けられ、俺は渋々耳元に当てる。そしてイタリアが先程していたように声を出した。
「……もしもし、こちら大日本帝国陸ぐ」
『ニテぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!!』
頭が割れるほどの大音量だった。キーンと耳鳴りがしている。隣でイタリアも目を閉じて固まっていた。
この声には聞き覚えがあった。機械を通しているからか、少しばかり記憶とは異なる声だが、この特徴的な声を間違える筈もない。
『日帝!?本当に日帝なんね!?!?』
「嗚呼はいはい、日帝だから……」
「久しぶりだな、イタ王」
そう言うと、電話の向こう──……イタ王は小さく息をついていた。序盤に叫びすぎて息が上がっているのだろう。計画性が無いと言うべきか何と言うか。
久しぶりだな、と言っても俺には会話のネタを持ち合わせていない。ここからどうしようかと思っていると、向こうから再び声が聞こえてくる。
『……うん、本当に、……日帝なんね……。何にも、変わってない……』
どこか震えた声だった。この男にしては珍しいことだった。
いつも常に楽観的で、飄々としていて、それでいて、ナチスよりも、ソ連よりも、この世界のどの国よりも冷酷な一面を併せ持つ、掴めそうで掴めない国。それが俺の抱いている『イタリア王国』という国だった。
『……イタリーから話は聞いたんよ。死刑になった、って聞いたのに……』
「俺も死んだつもりだったんだがな、気がついたら現世だ」
『ファンタジーの世界線過ぎて笑うしかないんね』
イタ王は電話の向こうで苦笑していた。否、おそらく笑うしか出来なかったのだろう。突然に『旧友が生きている』と息子から告げられ、慌てて代わってもらい、久しぶりに俺の声を聞いたのだから呆然としていないのが不思議なくらいだ。
『日帝、元気してるんね?ご飯ちゃんと食べてるんね?怪我は?』
「ぼちぼちと言った所だ。日本の作る飯は美味い」
『そっか、日本君の所なら安心なんね』
イタ王は電話越しに小さく笑った。その声すらも懐かしくて、鼻の奥がツンと痛む。
「そっちはどうなんだ、戦争が終わってから……えぇと、81年経つんだろう?」
『あー……まぁ、こっちもぼちぼち、って答えるのが1番なんね。イタリーに世代交代してからというもの、ioはというと毎日ピッツァ作るかパスタ作るか』
「何も変わってないじゃないか。戦争中にアフリカで水不足なのにパスタ茹でようとした話、先輩から聞いたからな」
『あぁ、そんなこともあったんね』
「あとは迫ってきたイギリス軍に対して前触れもなく降伏したり」
『降伏ネタは辞めろ日帝』
「すいません」
真顔で謝ってから、俺とイタ王は数秒黙った。そして、蕾が綻ぶように、くすくすと笑い合った。こんなふうに軽口を叩くのも久しぶりだった。
「……さて、そろそろイタリアに代わろうか。また会えたら良いな」
『そうね、会えたら良いんね。じゃあ、日帝。また今度』
「嗚呼、また今度」
そう言ってイタ王との会話を切ってから、まだ電話がつながったままのすまほをイタリアに渡した。イタリアは電話に向かって「おとーさんうるさいんよ!!日帝さんがびっくりしとーよ!?」と叫んでいた。あの様子ではどちらが父でどちらが息子なのかわからない。イタリアが頭を抱えながら電話をしているのを見ると、思わずくすりと笑ってしまった。
懐かしい。
イタ王が馬鹿をやって、先輩が振り回されて。俺はただ、煙管を燻らせて端から見て笑っていた。そんな日々がずっと続くと思っていた。ずっと、ずっと。
(……考えるな)
頭を振った。考えても、あの頃の生活は戻ってこない。
今はともかくイタ王の変わりっぷりに脱帽するのが先だ。自分勝手で自由奔放で快楽主義の国が今は親バカになっているとは、81年前の俺に伝えたら一体どんな顔をするのだろう。否、81年前ではない。俺の感覚からすれば数週間前の話だ。
俺はふ、と小さく息をついて、イギリスとアメリカの喧嘩がやっと落ち着いて、日本が顔を上げた。その時だった。
突如として玄関先からとてつもない轟音が響いた。
擬音をつけるならダンダンダンダンと。引き戸のガラスが割れるだろうかと疑うレベルの音量だったので流石の俺も驚いて背筋が伸びた。
そしてガラリと扉が開く音。ドダダダ、と足音。
ドイツが視界の隅で俺に向かって深々と座礼をした。嫌な予感しかしない。
「……おいドイツ、今お前が頭下げるって事は……」
