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「で、結局誰が、どのダンジョンに入るんですか? 今回は視察なのでレベルは問いませんが、通常はレベル0~3までが超初心者用ダンジョン、レベル4~7までが駆け出し用ダンジョンです」
俺は思いっきりストレートに王子様に問いかけた。王子様も自然顔つきが引き締まる。
「カエンからざっくりは聞いてたからね、ちゃんと決めてきたよ。超初心者用のダンジョンには昨日このために採用した、新兵士5名が入る。そして駆け出し用にはユリウスとこの護衛隊5名が入るつもりだ」
王子様はジロリと彼らを見回したあと、大きな声で檄を飛ばす。
「国の名折れだから、くれぐれもゴールするように! もしも途中で全滅だなんて情けないことになった場合は、ユリウスの折檻を受けて貰うから、覚悟してね?」
その場の空気が一瞬で凍りついた。主に鎧たちが、絶望の表情をしている所を見ると、ユリウスの折檻とやらは相当に酷いんだろう。
うん、あの人は怒らせないようにしよう。
「本当はあと、エリカが超初心者用に、僕が駆け出し用に入るつもりだったけど」
「兄様。私、ダンジョンに入ってもいいですわ。どうやらマスターは信用できる方のようですし」
エリカ姫がおずおずとそう申し出た。なんだ、怒ってない時にはちゃんとお姫様口調なんだな。
「ふぅ~ん。じゃあカエン、エリカと一緒に行ってあげてくれる? 命を落としそうな時に助けてやるくらいでいいからさ」
それを聞いたエリカ姫はべえーっと思いっきり舌を出した。
「そこまで弱くないもん!」
ぷくっと頬を膨らませたまま、エリカ姫は新米兵士五人とカエンを引き連れて、さっさとダンジョンに入って行った。なるほど、行動力は抜群だな。
「じゃ、僕らもさっそく駆け出し用ダンジョンに入ろうか。……っていうか、ダンジョンの名前変たほうがいいんじゃない? 駆け出し駆け出しって自分で言うの、結構屈辱的な気がするんだけど」
あ、やっぱり? 俺もうっすらそんな気はしていた。ダンジョンのネーミングは考え直す事を約束し、王子様達もダンジョンに送り出す。
いよいよ、ダンジョンがダンジョンらしく機能する時が来た!
急いでマスタールームに戻った俺達は、わくわくしながらモニターに向かう。
「おおっ、ダンジョンの中を人が歩いてる! なんかすげぇ!」
「すごい、けっこう臨場感があるものなのね。自分も一緒にダンジョンを歩いているみたいだわ」
思わず俺もルリもそんなことを呟いたら、ゼロがなんだか得意げな顔で手元のボタンをポチポチと押していく。
「ほら、このボタンでカメラアングルがスイッチングできるんだよ!」
「うわ!?」
「どうなってるの!?」
なんか、視点が変わるっていうのか? 冒険者から見たダンジョンの内部だったり、冒険者もダンジョンも並列で見えたり……果てはゼロがみたい部分を拡大したりもできるらしい。
なんだその高機能。
「宝箱とか開けるときはさ、やっぱり手元とか見たいでしょ? これズームとかもできるんだよね!」
ゼロが誇らしげに言うけど、確かに自慢するだけはある。モニターで見る方も視点が時々切り変わる方がきっと飽きないだろう。
そんなことにいちいち驚いている間に、先にダンジョンに入って行ったエリカ姫一行は、早くも街並みの中を探索している。
新米兵士のパーティーではあるが、前に二人、真ん中にエリカ姫と護衛のカエン、最後尾に三人という陣形でエリカ姫を守ろうという意思を感じる。なかなかいい感じじゃないか。
でも問題はエリカ姫だ。
ダンジョンの中がもの珍しいのか、あっちへフラフラ、こっちへフラフラしている。周りの兵士もさぞ精神をすり減らしているだろう。可哀想に。
……と思ったら、エリカ姫の自由な行動を、デレデレと鼻の下を伸ばして見守っていた。
なんだよ、楽しそうじゃないか。
そりゃあ確かにエリカ姫は、お人形さんのように見た目めちゃくちゃ愛らしい。気持ちは分かるがいくら何でも緊張感なさ過ぎだろう!
行け、スライム達! ノホホンとしたヤツらの度肝を抜いてやれ!
俺の気持ちが伝わったのか、モニターの向こうでは可愛いスライム達がポヨン、ポヨン、と
ヤツらの前に躍り出る。
「きゃ~っ! なんか出たぁ!」
「姫! 下がって下さいっ!」
「数、多くないか!?」
突然のスライム達の出現に、モニターの向こうでは大騒ぎだ。隣でルリが、男の嫉妬はみっともないわよ? と囁いた。別に嫉妬じゃねーし。
昨日採用されたばっかりの初心者兵士たちは、戦いにまったく慣れていないんだろう、スライム相手に右往左往している。若干青ざめてるヤツもいるし、完全に腰がひけてるヤツもいる。
なんとかかんとか時間はかかったがスライム達を倒して姫を守りきった頃には、すっかり息があがって肩で息をしていた。
「おいおい、大丈夫かよ」
カエンのため息混じりの声がモニターごしに聞こえてきたが、まあ、このダンジョンを試して貰うにはちょうどいい人選だったともいえる。
それにこっちはこっちで大変だ。
「ああ、スライム達が……痛そう。やっぱ可哀想だね」
うちのヘタレマスターときたら早速スライムに感情移入してるし。こればっかりは慣れてもらわないと話にならないじゃないか。
「ノーネームだからすぐに復活する。気絶と思え」
「ハク、冷たい」
恨みがましく言うゼロの手を、ユキがペロペロ舐めて慰めている。うん、あとは癒し要員に任せた。