「ええ、あの……はい……」
ドイツは心底申し訳なさそうに頭を下げていた。顔が青ざめている。
俺は勿論察した。この状況で察してあげなければドイツが可哀想になったので頭をフル回転させて察した。現代に来てから過去1で頭を使ったと言っても過言ではないかもしれない。
ドイツはもう1度深々と頭を下げた。
「……父がご迷惑をおかけします」
「日帝!!!!!!」
ドイツが頭を下げきった直後に襖がパァーンと甲高い音を立てて開かれた。レールに蝋を塗っているから滑りやすいのはわかるがそんなに強くするなと咄嗟に喉元まで出てきて抑えた。
真っ直ぐな光を宿したヤグルマギクと同じ色の碧眼。真っ黒な軍服を着こなし、丈の長いマントを羽織っている堂々とした姿。すらりとした体躯で、なんだか前に会った時より少し大人びているような気がする。そういえば、俺が実際に戦争をしていた当時は、彼はまだ12歳だった。
「……先輩」
思わず、名が零れ落ちた。忘れる筈もない。
ナチスは俺を見るなり、みるみるうちに目が溢れそうなほど大きく見開いていった。ここまで彼が驚くのを、俺は初めて見たかもしれない。
「日帝、なのか。本当に」
「今貴方の目の前に居るのが日帝じゃなかったら怖いだろ」
「いや、でも、日帝は81年前に……」
「死んだと思ってたんだが、何と言うか……そのまま未来に飛んじゃった的な……?」
「普通に死者蘇生に近いじゃねぇか、何言ってんだ理解が追いつかないぞ」
先輩は頭を抱えていた。
当たり前だろう。
戦争が終わってから、先輩やイタ王はそれぞれ引取先として連合国側のどこかの国があった。後継国がまだ幼く、そしてナチスやイタ王のことをそれぞれ慕っていたから。だが、俺は違った。後継の国は居たらしいが、俺とは面識が一切ない。だから、俺が死んでも後継の国は何も思わない。そういう理由で俺は裁判にかけられ、そして死罪に処された。そういうシナリオを先輩は知っている。辿ってきたから。
だからこそ、俺が生きているこの現実が信じられないのだろう。
「……そうか、……いや、疑っても仕方ないな。日帝は日帝だ、理由がどうあれこの世界に居る事に変わりない……」
先輩は1人でぶつぶつと呟いていた後、思い出したように顔を上げた。
「……日帝。怪我は。体調は。飯は、食ってるのか」
「食べてるぞ。日本の飯が美味い」
そう答えながら俺は笑っていた。無意識に。イタ王と聞く事が全く同じだな、と思ってしまったから。こういうところで似通う2人が懐かしくて、どことなく愛おしい。
「そうか……じゃあ良い。……あ、そうだ。日帝、さっき私がこっちに走ってきている時にイタ王を見たぞ」
「へぇ。イタ王、どんな感じだったんだ?」
そう尋ねると、先輩は意味深にふっと微笑んだ。
「テンパりすぎて箱入りピザ丸々ワンホール抱えて走ってたぞ」
「何やってんだあいつは」
思わず溜息が出た。呆れもあるが、それ以上に81年経とうがイタ王がイタ王である事に安堵しつつある自分も居る。
少しばかり冷静になってからぽつりと独り言のように零した。
「ていうか、いくらテンパってたからってピザワンホール丸々持って走るって……」
「ピザじゃなぁぁぁぁぁい!!!!ピッツァなんねぇぇぇぇぇぇ!!!!!!」
「うわうるせっ」
俺が言いかけたときにイタ王が襖をスパァァンと小高い音を立てつつ滑らせて開けた。先輩が入ってきたときと思いっきりデジャヴするのは俺だけではない筈だ。
「ピザでもピッツァでもどっちでも良いだろ!?」
「良くないんね!!ピッツァとピザは全くの別物なんよ!!ピザはアメリカ式で具が多くチーズの量が多く生地が厚いのが特徴!!ピッツァはイタリア式で具が少なめでチーズも少なく、生地が薄くてパリパリしてるのが特徴なんよ!!!ウィンナーとソーセージの違いみたいな感じなんね!!!!」
「それは確かに全然違う!!」
「納得するな先輩」
嗚呼そうだ。思い出した。
イタ王の前でイタリア式のピッツァの事をピザだなんて呼べば銃を向けられ乱射されるのを忘れていた。今日撃たれなかっただけマシだと思おう。
「日帝、今変なこと考えてなかった?」
「いえ何も」
即座に謝った。プライドより何より命が惜しい。
イタ王とナチスがわーわーと言い合いをしているのを横目に、日本とにゃぽんがぽつりと呟いた。
「ねぇ、なんかさ、あの2人が来るだけで……」
「えぇ……」
「「一気にカオスになる」」
まさにその通りであった。
次回に続く